IoT用の回線を自ら提供
この秋よりMVNO事業に進出し、IoTサービス実現のための通信回線を提供するNECネッツエスアイ。「回線込み」の提案を可能にするだけでなく、協業先開拓の手段としても自社MVNOを活用する。
前述の通り、法人向けMVNOで今後成長の可能性が高いのがIoT向けサービスだ。センサやカメラなどのデバイスとクラウドを連携させるというIoTの特性上、それらを相互に接続するネットワークは必須の要素となる。特に、屋外も含めた広範囲にデバイスを設置する場合、モバイルデータ通信サービスの利用がまず検討されることだろう。
しかし、大手携帯電話事業者はマシンツーマシン(M2M)通信用の料金形態を用意はしているものの、ユーザーはある程度固定化されたメニューの中からプランを選択する必要があり、アプリケーションによって、トラフィック発生のパターンがさまざまに異なるIoTのニーズは合致しないこともある。例えば、デバイス数は大量だが通信の量はごくわずか、あるいは常時接続されている必要はなく1日1回の間欠通信でかまわない、といったケースの場合、既存の通信サービスではコスト的に見合わない可能性もある。
NECネッツエスアイが10月から開始する「ネッツワイヤレス」は、IoTのために設計されたMVNOサービスで、最も安価なプランでは、月間30MB・最大256kbpsで夜間のみ通信可といった制限を加える代わり、1回線あたり月額300円以下という低価格を実現しているのが特徴だ。また、価格以上に充実しているのが法人利用に特化したサービス内容で、インターネットを経由しない閉域接続、宛先・ポート制限通信などの機能が標準で提供される。さらに、NECネッツエスアイのクラウドサービスとして、センサデータの収集・分析などの機能も用意する。
IoT用のセンサデバイスはBluetoothやZigBeeなどの技術を通信に使用し、携帯電話網との接続機能はもっていないことが多いが、ネッツワイヤレスではデバイスの通信を媒介する「サービスゲートウェイ」と呼ばれる機器を用意しており、センサデータをいったんサービスゲートウェイに集約し、必要に応じて3G/LTE網に接続することが可能。サービスゲートウェイ上である程度のデータ処理を行うこともできるので、データを成形・圧縮したり、一定以上の変化が生じたときのみ送信したりといった制御も可能になる。前述の、夜間のみ通信を行うという制限もサービスゲートウェイにより実現される。

NECネッツエスアイ
貴田剛本部長(左)と高田暁洋主任 また、検証環境や営業支援活動を提供するパートナープログラムを立ち上げ、ネッツワイヤレス対応のデバイスやアプリケーションを提供するベンダーを広く募集する。同社の貴田剛・キャリアソリューション事業本部キャリア販売推進本部本部長は、「MVNO事業の目的は回線の販売ではなく、特色のあるビジネスを行っている方々との間でアライアンスを広げていくこと」と説明。センサ、カメラ、車載機器、分析技術、モバイル機器向けアプリケーションなど、IoTを構成する要素をもつさまざまな企業を結びつけることで、各社がネッツワイヤレスでの動作が検証済みの製品をまとめてソリューションとして提案できる環境を作り上げていく。
同本部の高田暁洋主任によれば、「閉域接続が標準提供されるセキュリティの高さに関して特に前評判が高い」といい、官公庁などからも引き合いがある模様。また、スマートフォンと閉域接続の組み合わせによるサービスも予定しており、社外にいるときもVPN接続操作なしで社内システムにアクセスできる業務用端末などが実現できる見込みだ。
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