ITによって業務を抜本的に改善するためのワークスタイル変革ビジネスが活況を呈している。業務の効率化を図るだけでなく、ITを使って成長しようとする意識がユーザー企業のなかで高まっているためだ。SIerやディストリビュータにとっては、さまざまな製品・サービスが提供できる可能性があることになる。この特集では、SIerやディストリビュータがワークスタイル変革として、どのような製品・サービスの提供に力を注いでいるのかを探り、つかもうとしているビジネスチャンスに焦点をあてる。(取材・文/佐相彰彦)
モバイル
生産性の向上にモバイルを提案
クラウド利用のニーズにも対応
ワークスタイル変革の導入のとっかかりとして、SIerやディストリビュータなどが提案しているのが「モバイル」だ。クラウドサービスが充実したことによって、ユーザー企業のなかで、外出の多い営業担当者などにノートPCをはじめ、スマートフォンやタブレット端末などスマートデバイスを使わせて生産性を高めたいという意識が強まっている。モバイルの有効活用を提案できるか否かで、ワークスタイル変革に関連したシステム・サービスの導入拡大にもつながってくる。
●SMBに「Surface」を拡販 
大塚商会
丸山義夫
次長 Windows XPのサポート切れに伴って、昨年3月に「PCを中心としたクライアント端末に爆発的なリプレース需要が生まれた。最近では、クラウドサービスの充実に伴って、スマートデバイスの導入も増えているようだ。とくに、法人ではWindowsベースのシステムが多く、最近はタブレット端末として「Surface」を求める声が増えているという。大塚商会の丸山義夫マーケティング本部共通基盤総合NWプロモーション部モバイルプロモーション課次長は、「クラウド版グループウェア『Office 365』の知名度が高まってきていることもあり、クライアント端末でワークスタイル変革を提案する際、Surfaceが前面に出す商材になりつつある」という。なかでも、SMB(中堅・中小企業)のワークスタイル変革を実現する際に有効で「システムを大幅にリプレースしたり、ソフトウェアを新しくしなくてもいいことから、徐々にではあるがSMBでの導入件数が増えている」という。
大塚商会では、SMBがSurfaceを導入しやすいよう「おすすめ基本セット」をはじめ、社内の無線LAN化を進めるモデル、運用管理やデータバックアップのサービスなど提供している。とくに、社内の無線LAN化は社内インフラの構築からクライアント端末の提供、導入後のサポートまでを一気通貫で行っている大塚商会の強みを生かしたサービスになっており、「社内でスマートデバイスが使える環境を整えることが販売を増やすことにもつながる」としている。スマートデバイスの販売にあたって、インフラ構築もカバーすることに加えてスマートデバイスで業務効率化やコスト削減の実現を提案することによって、大塚商会ではSurfaceの拡販に成功している。
●自社活用のノウハウを生かす 
シネックスインフォテック
清水章太郎
部長 シネックスインフォテックでもSurfaceの需要が増大すると判断しており、まず同社の営業担当者にSurfaceを業務で使わせて使い勝手を検証している。清水章太郎・プロダクトマネジメント部門マーケティング部部長は、「例えば営業担当者による直行直帰の環境がつくれるなど、提案の際は当社の営業担当者が経験したノウハウを生かしている。販売パートナーには、その情報を提供するだけでは提案するのは難しいと判断し、販売パートナーがユーザー企業に訪問する際、当社の営業担当者も同行する体制を敷いている」という。この手法によって、Surfaceの案件を獲得。案件は、大企業の組織などがスモールスタートで導入するものが多いという。今後は、販社で構成された組織「Vernex Japan」の参加企業が売れる環境を整える。
また、シネックスインフォテックではグーグルのOS「Google Chrome OS」を搭載したノートPC「Chromebook」の販売にも力を入れている。主に教育機関を対象に販売のアプローチをかけており、「まだ販売面で大きな実績があるわけではないので、これからの商材と位置づけているが、関心は高まっている」としている。それは、DaaS(仮想デスクトップサービス)でセキュリティを強化できるからで、「教育機関では、多くの生徒がクライアント端末を使うことになる」と、清水部長は捉えている。
このほか、シネックスインフォテックではクライアント端末を拡販するためのコンセプトとして、「Connect」「Move」「Control」「Application」の四つを掲げている。このコンセプトに適した製品の販売に力を入れており、ワークスタイル変革としてビデオ会議システムも提供している。清水部長は、「ビデオ会議もクラウドで実現できるサービスが充実していることから、ワークスタイル変革がさらに普及していくのではないか」と期待している。
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