現在、第4次ベンチャーブームが到来しているといわれています。東京には多くのスタートアップ企業が集まっていますが、他の地域にも有力なスタートアップがいるはず……!そこで今回は、関西エリアで注目のスタートアップにおじゃましてきました。いつもの連載を拡大してお届けします!(取材・文/前田幸慧)
エクサインテリジェンス 京都発のAIスタートアップ!
古屋俊和
代表取締役CEO
エクサインテリジェンスは2016年、古屋俊和代表取締役CEOとディー・エヌ・エー(DeNA)元会長の春田真氏が共同で設立しました。営業拠点として本社を東京に置いていますが、研究開発拠点は京都にあります。関西の有力なAIベンチャーの一社です。
同社では、機械学習、ディープラーニングなどの技術を活用したAIのアルゴリズムを開発し、製造業や医療業界の企業と共同でサービス化に取り組んでいます。すでに、自動車メーカーなどから自動運転の研究で引き合いを受けているとのこと。また、医療業界向けには、医師の診断をサポートする仕組みを提供しており、CVイメージングサイエンスや、国内で最も多く心臓のMRI検査を実施しているCVICと連携して、MRIから冠動脈狭窄をAIが判定するシステムの共同研究を行っています。これらの他にも、人材サービスやウェブ系のサービスに、エクサインテリジェンスのAIプラットフォームが利用されています。
AIを活用した自社サービスも開発中。古屋代表取締役は、「誰にでも使えるようなAIのプラットフォームをつくり、大手企業向けだけでなく、中小向けにもパッケージ化して提供していきたい」と話します。
産学連携が同社の強みで、「大学の研究者の協力を得ながら開発しており、最新の研究をサービス化できる」(古屋代表取締役)といいます。実際に、同社では早稲田大学基幹理工学部の尾形哲也教授、京都大学情報学研究科の鹿島久嗣教授をアドバイザーに迎えているほか、関西に研究開発拠点を設けていることから、AIを研究している関西の学生を中心に人材を集めています。
これまで人手で行っていた製造業の仕分け作業を、ロボットが代替することに着目しており、今後は「ロボット×AI」に力を入れていきます。古屋代表取締役によると、現状はまだ研究段階で実用までは至っていないとのことですが、「従来のAI技術では難しかったところが、ディープラーニング技術の発展によって可能になると考えている。ここに参入したい」と意気込みます。
ミライセルフ 採用後のミスマッチを減らす
Company Data
会社名 ミライセルフ
所在地 大阪市北区(本社)東京都渋谷区(営業所)
資本金 資本金 6010万円(資本準備金含む)
設立 2015年5月25日
URL:https://mitsucari.com/
表 孝憲
代表取締役CEO
企業が人を採用するときにありがちなのは、「面接のときはいいと思ったんだけど……」という、採用後の会社と人材のミスマッチ。入社後に活躍してもらうためにも、採用の段階で人材をしっかり見極めたいですよね。
こうした課題を解決するために重要とされるのが、採用の評価基準を明確化する「構造化面接」です。ミライセルフが提供する、AIを活用した適性検査のクラウドサービス「mitsucari(ミツカリ)」では、その構造化面接の運用をサポートします。
具体的には、社会心理学にもとづいて作成したオリジナルの適性テストを、応募者が受けます。また、同様のテストをその企業の社員も受けることで企業の特徴、文化を分析します。この両方を照らし合わせてダッシュボード上に可視化して応募者と企業タイプをマッチングし、採用、配属の判断に役立てることができます。適正テスト自体は、その人の考え方や価値観を問うものを中心に計72問の問題があり、タイプを14項目にわたって表示します。一般的な適性検査との違いは、個人と組織の両方の特徴を可視化すること、会社ごとの評価に合わせられることに加え、「機会学習で精度が向上していく」(表孝憲代表取締役CEO)ことにあります。現在までに約300社、2万人を超えるユーザーがおり、蓄積されたデータを利用して、よりマッチングの精度が上がることが予想できます。
応募者テスト回答後の画面例
大手証券会社で約7年間、採用面接を担当してきた表代表取締役は「人と会社が合わないといったことで生産性が下がるというようなことは変えないといけない」と指摘。会社としては「2020年のIPO(新規株式公開)を目指す」と話します。
Be&Do 従業員のやる気をITで高める
石見一女
代表取締役CEO
国を挙げて「働き方改革」が推し進められているなかで、従業員の業務の生産性向上に力を入れる企業は多いと思います。日本は先進国のなかでも生産性が低いといわれていますが、どのようにしてこの問題に取り組めばいいのでしょうか。
Be&Doの石見一女代表取締役CEOは、「一人ひとりが目標をもち、行動していくことが、生産性向上につながる」と話します。同社では、従業員のやる気をテクノロジーで高めることに主眼を置いており、それを実現するサービスとして、エンゲージメントツール「Habi*do(ハビドゥ)」を開発しました。
Habi*doは、「自分はやれるんだ」という自己効力感を高め、行動変容を促していく、Be&Doが独自に開発した手法「TREEダイナミクス」をシステムに反映させていることがポイント。これにより従業員一人ひとりのエンゲージメント(周囲とのつながりをもち、目標に対して自発的に行動していく状態)を高めていきます。具体的には、チーム内で設定した目標や日々の行動習慣リストを可視化、共有することで、自分自身やチームメンバーの行動を促します。メンバーの行動に対してリアクションすることも可能です。また、上司がみる管理者画面では、「ミカBOT」というAIが、Habi*doへのアクセス、利用状況などをもとに、従業員のほめ時やフォローが必要なタイミングなどを知らせてくれます。こうした機能で、一人ひとりの行動を促し、エンゲージメントを高めることで生産性向上につなげられるほか、人事評価への活用、従業員の離職・離脱防止などに役立てることができます。
同社では、Habi*doがモチベーション管理エンジンとしてのハブになり、他社製のグループウェアやCRM/SFA、タスク管理といったツールとAPIで連携し、取り込んだデータをさらに人事管理ツールやビジネスチャットなどとつなぐことができると考えており、今後はこうしたツールとの連携も計画中。直近では「1~2年のうちに、少なくとも3万ユーザーを獲得し、モチベーションデータベースをつくる」(石見代表取締役)ことが目標です。
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