NECソリューションイノベータ
仮説検証でSIoT市場の開拓へ
●製造現場のSIoT NECグループのSIerであるNECソリューションイノベータは、IoT分野において、製造業を対象に仮説検証のためのパートナーを募集している。
仮説検証とは、こうだ。
製造現場ではリードタイム(発注から納品までに要する時間)の短縮が求められる。在庫が減り、利益率を上げることに貢献するからだ。そのために、製造現場では“見える化”を推進することになるが、モノの動きを把握するには作業者が実績を入力するといった作業が発生する。製品を製造するのが目的の作業者にとっては、実績の入力は余分な作業である。
一方、リードタイムを短縮するには、作業者に余分な作業をさせてはいけない。つまり、作業者には製品を製造するという価値のある作業に集中してもらい、実績は入力させないのが理想的ということになる。
「リードタイムの短縮という目的は同じだが、実績の入力において対立が起きてしまう。ERPや生産管理システムでは、この問題を解決できない。そこでたどり着いたのが、IoTだった」とNECソリューションイノベータ イノベーション戦略本部IoT戦略室エグゼクティブエキスパートの中村敏氏は仮説検証でIoTの採用に至った経緯を語る。IoTありきではないところがポイントである。
取り組み自体は、とてもシンプルだ。まず、RFIDを使ってモノの動きを把握する。モノの動きという事実をもとに見える化を実現するため、作業者は実績を入力する必要がない。実績の入力が不要となれば、作業者は価値のある作業に集中できる。リードタイムの短縮に貢献するというわけだ。
この件は、製造業の業務を熟知したSIerならではの発想だといえる。組み込み開発会社やIoTデバイスメーカーでは、このような発想はできない。まさに、SIoTである。すでに、NECソリューションイノベータは、あるメーカーとともに、この仮説検証を進めているという。今年中には結論を出す予定だ。
●脱・人月ビジネスに期待 
NECソリューションイノベータ
中村敏
イノベーション戦略本部IoT戦略室
エグゼクティブ
エキスパート NECソリューションイノベータがIoTに取り組んだのには、もちろん理由がある。それは、SIビジネスにおける漠然とした将来への不安である。とくに人件費が上がっていないことから、システム開発で利益を上げにくい状況にあるという。人件費が上がらない理由はさまざまあるだろうが、中村氏の視点が興味深い。
「以前は、欧米の最先端のIT活用が浸透していなかったこともあり、ユーザー企業よりも圧倒的に多くの情報をITベンダーがもっていた。日本のユーザー企業は、ITを活用した最新のビジネスモデルなどの情報を必要としていたのである。ところが、IT活用が普及したことで、ユーザー企業も多くの情報やノウハウをもつようになっている。ITベンダーのアドバンテージが少なくなったことで、高い人件費を要求しにくくなった」。この状況を打破する取り組みが、前述の仮説検証というわけである。
そして、前述の仮説検証に対し、中村氏が期待するのが、成果報酬モデルの実現による脱・人月ビジネスである。IoTでもシステム構築という意味では人月ビジネスになると思われるが、仮説検証が機能すればリードタイムが短くなり、売り上げの増加に貢献することから、成果報酬モデルを実現できるという考えだ。
「ERPや生産管理システムを導入した現場では、計画主導でモノをつくる。その場合、販売状況などをみて、生産調整をかけることなどには貢献するが、リードタイムを短くするといった売り上げに貢献するシステムではなかった。ERPや生産管理システムの導入において、SIerが成果報酬モデルにしないのはそのためだ。SIerが収益を確保していくには、今後は成果報酬モデルを実現することが必要になる。今回の取り組みは、その第一歩だ。IoTありきの取り組みではないが、SIerの課題解決の手段としてIoTは大きなチャンスを与えてくれると考えている」(中村氏)
これぞSIoTとなるか。仮説検証の結果に期待したい。
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