NSSOLはITインフラとサービスを融合
利益率拡大に意欲示す日本ユニシス
新日鉄住金ソリューションズ(NSSOL)は、ITインフラやネットワーク基盤の領域で手堅く売り上げを伸ばす一方、日本ユニシスはデジタル新領域やサービス事業で利益拡大を虎視眈々と狙っている。NSSOLはプライベートクラウド領域でのITインフラ系の案件にサービスビジネスを巧みに織り込むことで手堅い収益構造を組み立て、日本ユニシスはデジタルやライフ領域のサービス事業の拡大で、営業利益率8~9%への拡大を視野に入れ始めている。 トヨタ自動車が本社を構える愛知県豊田市。市内には自動車関連の企業が集積している。小島プレス工業もその一つで、トヨタ自動車に樹脂部品や電子部品を供給している。
●新日鉄住金ソリューションズ(NSSOL)
ITインフラに商機ありオンプレとクラウドを両にらみ
ITインフラの刷新需要の高まりをうまくつかんだNSSOLは、昨年度(2017年3月期)連結売上高で過去最高の前年度比6.3%増の2324億円を達成している。クライアントをサーバーに集約する仮想デスクトップ(VDI)や、クライアントをサービスとして提供するDaaSがヒット商品となった。VDI方式は客先設置が多くを占め、官公庁向けではウェブ閲覧クライアントを仮想化する「ウェブ分離」基盤の商談規模が拡大する傾向にある。
NSSOLのITインフラビジネスを巡っては、この5月にハイパーコンバージドインフラ(統合型インフラ)ベンダーのニュータニックス・ジャパンが立ち上げた販売促進団体「Enterprise Cloud Association」に参加したり、日本オラクルと協業して、「Oracle Cloud」を自社サービスの一環として提供するなどITインフラ領域でサービスラインアップの拡充を意欲的に進めている。Oracle Cloudでは顧客専用の機材を客先に設置(オンプレミス)して、月額料金で利用できる「オンプレミス型の顧客専有パブリッククラウド」といったユニークなサービスも用意した。
パブリッククラウドでしか実現でなかった高度な伸縮性、柔軟性をオンプレミスでも実現できる技術要素が揃ってきたことで、オンプレミス型のITインフラビジネスが再び活気づく可能性が高まっている。謝敷宗敬社長は、「オンプレミス案件は比較的大型化しやすい傾向がある」と期待を寄せている。
今年度(18年3月期)の売上型は、前年度比1.1%増と微増の見通しで、これは新日鐵住金向けの基幹システム統合対応の案件がピークアウトすることで50億円ほどの減収が見込まれるため。この減収分をITインフラ関連など他で補ってプラス成長につなげる。
●日本ユニシス
利益目標の達成に意欲リソースを新領域に振り分け
今年度(2018年3月期)が中期経営計画(中計)の最終年度となる日本ユニシスは、中計の売上高目標であった3200億円に対して、今年度の売上高は前年度比2.7%増の2900億円程度にとどまる見込み。ただ、営業利益率は目標であった5.3%に対して5.5%の見通しと、利益目標は十分に射程圏内に収めている。
物販やSIといった既存ビジネスのサービス化が予想以上に早く進んだことで売り上げは思うように伸ばせなかったが、一方で「一部サービス事業では、SIでは到底実現できないような高い粗利率を出している」(平岡昭良社長)と、利益を生みだす力が着実に高まってきていると話す。
サービス事業を伸ばす重点領域として、「デジタル」と「ライフ」を挙げている。デジタル領域では今年3月に、決済事業を手がける事業部門を独立会社化。日本ユニシスの強みの一つであるカード決済事業に加えて、中国系の決済、ポイントチャージ、決済連動マーケティングなどを幅広く手がける。ライフ領域では、シェアリングエコノミーのビジネスプラットフォーム、訪日外国人の消費拡大に向けた各種施策などに取り組む。
新領域での技術開発やサービス化の推進にリソースを振り分けるため、平岡社長のトップダウンで既存のSEの稼働率を意識的に抑制。ここでつくりだした1000人月余りのリソースを新領域に割り振っている。来年度からの新しい中期経営計画では、「営業利益率8~9%に高めていくことを念頭に、売り上げ目標をどこに置くかを議論したい」(平岡社長)と、新領域におけるサービス化を推進することで収益力を高めていく。
記者の眼
目立つ基盤系の大型案件 デジタル新領域を手厚く
売り上げを伸ばしているSIerをみると、ITインフラやネットワーク基盤絡みの大型案件を多く抱えていることがうかがいしれる。ハードウェアの販売(いわゆる箱売り)ではなく、ハード販売を伴う基盤系のSIであり、その特性上、オンプレミス(客先設置)やデータセンター(DC)での構築となる。
業務アプリケーションの領域では、パッケージ化、サービス化が進むなか、手組みで大規模な基幹系システムを構築する案件はそれほど増えない。資金的な余力があるならば、むしろIoTやAI、FinTech系のデジタル新領域に投資したいと考えるユーザーが多くなる。SIerもこれに呼応するように「ビジネスIT」(NRI)や「デジタル/ライフ領域」(日本ユニシス)といったデジタル新領域への投資を手厚くする対応をとっている。
基盤系ビジネスで手堅く売り上げを伸ばしつつ、同時にデジタルやサービスの新領域で、将来に向けた手堅い収益構造をとれだけ多く打ち立てられるかが問われているといえそうだ。
次の成長にどうつなげるか
注力領域を大胆に設定する動きも
主要SIer上位50社の多くが、今年度も良好な見通しを示している。ここ数年の好調な業績に裏付けられた手応えを感じているSIerも少なくない。
NTTデータは、デルのサービス部門が今年度(2018年3月期)、フルに連結されるため、日本の情報サービス業界で初めてとなる年商2兆円達成を見込んでいる。ただ、このなかには海外子会社の決算期変更(12か月を超える決算)が含まれていることから“実力ベース”での2兆円超は19年3月期を待たなければならない可能性もある。
一方、JBCCホールディングス(JBグループ)は、付加価値ディストリビューション(VAD)子会社のイグアスを連結対象から外す影響から今期売上高で前年度比24.3%の大幅減収の見込みを出している。IBM製品のトップセラーであるJBグループは、06年に国内でVAD事業を立ち上げ、IBM製品のディストリビューションに努めてきた。だが、IBMのハードウェア製品事業の売却が相次いだこともあって、今年6月末でイグアスを独立させる判断を下した。とはいえ、JBグループがイグアスからIBM製品を含むVAD商材を仕入れる商流は変わらないため、連結売り上げは減るもののIBMのトップソリューションプロバイダのポジションは変わらない見込み。
また、セゾン情報システムも今期売上高を前年度比4.9%減の見通しを示している。これは売上高の約半分を占めるカードシステム事業などの減少分を見込んでいることが背景にある。主力商材でファイル転送/データ連携のHULFT(ハルフト)は、IBMの同種製品に次ぐ世界シェア2位に食らいつくなど好調に推移しており、昨年には北米市場での拡販を目的に米国にも現地法人を開設。中期経営計画も1年前倒しでつくり直すことも検討中だ。市場環境が良好な今、次の成長につなげる投資を活発化させる動きが目立つ。