point1
伸びるユーザー企業規模は?
いよいよ到来、SMB需要
ユーザーの企業規模別でみると、中堅・中小企業(SMB)を有望視している声が多い。前出の日立製作所の後藤主任技師は、「大手企業よりも中堅企業に動きがある」と話し、とくに年商200億円以上の中堅企業に強い需要を感じている。「『セキュリティ管理』と『ライセンス管理』、そして『IT資産管理』が、中堅企業がもつ悩みの上位3項目」という。
また、ある運用管理ツールメーカーはSMBの市場をこう分析した。従業員数10人以上1000人未満をSMBとした場合、この層に当てはまるユーザー企業は約41万社(総務省調べ)存在する。このうち「約14万社がIT資産管理機能の運用管理ツールの導入を検討している」と説明。ビジネスポテンシャルが高いとみている。
SMBのIT利用調査に強いノークリサーチは、「中堅・中小企業の運用管理ツールの導入率は30%程度」と分析する。大企業に比べて導入していない企業が多い点が、まずこの市場が有望視される理由の一つだ。それに加えて、運用管理を後回しにして新規システムの導入を進めた企業が、今の段階で運用業務を見つめ直そうとしている」(日立の後藤主任技師)ことで、SMBから実需が顕在化するというわけだ。
図3は、ノークリサーチが年商10~100億円のSMBに対して調査した各運用管理ツールに対する関心度合いを示したもの。「計画はないものの、導入に対する関心はある」と回答した比率をそれぞれまとめたが、すべての項目で30%以上が「はい」と回答。ネットワーク監視ツールについては44.3%も導入に関心を示していることが分かり、ニーズの強さがうかがえる(図3参照)。
一方、需要一巡との見方がある大企業には、本当にニーズがないのか。
確かに大企業でのツール購入が進み、導入率はかなり高いが、それとは別の需要が出てきた。
IDC Japanの入谷光浩・ソフトウェアマーケットアナリストは、「ユーザー企業はこれまで各システムやプロセスで運用管理の部分最適化を図ったが、そのような方法では限界がきているとの認識をもっている。全体最適やIT全般統制、仮想化対応など取り組むべき課題がある」と分析。「ベンダーは運用管理を一元化し、全体最適によるコスト削減をユーザーに訴求することが求められる」とし、ビジネスチャンスを示している。伸び率は鈍化したが、チャンスがないわけではない。
眠っていたSMB需要が今後は顕在化して市場を引っ張りながら、大企業からはこれまでとは違ったジャンルの運用管理ツールのニーズが出てきそうだ。
point2
拡販しやすいユーザーの業種は?
金融、医療、学校、官公庁が狙い目
運用管理ツールの1ジャンルである「IT資産/PC構成管理ソフト」分野で5年連続トップシェアを誇り、約4900社のユーザー企業・団体をもつ抱えるエムオーテックス(MOTEX)。さまざまな業種・業界に導入されている(図4参照)同社の池田淳Sales Promotion販売推進部課長は、今後の販売に力を注ぐ業種として「金融・保険業」「官公庁」そして「医療機関」を挙げた。
その理由を池田課長はこう説明する。「金融・保険業は他業種に比べてセキュリティ対策が早く、2005年の『個人情報保護法』施行前後にログ収集やネットワーク監視ツールを導入した。それらの先進ユーザーが現在利用するツールやシステムに不満を抱き、他社製品への乗り換えを検討している時期にある。リプレースの引き合いは非常に多い」。医療機関は、「まだ未導入のユーザーが多い」(池田課長)との認識から注力分野に挙げた。
一方、大塚商会は官公庁のほか、私立大学など教育機関もターゲットにしている。国の景気対策で官庁・自治体など公共事業や教育機関がIT投資を活発化させるという見解からだ。ここ数年、大学や自治体では、ライセンスを購入すべきソフトが「不正コピー」して利用され、莫大な違約金をソフトメーカーに支払う事件が相次いだ。「官公庁・自治体や大学は、もともとシステムの資産管理、ソフトのライセンス管理にずさんな面がある」(教育関係者)。公立学校では、PCなどIT機器の導入率が低く、ハードの導入段階から資産管理や運用管理ツールをセットにしたシステムの提案が可能とみている。
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