Special Feature
イッポまえだのよろしくスタートアップin関西 関西から世界へ羽ばたく
2017/03/29 09:00
週刊BCN 2017年03月20日vol.1670掲載
AG 動画を見ながらモノを購入
岩谷瑛司
代表取締役
ViCはひと言でいうと、「動画をみながらモノが購入できる」サービスです。動画のなかに写真や文字などの情報を埋め込み、商品と紐づけることで、動画の視聴者が気になる商品をクリックするだけで、商品をカートに入れることができます。この裏側のシステムを昨年春に開発し、商業施設などを運営するパルコのショッピングサイト「ミツカルストア」に導入されました。岩谷瑛司代表取締役によると、パルコでは、同サイト上の画像だけでは商品のよさが十分に伝わらないことが課題でしたが、「ViCを使い、動画で訴求することで、アクセス数や売り上げが上がったと聞いている」といいます。ほかにも、EC事業者や民放、メーカーなど、動画を使ってプロモーションを行いたいという企業からの引き合いが多いとのこと。AGでは、映像の制作からViCの実装まで手がけることが可能です。
しかし、ViCは今のところPC版のみの対応で、「スマートフォン版があれば使いたい」という声が非常に多いそうです。そのため、スマートフォン版の開発に注力しています。また、映像解析の精度を高め、ゆくゆくはAIを活用し、ユーザーが求める商品と関連する商品の提案なども行えるようにします。
岩谷代表取締役が描いているのは、ViCを使い、「映画やドラマをみながら、出演者が身に着けているものが買える世界」です。その裏側を支える技術の確立に向け、邁進しています。数年後には、また新たな商品の購入形態が普及しているかもしれませんね。
パリティ・イノベーションズ ARを現実世界で実現
Company Data
会社名 パリティ・イノベーションズ
所在地 京都府相楽郡(本社)大阪府東大阪市(研究所)
資本金 3920万円
設立 2010年12月
URL:http://www.piq.co.jp/
会社名 パリティ・イノベーションズ
所在地 京都府相楽郡(本社)大阪府東大阪市(研究所)
資本金 3920万円
設立 2010年12月
URL:http://www.piq.co.jp/
前川 聡
代表取締役
空中映像は、置くだけで映像を浮かび上がらせる光学素子「パリティミラー」によって実現しています。パリティミラーと液晶ディスプレイ、指の位置を把握するセンサを組み合わせたディスプレイ「フローティング・タッチ・ディスプレイ」では、現れた空中映像に指で触れ、操作することができます。
類似する技術に「AR(拡張現実)」がありますが、ARはスマートフォンなどのカメラを通して現実世界にデジタルの情報を付加して画面に表示する一方、同社が実現した空中映像は、パリティミラーを通して、実世界にリアルに映像を表示することが特徴で、前川聡代表取締役は「実世界のAR」と表現します。
パリティミラーは、法人向けには自動車、アミューズメント、医療、産業機器といった業界や、イベント用の展示物としての利用に引き合いがあるそうです。また、個人向けにも製品開発を検討しています。
しかし、目下最大の課題が、パリティミラーの量産化。2006年に特許を取得して以降、この課題に11年もの間苦労してきました。前川代表取締役は、「今年中にはメドをつけたい。」と強い決意をにじませます。量産化にあたっての生産性とコストの問題解決に最優先で取り組みながら、性能面の改善や大型化を並行して進めていく方針です。
パリティ・イノベーションズの空中映像技術には注目が集まっており、「量産化できれば使いたい」という企業からの引き合いの声は多いそうです。年内の量産化の実現に期待したいと思います。
Gleaner 安価でセキュアな法人専用MVNO
深瀬尚也
代表取締役
手がけているサービスは大きく三つあり、一つが「Gleaner Mobile(グリーナーモバイル)」という、法人専用のMVNOサービスです。NTTドコモの回線を借り受けており、最低で1台あたり月額900円(通信料1G未満)、最高でも1780円(同5G)で利用できます。MDM(モバイルデバイス管理)アプリの「MoDeM」を標準搭載していることがポイントで、オプション料金を支払う必要がなく、情報漏えいなどのセキュリティリスクを担保することが可能。導入サポートも受けられます。
二つめが、昨年10月に提供を開始した「カケホーダイSIM」。文字通り、通話し放題の法人専用MVNOサービスです。こちらはソフトバンクの回線を利用しています。ソフトバンクのキャリア契約と同じ通信速度でありながら、最低月額1980円(通信料2GB)という価格設定です。
三つめが、「Gleaner 光」という光インターネット回線サービス。NTT東日本・NTT西日本の「フレッツ光」の卸売りで、Gleaner MobileやカケホーダイSIMとの併用によるコスト削減をメインに、顧客に提案しています。
創業時は、携帯電話販売事業を行っていたというGleaner。その後、スマートフォンのコンサルティングサービスなどで知見を蓄積し、現在は先述の3サービスで、累計約360社ほどの取引実績があります。近年はカケホーダイSIMへの声がけが多いようです。深瀬尚也代表取締役は、「全国で当社のことを知ってもらいたい。とくに関西では、“通信会社といえばGleaner”だと言ってもらえるような会社にしたい」と語ります。会社としてはこの先、まずはサポート体制の強化として、人員拡充に取り組む予定です。
シビラ ブロックチェーンでイノベーションを起こす
藤井隆嗣
Co-founder Ceo
Broofは、M2Mの世界を実現することを見据えた処理速度の速さや、データの2次利用を可能にしていることが特徴。これにより、データベースとしてブロックチェーンを活用できるといいます。また、Broofを活用した自社サービスも開発しており、現在、「地方自治体」「セキュリティ」「IoT」という三つのソリューションを揃えています。
地方自治体ソリューションは、地方創生を目的に、農業のサプライチェーンにブロックチェーンを活用。実際に、電通国際情報サービス、エストニアのGuardtime社と共同で、宮崎県東諸県郡綾町と連携し、綾町産の有機農産物の安全性とブランドをブロックチェーンで証明する実証実験を今月開始する予定です。非金融分野でのブロックチェーン活用を推進する事例といえるでしょう。
セキュリティソリューションでは、ログストレージサービス「Proof log(プルーフログ)」を提供。情報の削除・改ざんができないというブロックチェーンの特性を生かして、社内のあらゆるログを改ざん不可能にすることにより、記録されたデータの正確性を証明します。藤井氏は、「情報漏えいのほとんどの原因は、悪意のある人間による不正行為か操作ミスにあります。内部統制をテクノロジーで進化させていきたい」と話します。
IoTソリューションでは、IoTセキュリティのぜい弱性が指摘されていることをふまえたもので、データをブロックチェーンで保護します。この領域では、スマートバリューと資本業務提携を行い、同社の自動車に関連したモビリティ向けIoTサービスで取得したデータの正当性証明や新たなサービス開発に、ブロックチェーンを活用しようとしています。
藤井氏は、昨年一年を振り返ると、ブロックチェーンの研究開発、サービス化、パートナー開拓などに奔走した「準備の年」だったと話します。そして、「今年からがビジネスフェーズ」だと強調。M2Mを実現するブロックチェーンの開発に向けて取り組み、「ブロックチェーンで世界に新たな常識をつくりたい」と語ります。
大阪イノベーションハブ
イノベーション、起こすなら大阪で!
手嶋耕平
プロモーション
マネージャー
そうした状況から大阪市では、2013年4月、起業家を支援し、イノベーションを創出する拠点として、「大阪イノベーションハブ(OIH)」を、大阪・梅田のグランフロント大阪のナレッジキャピタル内に開設。大阪市から委託されるかたちで、大阪市都市型産業振興センターが運営し、関西では最も活発にベンチャー支援を行っています。
OIHでは、年間約50回にも及ぶピッチイベントやシリコンバレーツアー、海外の支援機関や起業家と連携したプログラムなどを開催しています。また、今年度から、「OIHシードアクセラレーションプログラム」が始動。これまでに、今回紹介した企業のなかでは、AG、Be&Do、パリティ・イノベーションズが採択されました。公的機関としては珍しく、エリアを限定していないため、大阪以外の地域からも参加することが可能で、実際にピッチイベントを開催すると、「10社中、1~2社は東京の企業」(大阪市都市型産業振興センターの手嶋耕平プロモーションマネージャー)とのこと。東京と比べるとスケールは小さいものの、起業環境は一通り揃っており、ピッチイベントの審査員は東京とそれほど変わらないことから、よりアピールしやすいのだといいます。
目指すのは、「ベンチャー起業家を、先輩起業家やIPOを経験したメンター、大企業やVCといったパートナーが支援し、成功した起業家が次の起業家を支える」というイノベーションのエコシステムを、OIHがハブとなって築くことです。そのため、ベンチャーと大企業、大学のオープンイノベーションも促進。手嶋プロモーションマネージャーは、「OIHの活動をまだまだ知らない人が多い。ここには、おもしろいベンチャーがたくさんいる。また、OIHとしては、ベンチャー以外の人ともつながりたいと思っている。話をしに来るだけでもいいのでぜひ来てほしい」と話します。
よろしく関西スタートアップ
今回、関西を拠点に事業展開するスタートアップのみなさんに、関西に拠点を置くことのメリット/デメリットについてうかがってみたところ、メリットとしては、「関西はベンチャーが少ないので目立ちやすい」との声が多くありました。一方で、より多くの情報が集まるのが東京でもあるため、いかにして自社の情報を発信していくかがカギになります。東京ではベンチャーの数が多い分、うまく自社を売り込めなければ埋もれてしまいますが、しかし一度成功すれば、大きな注目を集めやすいというのが、みなさんの共通認識でした。また、ビジネスの拠点を関西に構えているといえども、顧客の数は「関東とそれ以外の地域で半々程度」という声が多く、みなさんのほとんどが頻繁に東京へ足を運んでいるようです。東京に拠点を移さないのかと聞いたら、そこはやはり地元愛。「関西発で勝負する」という姿勢を強く感じました。
今回の取材先選定にあたり、関東エリアと比べて情報収集に苦労しましたが、IoTやAI、FinTechなど最近話題のテクノロジーをコア事業としているところはまだまだ少ない印象です。その分、それぞれに特徴ある、ユニークな商材が光ります。関西スタートアップは、独自の製品・サービスでイッポ前へ!
現在、第4次ベンチャーブームが到来しているといわれています。東京には多くのスタートアップ企業が集まっていますが、他の地域にも有力なスタートアップがいるはず……!そこで今回は、関西エリアで注目のスタートアップにおじゃましてきました。いつもの連載を拡大してお届けします!(取材・文/前田幸慧)
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