企業で仮想化環境を検討、採用する動きが本格化し、それに伴って、多くのソフトウェアメーカーが仮想アプライアンスを提供する動きが活発になってきている。注目を浴びる仮想アプライアンスに焦点をあて、製品を販売している各社の現状をまとめた。
広がりみせる新興市場
5.3%のユーザーがすでに導入 「仮想アプライアンス」は、1~2年前くらいから市場が広がり始めた新興市場だ。専用ハードウェアにOSと、ファイアウォールやロードバランサなどさまざまな機能を搭載して提供していた「ハードウェア・アプライアンス」のハード部分を切り離し、仮想環境にソフトウェアとして載せることができるようにしたものが主役を演じる。各メーカーではハードウェア・アプライアンスに加えて、仮想環境に対応したラインアップの一つとして仮想アプライアンスを拡充する動きが活発化。メーカーがあらかじめ任意のOSにアプリケーションをインストールし、設定作業を終えた状態の「仮想マシン」のイメージとして提供する。CDやDVDで配送されたものをコピーするか、またはインターネットからダウンロードしてVMwareやXen、Hyper-Vなどの仮想化ソフトが入っている環境に入れてしまえば、すぐに利用できる。そのため、イチから設定を行う手間を削減したり、運用管理を容易にすることができる。
「仮想アプライアンス」という言葉が登場してまだ間もなく、市場が広がり始めたのは1~2年前からという。現状、日本のユーザーはどの程度利用しているのか。IDC Japanの調査によると、「(仮想アプライアンスが)どういうものかまったく知らない」が44.5%と半数近くを占める(図1参照)。一方で、どういうものかを知っている企業もおよそ半分に達していることからすれば、認知度は確実に上がっているといえるだろう。しかし、現段階では限られた市場規模といわざるを得ない。そのなかで、すでに仮想アプライアンスそのものを導入している企業は、5.3%程度。およそ4分の1程度の企業が「導入した」、もしくは「1~2年程度をめどに導入を予定、検討している」と答えている。
導入している/これから導入しようとしている分野として最も多いのが、セキュリティである(図2参照)。続いて、サーバー管理、データベース(DB)、ネットワーク管理となっているが、業務アプリケーションなども仮想アプライアンスとして利用されているようで、OS上に載るソフトウェアは幅広い。IDC Japanの入谷光浩・ソフトウェアマーケットアナリストは、「サーバーやストレージ管理、ネットワーク管理などのインフラ部分で最初に導入が進み、その後にDB、ミドルウェア部分に広がっていくとみている。セキュリティ、ネットワークといったITインフラを仮想アプライアンスなどによって簡素化し、運用管理を楽にして、コストを低減、その分をBIといった情報活用系のツールに投資することで、新しい売り上げの源泉をつくるような動きも今後みられるのではないか」と予測する。
メリット、デメリットは?
運用管理は容易だが、微調整は困難 仮想アプライアンスのメリットは、OSにアプリケーションがインストールされ、すでに検証が済んでいるため、運用管理コストを削減できることにある。
対応する仮想化ソフトが載っているハードウェアなら、どれでも動く。ハードウェアと仮想アプライアンスのメンテナンスの切り分けが可能になるほか、企業内にある既存のサーバーのリソースを使用して仮想アプライアンスを稼働させれば、エコにもつながる。
また、物理環境では、ネットワークはネットワークを得意とする会社が、サーバー周りはサーバーを得意とする会社が構築を担うなど、はっきりとした役割分担ができていていた。ところが仮想アプライアンスでスイッチ、ロードバランサのようなネットワーク関連の機能が動くようになると、サーバーの管理手法と同じようにネットワーク周りの管理ができるため、これまでサーバーを得意としていたベンダーにもビジネスチャンスが広がるとみる向きもある。
一方、デメリットとしては、設定作業が済んだ状態で提供されるため、カスタマイズや微調整が難しかったり、ハードウェアと仮想アプライアンスのメンテナンスの切り分けはできても、OSとアプリケーションの切り分けは難しいといった問題を抱えている。さらに、仮想マシンは物理マシンと異なり、増やしたり減らしたりすることが容易。複数の仮想マシンが稼働している状況で導入すると、どの程度パフォーマンスに影響を及ぼすか、また仮想アプライアンスが動いている環境に途中で仮想マシンが増えた場合にもパフォーマンスを保証できるのかといった不安要素がある。
価格設定の面では、ハードウェア・アプライアンスの場合は専用機器として特定のハードで特定の機能だけしか動かさないので、処理能力ごとに製品価格を決めることができた。ところが、仮想アプライアンスの場合は、ハードウェアに縛られないことから、パフォーマンスによる価格設定が難しくなってくる。
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