アズジェント
FW、メール関連製品などを販売
SIerの関心は高い
いま仮想アプライアンスの担ぎ手はどのような状況にあるのだろうか。セキュリティ関連製品を販売するアズジェントでは、チェック・ポイント・ソフトウェア・テクノロジーズのゲートウェイ製品「Check Point VPN-1 VE」を取り扱っている。これにより、仮想環境内外の物理サーバー間を移動するような機能を使っても、ネットワーク設定を継承して引き続き守ることが可能となる。また、メール関連セキュリティ製品を手がけるオレンジソフトのメール誤送信対策アプライアンスの仮想アプライアンス版「BRODIAEA safeAttach」を販売している。
ゲートウェイ製品である「VPN-1 VE」は、万一にでも導入がうまくいかない事態が生じればネットワークを止める可能性もあるため、SIerが二の足を踏んでいるという。ただ、Interopに展示したところ、興味を抱いて見に来ていたSIerも多かったそうだ。「アプライアンス専用のOSを使用しているし、不必要な機能は排除して提供するため、運用も楽。OSとソフトのサポートが一つになるので、手間もかからず、今後も伸びるのではないか」(ビジネス開発部 テクニカルグループの水木威生氏)と話している。
性能の面では、仮想アプライアンスはまだ発展途上にある。したがって、例えばデータセンターや本社のシステムにハードウェア・アプライアンスを置いて、性能を求めない拠点システムに仮想アプライアンスを設置する使い方もできるとみられる。
S&I
パフォーマンスに懸念
技術こなれれば、伸びる可能性
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第一事業部システム統括部 川辺隆史統括部長 |
SIerのS&Iでは、F5ネットワークスのアプリケーショントラフィック管理システム「BIG-IP Local Traffic Manager Virtual Edition」の検証を進めるかたわら、代理店と販売施策を練っている最中だという。ハードウェアアプライアンスでは、ハードに依存し、専用チップにより特定の単機能を高速処理しているため、処理が速いのが特徴だ。一方、仮想アプライアンスとして仮想化ソフト上で動いた時に「仮想化ソフトのインターフェースが遅く、パフォーマンスが著しく落ちてしまう可能性がある」(第一事業部システム統括部の川辺隆史統括部長)と指摘する。
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第二事業部システム統括部 ネットワークシステム部 浅輪太朗部長 |
現在さまざまな機能が仮想アプライアンスとして提供されているが、今後機能の淘汰が起こってくるともみる。ファイアウォールや、ルータ、スイッチ、ロードバランサなど、ネットワーク管理製品のラインアップが増えたほか、クライアント端末にIPアドレスを割り当てるDHCPなどを自動化できる製品やRADIUSなどの認証システムなどは向いているのではないかという。第二事業部システム統括部ネットワークシステム部の浅輪太朗部長は「まだまだ技術的に不足する部分があって、物理環境と比べてそん色なく動くようなるには時間がかかる。仮想技術自体がこなれてきて、またある程度仮想アプライアンスで提供する『必要のあるもの』が明確になってくれば、市場は広がる可能性はある」とみる。
兼松エレクトロニクス
情報収集し、評価はこれから
今年度中に方向性決める
SIerの兼松エレクトロニクスでは、「まだ情報収集の段階で、ロードバランサ、FW、セキュリティ関連製品、不正アクセス検知/防御やアクセラレータといった大まかには決めているものの、どこの製品を取り扱うかもまだ決定していない。各メーカーから情報を集めて、評価もこれから始める段階だ」(第三ソリューション営業本部 ネットワークシステム営業部 第三課 岡田政嗣主事補)と現状を話す。同社が扱っているハードウェア・アプライアンスを提供しているメーカーは、仮想アプライアンスを順次リリース、もしくはリリースする予定で準備を進めている。
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システム本部 第二システム部 第一グループ 福川幸雄・グループ長 |
というのも、仮想アプライアンスを扱っても、ビジネスにならなければ意味がなく、ユーザーニーズ自体も今の時点ではどの程度あるものなのかが推し量れないからだ。使えるのか、使えないのか、各NIer、SIerは入念な評価、検討を行っている段階ではないかと推測する。
現状、一番の課題と捉えているのが、仮想アプライアンスを導入した際、負荷はどの程度あるのか、処理にどの程度の性能が必要とされるのかといった「サーバーサイジング」が見えないことだ。メーカー側がサイジングの情報を出している製品もあるが、一部にとどまっていることから、SIer自身が見極める必要がある。システム本部 第二システム部 第一グループの福川幸雄・グループ長は「ユーザー企業がプライベートクラウドを新規に構築する場合に最初から組み込むならばまだいいが、既存のクラウド環境に導入するとなると、何が起こるかわからないし、サポートの面でも不安が残る」と懸念を表す。
仮想環境は柔軟性が高く、増やそうと思えばいくつでも仮想マシンを増やすことができるが、リソースを食う仮想マシンが一つでも増えれば、仮想アプライアンスのパフォーマンスに影響を及ぼしかねない。最初はストレスなく動いても、1年後に同じパフォーマンスを維持できるか保証できないため、慎重にならざるを得ないという。同社では評価を行ったうえで今年度中には方向性を決めたいとしている。
ネットワンシステムズ/エクシード
クラウドサーバーに組み込んで販売
CBA会員のソフトウェアを生かす
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ビジネス推進グループ マーケティング本部 井上尚紀本部長 |
NIer大手のネットワンシステムズは、同社の関連会社でサーバーサービスを手がけるエクシードと共同で、社内に導入した仮想環境の運用管理で蓄積したナレッジをもとに、「運用監視の仕組みをアプリケーションとして提供すべく、整理を行っている」(ビジネス推進グループ マーケティング本部の井上尚紀本部長)という。
また、エクシードのクラウド型サーバーサービス「Libra(ライブラ)」に仮想アプライアンスを組み込んで提供することを視野に入れている。
エクシードは、昨年から従量課金制のクラウド型サーバーサービス「Libra」を開始している。ユーザーはウェブサーバーを立ち上げるなど、用途に合わせてウェブ上から申し込み、あらかじめテンプレート化されたサーバーの構成を選択すれば、すぐにクラウド経由でサーバーを利用できる。
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| エクシードの鈴木義則社長 |
ネットワンシステムズは、業界団体「クラウド・ビジネス・アライアンス(CBA)」を主導。エクシードも会員として参加している。トータルで100社以上のソフトウェアベンチャーが参加しており、そのなかからニーズが高まりそうなアプリケーションを仮想アプライアンス化して、サーバーテンプレートに組み込んで提供することを視野に入れている。エクシードの鈴木義則社長は「アプライアンスとしてベンチャー企業の製品をサーバーサービスとともに提供することによって、ベンチャー企業のビジネスチャンスが広がるし、ユーザー企業自身も月額で安価にアプライアンスを利用できる」と説明する。エクシードでは、オーリック・システムズのアクセスログ解析製品「RT metrics」を組み込んで販売することを計画している。
ソリトンシステムズ
ニーズ見据えて仮想化対応進める
単一の管理ツール提供で運用管理を省力化
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プロダクトマーケティング本部 正木淳雄本部長 |
現状、何が何でも仮想アプライアンスを使いたいというニーズはない。だが、いずれ必要な時期が訪れることを見据えて、メーカーは準備を進めている。ソリトンシステムズは、ネットワークセキュリティアプライアンス製品「Net’Attest」シリーズを開発・販売。ゆくゆくはシリーズすべてを仮想アプライアンス化する計画だ。また、米国の米キャットバード社の「V-Security」という仮想環境、物理環境のセキュリティを包括的に強化する製品の取り扱いも開始し、仮想環境のセキュリティ製品を拡充している。
同社では、昨年秋以降、SIerから仮想アプライアンスに関する問い合わせが頻繁にくるようになったという。プロダクトマーケティング本部 プロダクトマーケティング2部 マーケティング2Gの福士祐樹グループマネージャは「SIerからはハードウェア・アプライアンスや仮想アプライアンスの要望もたくさん来ている。物理、仮想でのソリューションとして揃えていこうとしている」と動向を話す。
ソリトンシステムズではノウハウを生かし、ユーザー企業が構築するプライベートクラウド、もしくはパブリッククラウドに導入できるよう「Net’Attest」シリーズの仮想アプライアンス化を進めている。認証アプライアンスの「Net’Attest EPS」は、RADIUSサーバー、DHCPサーバー、プライベートCA(認証局)の機能を提供している。
ソリトンシステムズでは、従来のハードウェア・アプライアンスのようにDHCP、RADIUSなどの機能を一体化して提供するか、もしくは機能を個別に動作させることができるような提供形態を模索している。「一元的に管理できるツールを提供することで、たとえ各々の機能が別々の仮想マシンや物理マシンで動いていたとしても、ユーザーが意識することなく、単一の管理運用ができるようにしていく」(プロダクトマーケティング本部の正木淳雄本部長)方針だ。
Epilogue
今年度中にビジネスの軌道見えるか
セキュリティメーカーやネットワーク機器メーカーを中心に製品が出始めていることから、仮想アプライアンスの現状を取材した。SIer、NIerは取り扱いを始めたばかり、もしくは検討している段階であり、まだビジネスとしては立ち上がっていない状況だ。
パフォーマンスの問題や、導入するにあたってどの程度サーバーのサイジングが必要なのかといった部分で、不明瞭なところが多く、踏みとどまっているのだ。
だが、SIerからの展示会での引き合いや、メーカーに対しての問い合わせも多く、今年度中には取り扱うか、やめるかといった答えを出したいと、あるSIerは話している。