2017年5月30日~6月3日の5日間、台湾・台北で総合コンピュータ見本市「COMPUTEX TAIPEI 2017」が開催された。アジア最大規模のITイベントとの呼び声が高いCOMPUTEX TAIPEIを通じて、台湾ICT市場の今を探る。日本企業にとって、果たして台湾ベンダーとのパートナーシップのメリットはあるのか。(取材・文/佐相彰彦)
ビジネスマッチングがカギ
今では、ワールドワイドで有数の大手ICTベンダーが存在する台湾。ICT市場が発展した大きな要因は、まだ小さかった台湾ベンダーがさまざまな国の大手ベンダーとパートナーシップを組んでOEMビジネスを拡大してきたことが背景にある。そのようなパートナーシップを結ぶきっかけの一つになっているのが「COMPUTEX TAIPEI」だ。1981年の開催から今回で37回目を迎えた。
規模は、出展社数が1600以上、出展小間数が約5000。来場者数は約13万人で、そのうち海外来場者が約4万人とアジア屈指のイベントとなっている。台北貿易センター(TWTC)や台北国際会議センター(TICC)、台北南港国際展示場(TWTC Nangang)など、複数の会場でテーマ別にベンダーがブースを出展していることから、自社のビジネスに適したブースにピンポイントで訪れることができる。今回は、「AI&ロボティクス」「IoTアプリケーション」「イノベーション&スタートアップ」「ビジネスソリューション」「ゲーミング&VR」の5テーマをメインに据えて出展社が製品・サービスを披露した。
TAITRA
葉明水
秘書長
開催前日の記者会見で、台湾貿易センター(TAITRA)の葉明水秘書長は、「ベンダーが新しい製品・サービスを披露し、来場者が製品・サービスをみて自社のビジネスにつながると判断すれば、その場で商談できるCOMPUTEX TAIPEIは、まさにビジネスマッチングを実現できる場である」とアピール。とくに、今回はスタートアップが272社出展したこともあり、「大手ベンダーとスタートアップの提携で新しいイノベーションが生まれることに期待したい」との考えを強調していた。
TCA
張笠
副幹事長
また、COMPUTEX TAIPEIでTAITRAとパートナー関係を結んでいる台北市コンピュータ協会(TCA)の張笠・海外拓銷及産業合作群副幹事長は、「台湾ならではの取り組みを進めていきたい」と述べた。これには、台湾内にハードウェアベンダーが多いため、他国のソフトウェアやサービスを組み合わせた「ソリューション」の提供を活発化させていきたいとの思惑が含まれている。IoTやAIによって新たな時代に突入することが期待されるなかで、今後さらに高性能の機器を市場に投入していくであろう台湾ベンダーも、他国のベンダーとのマッチングを望んでいる。
グローバルエコシステムの構築へ
台湾のなかで主要産業の一つになっているのがICTということもあり、COMPUTEX TAIPEIに対する台湾の期待は大きい。オープニングセレモニーでは、陳建仁副総統が参加。「グローバルエコシステムの構築を目指すことをコンセプトに掲げている」と改めてCOMPUTEX TAIPEIの意義を説いた。
台湾ではICT市場の拡大に向けて、PCのきょう体を省スペース化するためのマザーボードや長時間のバッテリ駆動の開発などに積極的に取り組んできた。これらの技術が、スマートフォンやタブレット端末の普及にもつながり、さまざまなデバイスが多くの生活シーンで活用されるようになった。今後は、さらなる「ハードウェアとソフトウェアの融合が、産業発展の競争力アップに必要不可欠な要素」と捉えており、台湾として海外ベンダーを積極的に受け入れる環境をさらに構築していく考えだ。
台湾
陳建仁
副総統
また、陳副総統は、「垂直産業環境は大きく変化しつつある。政府は、『数慧国家』『創新経済』などの政策を打ち出し、社会インフラの整備や人材育成の強化などに着手して、技術革新という世の中の流れを迎え入れたい」としている。そのため、官民共同で、人工知能(AI)を研究する場を立ち上げて、優秀な人材発掘を通じて台湾が世界でAIの領域で優位性を発揮できることを目指している。
加えて、ロボット研究開発の要素を小学校や中学校の教育プログラムに組み入れようとしている。陳副総統は、「スマートロボットの分野でも優位性を発揮し、ICT産業のさらなる発展を目指す」としている。
陳副総統の発言からも、COMPUTEX TAIPEIが台湾でいかに重要なイベントであるかを知ることができる。次ページでは、会場で目立っていた出展企業の製品・サービスを紹介する。
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