ソリューション連携がカギ
働き方改革の一環として、テレワークを推進し、モバイルPCを導入する企業が増えている。PCベンダー各社は、デバイスをさらに磨き上げるとともに、生産性向上のためにPCと働き方改革ソリューションの連携を強化している。政府が推進する働き方改革を支援する国産PCベンダーの取り組みとソリューションを紹介し、働き方改革実現へのヒントを探る。
増加傾向に転じるPC市場
米Gartnerの発表によると、2018年のグローバルのPC市場は久々に上昇に転じる見込みだ。年間のPCの出荷台数は、米MicrosoftがWindows 8をリリースした12年以降は記録的な低迷が続き、ピーク時の4分の3ほどの規模まで縮小した。それが今年、プラスに転じる。その大きな要因となるのが20年1月のWindows 7のサポート終了だ。
Windows 7は15年1月13日に無償のメインストリームサポートが終了し、延長サポートを提供していたが、20年1月13日に終了する。また、Windows 10のライセンスを購入したうえでダウングレード権を行使してWindows 7を利用しているケースもあるが、このダウングレード権も20年1月に終了する。
なお、Windows 8のサポートはすでに終了し、Windows 8.1の延長サポートは23年1月10日に終了するので、数年しか使うことができない。
サポートが終了すればセキュリティ更新が行われないため、ウイルスやマルウェアなどの攻撃に対して非常に危険な状態になってしまう。企業としては、情報漏えいやデータの消去など、存続危機にもなりかねない事態は絶対に避けたい。そのためにも延長サポートが終了する前に、現行のWindows 10へ乗り換えなければならない。
Windows 7のサポート終了まで、2年ほどの猶予があるが、Windows XPのサポート終了時の移行や検証に時間がかかったという記憶は新しい。企業やPCベンダー、販売店は早めの取り組みを進めている。NECフィールディングの境健成・ソリューション事業部マーケティング戦略部マネージャーは、「18年度から19年の上期にPCのリプレースのピークがくる」と予想している。また富士通もこれから高まるリプレース需要に備えて、1月22日に「Windows 7 & Office 2010移行支援サイト」を立ち上げ、周知活動に注力している。
テレワークによりモバイル化が進む
PC市場はグローバルで拡大の傾向にあるが、日本市場ではそれをさらに加速をさせる要因がある。政府主導の働き方改革だ。
今、日本企業の共通の課題となっているのが働き方改革の推進。長時間労働の是正、女性の登用・活用、病気治療や育児・介護と、仕事を両立できる環境づくりなどに取り組む企業は多い。ただし、単に労働時間を短縮するだけではアウトプットが減少し、生産性が落ち込んでしまう。労働生産性を高めることが、長時間労働を解消する抜本的な解決策とみられている。また、女性の登用・活用でも、結婚後の育児と仕事の両立が重要なポイントとなる。その解決策として、時短勤務・テレワークなどの勤務形態の多様化が注目されている。生産性向上や多様な働き方を支援するツールの一つがモバイルノートPCだ。
ユーザー企業の傾向として、富士通の丸子正道・ユビキタスビジネス事業本部プロモーション統括部シニアマネージャーは、「モバイル化を図っている企業が増えている。働く場所に制限されることなく、オフィスの環境をどこへでも持ち運べることが生産性を上げるポイントだと企業は考えている」と話す。企業のモバイルPCの導入は昨年から増えている。3月に発表したJEITAのPCの国内出荷実績によると、デスクトップPCやノートPC全体では、昨年から前年実績を下回り推移している。それに対し、より携帯性にすぐれたモバイルノートに絞ってみると、昨年の7月から前年実績を超えて推移。最新の1月の出荷台数は、デスクトップPCが前年比93.1%、ノートPCが87.2%だが、モバイルノートは138.3%だった。
この傾向について、パナソニック コネクティッドソリューションズの小林俊夫モバイルソリューションズ事業部マーケティングセンター商品企画部商品企画1課主務は、「セールスマンなど、外出頻度の多いユーザーのモバイルノート利用率は変わっていない。これまでオフィスでデスクトップPCやA4のノートPCを使っていた層がテレワークの普及により、モバイルノートへ乗り換えている」と話す。
働き方改革が高付加価値化を後押し
利用者層だけではなく、モバイルノートに求められる機能や性能も変わりつつある。NECの佐々木紀安パートナーズプラットフォーム事業部主任は、「モバイルノートの利用者は、セールスマンがほとんどで、外出時に大きなバッグをもち、そこにモバイルノートを入れていた。そのため、モバイルノートでも予算に合わせてややぶ厚い、重いモデルを導入する企業も少なくなかったが、育児や介護のため女性がテレワークをすることが増えると女性が持ち運びやすい軽さ、薄さがこれまで以上に重要になる」と説明する。例えば、NECの春モデル「VersaPro タイプVH」は、PCバッグではなく、ふだん使いの女性用バッグに入れることを想定し、薄く、軽くするだけではなく、四隅に丸みをもたせ、引っ掛かりにくくした。
モバイルノートに求められるのは薄さ、軽さ、堅牢性、バッテリの持ち時間などのモビリティだけではない。社外に持ち出す際のセキュリティ、在宅勤務者とオフィス出勤者の情報共有を図るウェブカメラやスピーカーなどのコミュニケーション機能、オフィスやサテライトオフィスでの作業を快適にする有線LAN端子などのインターフェースも必要だ。モバイルノートは、これらすべての機能を盛り込みつつ、モビリティ性能を備えた高機能モデルが求められており、販売金額も伸びていくとみられる。
今年、上向き傾向にあるPC市場だが、米Gartnerは上昇は小幅なものになると見込んでいる。グローバルよりも好調になりそうな日本市場だが、20年以降はその反動が懸念される。
その対策として、PCベンダーが取り組んでいるのがPCとソリューションの組み合わせだ。東芝クライアントソリューションの小杉稔執行役員国内マーケティング本部長は、「機動力の向上や気兼ねなく使える堅牢性だけではなく、労働生産性の向上の3拍子が揃う必要がある。PCとソリューションを組み合わせることで、生産性を高めることができる」と話す。
とくに力を入れているのが、働き方改革の推進を支援するソリューションの提供だ。次ページから国産PCベンダーがモバイルノートとセットで提供するソリューションを紹介する。
[次のページ]働き方改革を支援する PCベンダーのソリューション