ハイブリッドからオールフラッシュへの流れが明確化
フラッシュメモリは高価なことから、現在は容量あたりの単価が安いHDDと、性能にすぐれるフラッシュの両方を1台のアプライアンスに搭載し、一つのストレージシステムとして利用できる「ハイブリッドストレージ」も多く提案されている。現状では、コストパフォーマンスの高いこのタイプの製品にもまだまだ競争力はある。
ただ、これまでハイブリッドストレージを前面に出してきたストレージベンダーも、次第に軸足をオールフラッシュへと移す方向にあることは確かだ。2000年代後半に相次いで誕生した新興ストレージベンダーのなかでもとくに勢いのあるニンブルストレージは、この3月にオールフラッシュ型の新製品を発表した。同社は自社のハイブリッド製品を「アダプティブフラッシュストレージ」と呼び、データ圧縮技術や、HDDへ書き込む際にデータのシリアル化を行うことで高いパフォーマンスを実現できることを特徴としてアピールしていた。

ニンブルストレージ
プロダクトマーケティング責任者
ガヴィン・コーエン氏 オールフラッシュ製品の発表のため来日した米国本社のプロダクトマーケティング責任者のガヴィン・コーエン氏は、「ミリ秒以下の遅延時間を保証しなければいけないデータがどれだけあるのかによって、オールフラッシュがいいのか、アダプティブがいいのかを提案していく」と話し、実際にはオールフラッシュでなくても要件を十分に満たせる案件はまだまだ多いと説明するが、同時に「論理的な理由のあるなしにかかわらず、オールフラッシュが必要と考えている顧客もいる」とも述べ、顧客の心理がハイブリッドからオールフラッシュへと変わり始めていると指摘する。
仮想化環境専用のストレージシステムを提供するティントリジャパンも、昨年秋にオールフラッシュ製品をラインアップに加えた。同社は、ハイブリッド製品でありながら「フラッシュヒット率99%」を実現し、高いI/O負荷にも低コストで対応できることをセールスポイントにしてきた。
にもかかわらずオールフラッシュ製品を提供する理由としては、過去長期間にわたるデータを対象にした分析のような、新しいワークロードが増えていることや、一般事務ではなく3D CADなど、とくに高いパフォーマンスが必要な業務でもVDIの導入が進んでいることなどが挙げられている。
●業務に使えるストレージであるか サンディスクとの合弁でフラッシュメモリのチップを生産する東芝は、自社も出資するストレージベンダーのヴァイオリン・メモリーからオールフラッシュ製品の供給を受け、東芝ブランドのストレージシステムとして販売している。ヴァイオリン・メモリーの製品は、HDD互換のインターフェースを使わず、フラッシュメモリに最適化したアーキテクチャを採用しており、高い性能を長期にわたって安定的に出せる点を特徴としている。
同社でも、オールフラッシュ製品に対する引き合いは高性能データベースかVDIという2用途が圧倒的多数を占めていたというが、最近はクラウド基盤の構築ばかりか、販売・物流管理といった基幹系システムでもオールフラッシュ需要が増えつつあるという。ハイブリッドストレージが導入段階では十分な性能を発揮していたものの、事業拡大で次第にストレージがボトルネックとなり、業務に支障をきたすようになったことから、最初からオールフラッシュでの提案を求められるケースもあったという。
ただ、HDDからフラッシュに移行したものの、システム全体の性能が必ずしも伸びないというケースを耳にする機会も増えているという。フラッシュ製品のメリットを知る顧客が多くなった一方で、パフォーマンスのボトルネックが本当にストレージにあることを十分検証しないまま、フラッシュ製品を導入してしまうケースが一部にあるようだ。そのような投資の無駄が発生しないよう、東芝ソリューションでは、顧客の既存システムで発生しているI/Oのサイズやパスを実際に測定し、ストレージの変更でどの程度の性能改善が見込めるかを定量的に示してから提案を行うといったように、オールフラッシュ製品の取り扱いにあたっては事前のアセスメントに力を入れているという。
オールフラッシュストレージ市場では、創業時からオールフラッシュ製品だけに特価して開発を行っているピュア・ストレージも有力ベンダーだ。
同社製品を国内で販売する東京エレクトロンデバイスによると、現在はVDIのように、I/O性能がユーザーエクスペリエンスに直結する用途での導入が多いが、今後はERP用のデータベースなど、一般企業のデータベースでオールフラッシュの提案を図っていきたいとしている。現場の運用でカバーしているものの、データベースの性能に何らかの不満を抱えている企業は少なくないため、フラッシュ製品の拡販余地は大きい。オールフラッシュストレージは設計もシンプルなためSIerにとって扱いやすく、顧客満足度も高い商材だという。
ピュア・ストレージは記憶領域にHDD互換のSSDを採用しているため、オールフラッシュ製品としてはコストパフォーマンスが高い。データ圧縮や重複排除、冗長性の確保といった機能をソフトウェアで実現しており、エンタープライズストレージに求められる要件の充足度では評価が高い。十分な性能を有してはいるが、ピーク性能よりも多くの企業にとって扱いやすいフラッシュストレージの実現にフォーカスしており、特定用途から一般用途へと採用が広がる市場の潮流にもマッチした製品といえそうだ。
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