クラウド3兄弟のポテンシャル
Azure、Office 365、Dynamics CRM Online
ここでは、マイクロソフトのクラウド戦略の核となる具体的な製品群にスポットをあてる。俗にマイクロソフトのクラウド3兄弟と呼ばれる、「Microsoft Azure」「Office 365」「Microsoft Dynamics CRM Online」を軸に、ビジネス拡大の青写真を探るべく、キーパーソンに話を聞いた。
●国内DCのローンチが転機に ──「クラウド3兄弟」は、いずれも高い成長率をみせている(表参照)。 
Azure担当
佐藤久
マーケティング&
オペレーションズ
クラウド&エンタープライズ
ビジネス本部
業務執行役員本部長 佐藤 潮目がはっきりと変わった瞬間があって、それは、東京、大阪の国内2か所にデータセンター(DC)を整備した時。アマゾン・ドット・コムやグーグルなど他社のクラウドは、もともとファイアウォールの外側に出ているシステムをクラウドに乗せているパターンが多かったが、当社が国内に600キロの地理的冗長性をもたせたDCを、エンタープライズ向けに出したことで、ファイアウォールの内側にあったシステムのクラウド化が非常に加速した。Azureにとって非常に大きな追い風になった。
越川 Office 365も絶好調で、やはり日本でのDC稼働は非常に大きい。というのも、もはや直販はもちろん、パートナーの皆さんも、「Office 365のこの機能が競合製品の機能よりすぐれている」というような売り方はしていない。「マイクロソフト」という信用と信頼を売っている。それを強力に支えているのが国内DCで、サーバーセキュリティへの投資も含めて非常に高い評価をいただいている。いまや先行していた競合製品にコンペで負けることはほとんどない。
また、ワークスタイル変革というキーワードがユーザーの経営層やLOBにも浸透してきて、そこに対してパートナーと一緒に面でアプローチできているのも大きい。
久保田 国内DCの重要性は、Dynamics CRM Onlineにとっても同様だ。当初はセキュリティ面などの不安を口にされるお客様もおられたが、他社にはない非常に堅牢なセキュリティを誇る国内DCをサービスの基盤として活用し始めたことで、これまで躊躇されていたお客様にも非常に積極的に導入をご検討いただけるようになった。
●パートナーとの協業に強み ──ただし、AWS、Google Apps、Salesforceなど、強力な競合製品・サービスがあるが、勝てるか。 
Office 365担当
越川慎司
アプリケーション&サービス
マーケティング本部
業務執行役員本部長 久保田 あくまでもパートナーとの協業をベースに事業を拡大していくのがマイクロソフトのスタンスで、この部分のノウハウは他社と大きく差異化できる。マイクロソフトの他の製品とのディープな融合によりお客様の生産性を飛躍的に高めることができるわけで、Office 365のパートナーなどは、現時点ではCRMを扱っていなくても、そうした価値を理解できる潜在的なパートナーといえる。日本市場では、CRMはまだまだホワイトスペースがある領域。潜在的なニーズを掘り起こすという意味でも、そうした基盤があるのは有利だ。また、CRMは一旦導入しても、使いにくくて使わなくなってしまうというケースもよくみられる。しかし、Dynamics CRM Onlineは、Officeと連携することで現場の負荷が少なくなるように設計されているし、定着支援までていねいにサポートしてくれるパートナーも揃っている。
佐藤 製品・サービス単体で勝負したいわけではない。例えば、Enterprise Mobility Suite(EMS)は、クラウド環境でマルチデバイス対応の統合管理基盤を構築するスイート製品だが、前年同期比500%増というものすごい成長をみせている。これがクラウド3兄弟の接続役のようなかたちになって、デバイス、アプリケーションが生成するデータを一気通貫で管理できるようになる。マイクロソフトが提供するクラウドの価値はそこにある。
越川 そのとおりで、クラウド3兄弟は、パートナーも重なりが出てきているし、複合的な案件も多くなっている。また、Office 365は、クラウド側もクライアント側もAPIを解放していくのが今後の戦略。そうするとパートナーにも、独自のビジネスソリューションをAzureに載せてOffice 365とシームレスに連携させるという動きがかなり出てくるだろう。
●IaaS、PaaS、SaaSを死語に ──マイクロソフトのクラウドの今後の展開は。 
Dynamics CRM Online担当
久保田結子
Dynamicsビジネス統括本部
Dynamicsマーケティング部部長 越川 単体での市場シェアはともかく、パブリッククラウド市場全体におけるクラウド3兄弟のビジネス規模は、ほぼトップレベルだと思っている。ユーザー数にしても、売り上げにしても、この1年以内に圧倒的なレベルにまで引き上げたい。
佐藤 10年以内に、マルチデバイス、マルチサービス、マルチクラウドがあたりまえになる。経済合理性からいって、オンプレミスも必ず残るだろう。これらを一つのコンピューティングリソースプールのように扱い、エンタープライズのお客様が安心して使える環境を提供していくのが、マイクロソフトの次のステップ。実現すれば、アプリケーションの裏側を、ユーザーは意識する必要がなくなり、IaaS、PaaS、SaaSという言葉も死語になるだろう。当社はICTの市場規模を2倍にしようとしている。こうした基盤があれば、既存のICT市場の外側に新しい市場をつくることができる。そこから逆算して、Azureには現在大量のサーバーを仕込んでいるところだ。
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