全体の運用を考えた対策がカギに
ICTを使った教育を妨げない
学校でのIT活用という意味では、教育指導を本職とする教員が利用すること、児童・生徒が日常的に情報システムに触れる機会があるなど、企業や自治体とはまた異なる特徴がある。ITベンダーがセキュリティ対策製品を提供するにあたっては、こうした事情は押さえておかなくてはならない。学校向けのセキュリティ対策としては、どのような提案が刺さるのか。ポイントは、製品カットにとらわれず、最適なソリューションを組み合わせた提案にありそうだ。
全国に販売網を展開し、学校向けにも多くの実績をもつダイワボウ情報システム(DIS)。「ディストリビュータとして、特定のメーカーにこだわらない提案を行っている。各自治体(教育委員会)における財政面の状況や課題もさまざまであるため、整備の優先度を加味した段階的な提案を行っている」と、松原光一郎・マーケティング部長は提案のポイントを語る。
DISの教育IT市場向けセキュリティ対策ビジネスとしては、「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」のセキュリティ対策イメージに対応するソリューションを、「ネットワーク分離」「無害化」「暗号化」「不正アクセス対策」「二要素認証」「ログ収集」「電磁的記録媒体」の7カテゴリに分類し、製品を体系的に提案する方針だ。
さらに今後は、20年から順次実施される学習指導要領改訂に関わる学習系システムはもとより、「働き方改革に関連した校務系システムとの連携など、さらにセキュリティ面の重要性は高まると推測している。また、「情報端末の導入自体も『保有』から『使用』へと移行していく可能性も高まるとみている」という。「この先、ガイドラインは同様であったとしても、セキュリティ対策のあり方はさらに変化していくと考えられる。それに応じて、当社の提案も柔軟に変化させていく」と松原部長は説明する。
内田洋行も、特定のメーカーにこだわらず、現場の状況を理解したうえで、バランスよく提案することに重きを置いている。「特定の切り口だけでみると、特定のメーカーだけでいいということもあるかもしれない。しかし、限られた予算のなかでは全体のバランスをみていかないと、運用に堪えないものを導入してしまうことにもなりかねない。システムの使い勝手や情報資産の重み付けもお客様によって事情が異なる可能性がある。ていねいに運用状況をみたうえで提案していく必要がある」と、内田洋行の小林徹・営業本部メジャーアカウント&パブリックシステムサポート事業部ネットワークテクニカルサポートセンター部長は語る。
同社は、16年に「教育情報セキュリティのための緊急提言(案)」が発表されると、ネットワーク分離や、校務系システムのクラウド管理、二要素認証、学校・職員向けの研修などをはじめ、提言に盛り込まれた各事項に対応するセキュリティ対策を提案してきた。17年の「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」を受けてはまた新たに資料を用意し、同社の提供する幅広いセキュリティ対策ソリューションを解説している(図参照)。
セキュリティビジネスの展開にあたり、同社ならではの強みとするのが、「提案に幅の広さ、深さ、奥行きがある」ことだと白方執行役員は説明する。「民間企業や自治体向けにもビジネスを展開しており、それらの経験を踏まえたうえで、教育現場向けにさまざまな選択肢を提供する。そのうえで当社は、1948年から学校教育市場向けのビジネスを開始し、70年間のなかで、学校現場での利用の実態や課題を理解しており、教育分野の知見に深さがある。また、ヘルプデスクを備え、全国約150人いるICT支援員が、現場のIT運用や利活用をサポートするほか、納めた環境を維持するためのマネージドサービスも提供している。計画と納入するだけでなく、その先の運用まで全部請け負える。その幅、深さ、奥行きが強みで、そこにお気づきいただけたお客様から選んでいただくことも多い」と話す。ただし、内田洋行としては今後もセキュリティ対策の提供を前面に推していくというわけではない。「セキュリティを高めたためにICTを使った教育を妨げては意味がない」(小林部長)と、あくまで安心してICTを利活用できることが前提。「学校でICTをうまく利活用していく一環として、セキュリティ対策を提案していく」考えだ。

企業動静
《教育ITセキュリティ》
■アルプス システム インテグレーション(ALSI)
「Chromebook」を利用する教育機関に対し、セキュアウェブゲートウェイサービス「InterSafe GatewayConnection」のウェブフィルタリングサービス「スクールパック」の提供を6月1日に開始する。「InterSafe WebFilter」と同等の機能をクラウドで導入・利用することができるため、「Chromebook」と「InterSafe GatewayConnection」を合わせて利用することにより、利用する生徒の安全を確保しながら、教職員やシステム担当職員の管理負荷、コストの削減を実現する。
18年5月8日
■アルプス システム インテグレーション(ALSI)
ネットワーク分離を論理的に実現する仮想環境でのファイル暗号化ソリューション「InterSafe FileProtection Basic」を4月27日より販売開始。教育現場でニーズが高まるネットワーク分離を論理的、かつ低コストに実現できるSBCに対応したセキュリティ対策製品として提供する。
18年4月26日
■デジタルアーツ
「i-FILTER」と警報装置を連動させ、さいたま市教育委員会へ導入。児童生徒が自殺関連サイトへのアクセスを試みた際に学校側が即座に対応できる仕組みが「i-FILTER」のアラート通知と警報装置との連動によって実現した。
18年4月3日
■チエル
タブレット端末向けセキュリティソフト「Winkeeper TB」の改訂版「Ver1.5」を6月25日にリリース予定。Winkeeper TBは、学校に整備されたタブレットやノートPCの盗難・紛失・不正利用に起因する事故を未然に防ぐセキュリティソフトで、17年7月に発売した。「Ver1.5」では、文部科学省「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」でモバイル端末の紛失・盗難対策の一環として推奨されている「自己消去機能」を搭載した。
18年3月28日
■HPE Aruba
岐阜県恵那市が、教育現場におけるICT活用の推進を目的に、Arubaの無線LANソリューションを導入したと発表。市内すべての公立小中学校にArubaのアクセスポイント「Aruba IAP-305」を設置し、仮想コントローラ機能を利用して集中管理を行っている。導入にあたり、恵那市はセキュリティを重視した。
18年1月15日
■ユニアデックス
「教育委員会向けネットワーク分離ソリューション」パッケージの提供を開始。インターネットに接続する機能を「VMware H orizon」で分離するとともに、「VMware NSX」によるマイクロセグメンテーション機能で、マルウエアに感染した際の被害を最小限に抑えることができる。
17年12月18日
■NTTデータ
東京・町田市内の公立小中学校の2校に対し、12月4日からタブレット端末「Chromebook」を先行配付し、18年2月をめどに教職員向けシンクライアント環境の提供を開始する。18年度から20年度にかけて、町田市内の全公立小中学校計62校に順次展開予定。
17年12月4日
■チエル
SHIELDEXが提供する、ファイル自動暗号化ソリューション「SHIELDEX EnCrypto」を17年12月7日より販売を開始。文部科学省が公表した「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」に応じた製品として、ファイル自動暗号化・復号や、ファイル利用の権限制限・管理などの機能により、教職員の業務負担を軽減し、安全・安心な校務文書の運用実現を支援する。SHIELDEXは、チエル、ソフトキャンプジャパン、Venture Bridgeの3社で17年9月26日に設立した企業で、チエルとは情報セキュリティ対策製品「SHIELDEX」の文教市場(教育委員会/小中高大)における販売代理店契約を10月24日に締結した。
17年11月22日
■ヴイエムウェア
愛媛県教育委員会が「次期愛媛スクールネット」にヴイエムウェアのソリューションとNTT西日本グループによるセキュリティサービスを採用したと発表。「次期愛媛スクールネット」は文部科学省の「教育情報セキュリティのための緊急提言」に全国で初めて準拠したシステムで、18年4月の運用開始を目指す。
17年10月2日
■NEC
大阪市教育委員会に市内の全小中学校422校でのICTを活用した授業を支える学校教育ICTサービスを提供。授業支援やセキュリティ対策、ICT機器の統合管理などの機能を備えたシステムをNECのデータセンターにプライベートクラウド型で構築し、サービスとして提供することで、システムの安定性・可用性の確保や運用効率化を実現している。
17年7月14日
■安川情報システム
学校向けの新しいセキュリティコンセプト「スマートスクールセキュリティ」を発表。2018年度より関連製品・サービスの販売を順次開始する。IoTノウハウとAIを用いて、学校におけるセキュリティ対策を支援する。
17年5月17日
■デジタルアーツ
小学生のiPadの授業活用を安心して行う環境作りとして、「i-FILTER ブラウザー&クラウド」と「MobiConnect for Education」を椙山女学園大学附属小学校が導入。
17年5月16日
記者の眼
16年に起こった佐賀県での学校教育ネットワークに対する不正アクセスによる情報漏えいをきっかけとして、政府はただちに学校におけるセキュリティ対策整備に向けて動き出した。「教育情報セキュリティのための緊急提言」と「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」を受けて、必要なセキュリティ対策や組織体制は示されたかたちだ。現状はまだ十分に進んでいるとは言い難いものの、今後は本格的に検討が進んでいくとみられる。
課題となるのは、IT導入にあたりつきもののコスト。さらに、教育現場ならではのIT活用事情を理解したうえで、最適な提案を行えるかも重要だ。学校向けのセキュリティ製品やサービスをもつメーカーにとっては、自社の製品がすぐれていることだけでなく教育現場をよく理解したパートナーと組むこと、販社にとっては、学校や教育委員会のまさによりよいパートナーとなり得ているかが、今後の学校向けセキュリティビジネスのカギを握りそうだ。