2.維持しながら他地域を攻める
大阪に次ぐ市場の発掘へ
ベンダーの動き
大阪が本社のSIerは、「大阪を維持しながら他地域を攻める」というスタンスだ。これによって、他地域でのビジネスが順調に推移している。だからといって、大阪に見切りをつけているわけではない。大阪でのビジネスが最も多いITベンダーにとっては、あくまでも「大阪に次ぐ第二の市場を発掘する」という意味合いが強い。
●オージス総研
電力向けクラウドの提供を拡大 大阪ガスの子会社、オージス総研は、電力の全面自由化によって新電力事業者(PPS)が増えることを見込み、電力向け顧客料金管理サービスの提供を拡大しようとしている。松本亮・営業本部西日本営業部長は、「さまざまな地域でパートナー企業を探し、PPSをユーザーとして開拓する」との方針を示している。
電力向け顧客料金管理サービスは、料金の計算をはじめ、顧客や設備の管理、請求、収納、督促、受付の機能を備えたサービス。メーターデータ管理システムとの連携によって、PPSは、検針から請求・回収まで、ワンストップで行うことも可能だ。自社データセンターをもっていて、提供形態はパッケージに加えてクラウドサービスも用意。とくに、クラウドサービスに関して「低コストで導入できる点でパートナー企業にとって売りやすい商材になる」と、松下敏尚・営業本部西日本営業部西日本営業チームマネジャーはアピールする。パートナー企業として組んでいるのは、各地域の電力・エネルギー系会社だという。
PPSを対象としたビジネスは、「大阪に限らず全国でビジネスチャンスがある」と踏んでいる。現在、西日本のなかで大阪の売上比率が9割以上を占めるが、今後は他地域の売上比率が高まっていくとみている。ただ、「大阪の売り上げは減少させない」(松本西日本営業部長)と、覚悟のほどを示している。

オージス総研の松本亮・西日本営業部長(左)と松下敏尚マネジャー ●関電システムソリューションズ
伸びしろは東京でのビジネス 
佐伯明彦
取締役 関西電力の子会社である関電システムソリューションズは、外販ビジネスの売上比率で最も高いのが大阪で、7割程度。大阪でのビジネスは微増傾向にあるが、「伸びしろがあるのは東京でのビジネス」と、佐伯明彦・取締役ソリューション事業本部副本部長は判断している。
首都圏では、マイナンバー制度絡みで自治体や企業でITシステムのリプレース案件が出始めている。関電システムソリューションズでも、情報セキュリティ対策の観点で製品・サービスを提供。コンサルティング部隊やデータセンターをもっていることから、順調に案件を獲得しているという。
東京と比べれば案件が少ないものの、大阪では海外進出を果たそうとする中堅製造業のIT投資が活発になっているので、「回復基調であることは確か」とも捉えている。しかも、大阪で案件が増えているのも実際のところだ。これは、「長い間、大阪を基盤にビジネスを手がけているということで、信頼していただいているケースが多い」という。大阪の体制を縮小しているベンダーもいるなかにあって、関電システムソリューションズは大阪でのビジネス体制を維持したまま、東京でのビジネスを拡大して全社売上高の増加を図っていく。
●リバティ・フィッシュ
だから大阪はおもしろい 
石丸博士
代表取締役 大阪では、中堅SIerが受注する案件が増えている状況にはあるものの、ユーザーからのコスト引き締め要請が強く、なかなか売り上げが伸びないという状況も出ている。「だから大阪はおもしろい」と、リバティ・フィッシュの石丸博士代表取締役はアピールする。
リバティ・フィッシュは、Linuxなどオープンソースソフトウェアをベースとしたシステム構築に強く、開発手法はアジャイル方式だ。ユーザー企業の要望に沿ったシステムは、「開発コストは高いものの、オープンソースによってライセンス料がかからない点などを踏まえてトータルコストでは他社のシステムに負けない安さで提供できる」と自信をみせる。
オブジェクト指向スクリプト言語の「Ruby」にも強く、最近では「Rubyをベースに異業種とのIT関連の交流が盛んになっている」。その一つがクリエイターとの交流だ。ウェブ制作を含めた案件の依頼があるため、クリエイターと組んでシステムを提供するケースもある。こうした案件を受注することによって、「これまで以上に幅広いビジネスを手がけている」とのことだ。
東京では全体的にIT投資意欲が高まっているが、トヨタ自動車やマツダの関連で名古屋や広島でも製造業でリプレースが進む。リバティ・フィッシュも、他地域で案件を獲得しているが、「コスト面での要請の厳しさは大阪ほどではなく、それだけに、当社の強みを発揮できない場合もある」と打ち明ける。また、今後はクラウドサービスを視野に入れたビジネス拡大も検討していく方針だ。
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