IoT(Internet of Things)といえばクラウドである。クラウドコンピューティングは登場当初、オンプレミス環境の発展形としてもてはやされた。安さや手軽さが強調されるのは、そのためだ。すべての基幹システムをクラウドに移行するというのも、時代を象徴する事例ではあるが、それはクラウドの小さな一面に過ぎない。そこにイノベーションはない。では、クラウドがもたらすイノベーションとは何か。答えを知ると、“IoTといえばクラウドでしょ”がみえてくる。(取材・文/畔上文昭)
●IoTはデータである モノがインターネットにつながる。モノにセンサをつければ、モノで起きていることのデータを取得できる。取得するデータ量が大きければ、いわゆるビッグデータということになる。
ビッグデータが注目され始めた頃は、データ量が爆発的に増えていくとして、ストレージ関連ソリューションと、集めたデータの分析ソリューションが提案された。ところが、肝心のビッグデータの中身については、動画や写真、ソーシャルメディアにアップされた情報などであり、多くの企業にとって他人事の騒ぎであった。ビジネスに有効なビッグデータを保有しているのは、大手ネット通販や公共交通機関などの一部の企業に限られていたのである。
IoTはデータを生み出す。人にセンサをもたせれば、行動がわかるし、心拍数や血圧なども把握できる。作業担当者にセンサをもたせれば、行動のデータ化により、無駄な動きを把握できるようになる。機械なら、稼働状況がわかるし、部品の故障予測も把握できる。すべてデータである。
問題は、IoTから取得するデータの量を予測するのが難しいというところにある。「IoTでは、取り組み自体がアジャイル的で、不確定要素が多いため、想定以上にデータ量が大きくなる」と、ニフティの佐々木浩一・クラウド事業部モバイル・IoTビジネス部部長は語る。
こうした環境に対して、オンプレミスのストレージを用意するのは現実的ではない。容量の拡張が必要になったときの対応に時間がかかるからだ。
これが、IoTとデータの関係である。拡張性と柔軟性では、クラウドストレージに軍配が上がる。
ちなみに、このところの注目キーワードとして「デジタル」がある。IT業界では古くから使われてきたワードだが、近年は「デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation、デジタルによる変革)」の文脈で使われるようになり、再浮上したかたちだ。センサを起点にさまざまなデータを取得するIoTも、デジタルトランスフォーメーションの一翼を担っている。IoTによって、暗黙知がデータ化(デジタル化)されるからだ。
●IoTはインターネットである IoTとは、Internet of Thingsを意味する。モノ(Things)がインターネットにつながるのが、IoTである。
インターネットを経由することで心配なのは、セキュリティだ。IoTデバイスから得たデータを社内のストレージに集めるには、相応のセキュリティ対策が求められる。
そこで、IoTデバイスの接続先は社外のクラウドということになる。クラウドは、インターネットからの接続を基本にセキュリティ対策を施していて、専門家が対応するため、外部からの攻撃に強い。セキュリティ対策でパブリッククラウドを選ぶというのも、一般企業ではインターネット越しのセキュリティ対策が難しいと判断するからだ。つまり、インターネットを活用するIoTでは、クラウドが最適ということになる。
●IoTは分析である 集めたデータは、分析し、活用しなければ意味がない。ビッグデータが注目され始めた当初は、活用を考えずに、将来のためにデータを集めるべきという声もあったが、現在ではビッグデータに対応したさまざまな分析ソリューションが提供されている。
問題は、分析ソリューションの多くが高価であるということ。ある程度の規模の企業でないと、導入することができなかった。また、これからIoTを始めようというときには、どのようなデータを取得できるのかがわからないケースも多く、取得したデータが有効活用できるかどうかの判断も簡単ではない。この状況では、最適な分析ソリューションは何かも判断できない。
そこでクラウドである。クラウドサービスの分析ソリューションであれば、必要な機能を必要なときに必要な分だけ利用すればよい。クラウドを活用することで導入コストを最小限に抑えることができる。
IoTはAIである
Pepperが顧客情報の収集と接客を担う
店舗の接客はロボットに任せる。そんな時代が、もうすぐやってくる。日本マイクロソフトが、ソフトバンクロボティクスと提携し、人型ロボット「Pepper」上で同社のクラウドサービス「Microsoft Azure」のAI(人工知能)や多言語処理などの機能を提供することによって実現する接客サービスの構想を発表した。
ここでのPepperは、来客からデータを取得し、来客に最適な情報を提供する双方向の処理を行うIoTデバイスである。バックにクラウドサービスが控えていることで、データを格納する環境、データを処理する環境、処理の結果を提供する環境を整備しやすいだけでなく、進化の途中にある最新のAIを有効活用できる。

デモンストレーションで、日本マイクロソフトの平野拓也社長を接客するソフトバンクの人型ロボット「Pepper」。写真左は、ソフトバンクロボティクスの冨澤文秀社長
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