ビジネスモデルを検証
組み合わせの妙
業種対応など強み生かす
ここからは、グーグル・クラウドビジネスの有力SIerのビジネスモデルを検証する。ユーザー企業のニーズとグーグルのサービスをどう組み合わせるのか、各社の取り組みを紹介しよう。
地域クラウドに注力 富士ソフトは、東京・秋葉原事業所にある最新鋭のDC(データセンター)を生かしたビジネスを展開する。ユーザーIDを管理するSaaS型のシングルサインオン・システムを独自に構築。そのインフラ上でGoogle Appsや、同社が取り揃えた稟議や申請、承認などを回すワークフローソフト、EC(ネット通販)、流通BMS(流通業向け電子データ交換)、決済サービス、セキュリティ保管サービス、文書管理など、さまざまなサービスを稼働させる。
Google Appsとマッシュアップ(組み合わせ)することで、ユーザー企業の使い勝手が格段に向上する。これらのサービスはすべてクラウド/SaaS型で提供する。
また、顧客先に設置してある既存の基幹業務システムとの連動のSIサービスも提供しており、現時点でニーズが高いクラウドおよびマッシュアップサービスを一通り揃える。グーグルやマイクロソフトのクラウドが“グローバル規模のサービス”だとすれば、富士ソフトは国内に重点を置いた“地域型のクラウドサービス”である。つまり、グローバル+地域クラウド(SIer独自の付加サービス)+顧客先に設置してある既存システムとの連携サービスの3本柱でクラウドビジネスを組み立てる。08年6月にはこれらサービス体系を「FSSaaBIS(FSサービス)」と名づけて販売をスタート。当初は向こう5年間で累計65億円の売り上げを見込むが、「引き合いが非常に強く、このまま推移すれば上方修正も十分あり得る」(富士ソフトの間下浩之・営業本部副本部長)と、不況知らず。顧客企業のコスト削減ニーズが追い風になっているようだ。
業種業務にターゲット 電算システムは、特定業界の情報共有インフラとしてGoogle Appsの活用を進める。業種業務に強い同社らしいアプローチだ。直近では農薬卸売り業者などからなる全国農薬共同組合にGoogle Appsを納入。同組合に参加する約170の事業者の情報ポータルプラットフォームとして役立てることを狙う。業界内の取引情報はEDI(電子データ交換)などがあるが、EDIは文書などの非定型情報の扱いは苦手。その点、Google Appsは表計算やワープロ機能をもっており、非定型情報を扱いやすい。システムを購入する必要がないため、「ユーザーにとって導入の敷居が低い」(電算システムの渡辺裕介・システム営業部長)と話す。同社ではGoogle Apps関連のビジネスで、3年後に年間10億円の売り上げを見込む。
検索軸にサービス付加 富士通グループのジー・サーチは、グーグルの検索アプライアンス製品のEnterprise Searchを主に取り扱う。新聞記事やマーケティング分析レポートなどのデータベースサービスをビジネスの柱の一つにしているサービスベンダーだ。Enterprise Searchと自社のデータベースサービスを連携するなど独自の付加価値ビジネスを展開する。Google Appsの取り扱いはしないが、検索アプライアンスでは販売実績が豊富。このためAppsのみを販売するパートナーなどと連携することも検討する。昨年度はアプライアンス製品(ハードウェア)の販売がグーグルビジネスの売上高の約7割を占めたが、今期(10年3月期)は周辺のSIやサービスメニューを拡充。これにより、グーグル関連の売上高を前年度比2~3割増やしたうえで、「ソフト・サービスの比率を50%程度まで高める」(ジー・サーチの川越康司・コンテンツサービスグループ第二営業部担当課長)という計画を立てる。
クラウド3本柱で攻勢 SIerのベイテックシステムズは、Google AppsとアマゾンのウェブサービスのEC2、マイクロソフトのOnline Servicesを「クラウド3本柱」(原口豊社長)と位置づける。クラウドとマッシュアップ可能なシングルサインオンやワークフローなどを独自で開発。シェア拡大を目指している。
IBMビジネスパートナーのゼネラル・ビジネス・サービス(GBS)は、IBM・Lotusのクラウド版、営業支援のSalesforce、Google Appsを「クラウド3本柱」に位置づけてビジネス拡大を推進。周辺SIに加え、「ユーザー向けの研修サービスなども展開する」(西川浩平・システムズアーキテクト)方針を示す。
結論
栄枯盛衰は世の習い
グーグルの最大の特徴は、スペックの高さと絶対額の安さにある。Google Appsの1アカウント年間約6000円はクラウドだからこそ実現できる価格帯。有力SIerが何千単位のアカウントの注文をとってきても、わずか数日で対応できる。従来のシステムでは考えられないスピーディーさだ。これまでなら、ハードウェア増設にかかるリソース設計から始めて、資材の調達や実装、チューニング、稼働まで、少なくとも数か月はかかるだろう。世界で億単位のユーザーを抱えるグーグルならではの強みだ。
また、オープンソースソフト(OSS)文化圏と重なる部分が多いため、サイオステクノロジーやアイキューブドシステムズなどOSSビジネスを得意とするSIerの参入も目立つ。
クラウドとOSSの組み合わせに、従来型のハード販売やパッケージソフトのビジネスは価格面でまず太刀打ちできない。すべてが置き換わるわけではないが、ある部分は数年のうちにクラウドに移行するのは確実だ。メインフレームや高価なUNIX機、オフコンの衰退。一部ですでに始まっているパッケージソフトベンダーの淘汰をみれば、SIerは自らのビジネスモデルを変えざる得ない時期にきているのではないか。