フラッシュメモリの低価格化が進み、今年はいよいよ「オールフラッシュストレージ」の本格普及が始まりそうだ。とはいえ、製品自体の容量単価がHDDやHDD/フラッシュのハイブリッド製品に比べ、まだ高価なのも事実。高性能が最大の特徴であることは間違いないが、それだけでない価値をどのように訴求するかが提案のポイントとなる。(取材・文/日高 彰)
●フラッシュがHDDよりも安くなる? 
EMCジャパン
大塚俊彦社長 「グローバルではもちろん、日本市場においても今年はオールフラッシュ元年になる」。
ストレージシステム大手のEMCは、グローバル戦略として2016年を“Year of All-Flash”に位置づけているが、日本法人の代表を務める大塚俊彦社長は、2月に開催した事業戦略説明会で冒頭のように述べ、今年は日本市場でもオールフラッシュストレージの本格普及が始まるとの見方を示した。
HDDに代わって、半導体のフラッシュメモリに情報を記録するストレージ装置は決して新しいものではない。HDD互換のインターフェースを備えたSSD(Solid State Drive)は何年も前からPCやサーバーの内蔵記憶装置として使われているし、スマートフォンやタブレット端末のストレージは最初からフラッシュメモリがあたりまえだ。HDDと異なり、機械的な駆動部分がないのでアクセス速度にすぐれ、衝撃に強く、低発熱・省電力と、さまざまな利点がある。
エンタープライズ市場において、これまでフラッシュストレージの普及の妨げとなっていて、今後本格普及が期待できるとする最大の根拠は、価格だ。これまで、容量あたりの単価ではHDDとフラッシュの間に圧倒的な差があり、ビジネスに必要な容量をまかなうのにフラッシュ製品は高価すぎた。しかし、磁気ディスクに比べ技術革新の余地が多く残されているフラッシュメモリは、価格の下落が急速に進んでいる。容量単価ではまだフラッシュはHDDよりも高価な製品だが、TCO(保有にかかる総コスト)では肉薄しているといわれ、今年ついにオールフラッシュストレージのTCOはHDDストレージを下回るとする分析も出されている。ストレージ業界の雄であるEMCが今年をオールフラッシュ元年に位置づけるのはこのためだ。
●理解が進むTCOという考え方 IT資産のTCOは、ユーザーの使い方によっても左右され、実際に導入し何年か運用してみないとわからない部分もある。提供側の試算で「トータルではHDDよりフラッシュが安い」という結論が出たとしても、顧客がそれを納得するかは別問題だ。しかし、大企業やデータセンター、クラウドサービス事業者の間では、オールフラッシュストレージの導入によるTCO削減効果は、すでに疑いのないものになりつつあるという。
オールフラッシュストレージがもたらす効果として、文字通り「目に見える」メリットとして真っ先に挙げられるのが、省スペース化だ。製品にもよるが、HDDを搭載したストレージ装置をオールフラッシュ製品にすることで、ストレージシステムが占めるスペースは数分の1に削減できる。
企業がストレージシステムに求める容量と性能は拡大の一途をたどっているが、例えば、新たなクラウド基盤として数PB(ペタバイト)クラスのストレージが必要になる場合、建物によってはすでに床の耐荷重を超えてしまうケースも出始めているという。また、エネルギー効率がデータセンターの収益性に与える影響が大きい昨今、大量のHDDの駆動や、それらの冷却に必要となる電力をいかに削減できるかが大きな課題となっている。都心のデータセンターでは土地代も無視できない。
また、機械的な動作箇所をもつHDDは、一定の割合で故障することが前提のパーツだ。このため、大規模なデータセンターになれば、日常的にディスク交換の作業が発生する。フラッシュメモリもデータを書き込む度に少しずつ劣化していき、使用できない記憶領域が発生するが、書き込み頻度の平準化処理や、予備領域による不良ブロックの代替などによって、実使用上は問題にならないように制御されている。このため、大量のディスクを運用しているユーザーであれば、交換の手間がなくなることによる運用コストの削減効果も大きい。かつては、メモリが劣化するという性質をもって「信頼性に問題がある」とみるユーザーも少なくなかった。しかし、フラッシュの導入実績が増えるにつれ、エンタープライズ向けのフラッシュ製品では、可用性を確保するための仕組みが用意されているという理解も広がり、フラッシュに対する誤解が解けつつあるようだ。
●目的はDB・VDI構築からインフラ効率化へ 従来オールフラッシュストレージは、リアルタイムでの分析など特別に高い性能が要求されるDB(データベース)システムや、I/Oがボトルネックになると従業員の生産性が極端に落ちるVDI(仮想デスクトップインフラ)の構築などで用いられることが多かった。このような用途では、ストレージに求められる性能要件が高かったため、ある程度のコスト高を許容してもオールフラッシュ製品を選択するというケースがみられた。
しかし、前述のように製品の価格帯が下がったことで、最近ではITインフラの効率化やコスト削減を目的とした導入へと広がりつつある。クラウド事業者や大規模なウェブサービス事業者の間では、すでにオールフラッシュの価値は十分に理解されているが、フラッシュ製品の低価格化は当面続く見込みであり、この先は中堅規模の一般企業でもオールフラッシュ製品が選択肢に入ってくることは間違いない。
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