Special Feature
企業ITの“本丸”を狙う パブリッククラウドの攻勢とSIerのビジネスチャンス
2018/06/06 09:00
週刊BCN 2018年05月28日vol.1728掲載
パブリッククラウド大手が、ユーザー企業の基幹業務システムの取り込みを加速させている。足並みを揃えるかのように有力SIerも、基幹業務システムのクラウド移行の支援ビジネスに力を入れる。営業支援やグループウェアなどのフロントエンドシステム、あるいはAI/IoTといったIT新領域は、いち早くクラウド活用が進展した。しかし、既存のIT領域の代表格である基幹業務システムは、依然としてオンプレミスかSIerのデータセンター(DC)でのハウジングが主流である。企業ITの“本丸”ともいえる基幹業務のクラウド進展をSIerは、どう受け止め、どこにビジネスチャンスを見出しているのか。(取材・文/安藤章司)
ユーザー企業のフロントエンド系のシステムやIT新領域がパブリッククラウドに移行していくなか、既存ITの代表格である基幹業務システムは、依然としてオンプレミス(客先設置)型や、SIerのDCに預けるケースが多い。
パブリッククラウド大手からみれば、基幹業務システムの領域は未開拓の“ブルーオーシャン”。一方SIerからみると、自分たちが手がけてきた既存のオンプレミスのITインフラビジネスは、今後大きく伸びる可能性は高くない。それならば、パブリッククラウド大手と協業して、基幹業務システムのパブリッククラウドへの移行ビジネスでチャンスをつかんだほうが、今後の伸びしろが大きいとみるSIerが増えている。
SIerの関与できないパブリッククラウドで、もし障害が発生したら誰が責任をとるのか。例えば、「『止まっていた時間分の代金を返却する』といった安易な契約内容では、企業顧客は到底納得しない」と、ある大手SIer幹部は話す。既存システムのITインフラだけをパブリッククラウドに入れ換えたところで、節約できるコストは限られる。こうした課題を把握しつつも、SIerは基幹業務システムのパブリッククラウド移行をビジネスチャンスと捉えている。
SIerの「チャンス」と「リスク」
SIerにとって、パブリッククラウドは「ビジネスチャンス」であると同時に「リスク要因」でもある。TISインテックグループでは、TISは主にAWS、インテックは主にIBMクラウド、Microsoft Azureは両社といった具合に、グループ主要2社で適度に役割とリスクを分散しながらビジネスチャンスをつかんでいく体制を組んでいる。
TISの黒田訓功・プラットフォームサービスコンサルティング部長は、「パブリッククラウドが基幹業務システムの運用に耐え得る性能になるに伴い、従来のITインフラを見直す機会が増えている」と、ITインフラ回りの商談機会が活気づいていると話す。SIerにとって商談機会が増えるのはよいことだ。実際、TISのITインフラ関連の直近のビジネス規模は、「ITインフラの見直し機運」の高まりが追い風となって前年同期比で10%程度の伸びだという。
パブリッククラウドベンダーが、基幹業務システムへの対応を加速させ、世界規模で告知活動を展開していることもあり、ユーザー企業がもっていた“パブリッククラウドは安かろう、悪かろう”といった「従来の印象が変わりつつある」(黒田部長)。パブリッククラウドを活用する際、「ある程度まとまった予算を確保してくれる」ことも、商談に弾みをつけている。
一方、リスク要因は、これまでオンプレミス機材の保守運用や、TISインテックグループの自社DCで機材を預かるといったビジネスが減ってしまう危険性があること。また、今はAWSやAzure、IBMクラウド、グーグルクラウド、オラクルクラウドなどがメジャーだが、こうしたトレンドはTISのあずかり知らないところで変わっていく可能性があること。変化の大きいフロントエンド系やサブシステムのレベルならばともかく、基幹業務系システムは短くても5年、長ければ10年スパンで運用することが一般的。ITインフラに変化が大きすぎるのもリスクになる。
チャンスとリスクの両方をもちながらも、もし時流に乗ったパブリッククラウドと密接な関係を保たなければ、「ある日、気づいたら世の中のトレンドに大きく遅れをとってしまい、顧客から『最新トレンドに疎いSIerだ』と見限られてしまう」(TISの渡邊敦史・プラットフォームサービスコンサルティング部主査)ことは、なんとしても避けなければならない。こうした判断のもと、TISインテックグループでは、これまで適用することが少なかった基幹業務システム領域においても、パブリッククラウドを積極的に活用する方向に舵を切っている。
TISの黒田訓功部長(左)、渡邊敦史主査
侮れないPaaSを使った高速開発
インテックでも、基幹業務システムのITインフラにパブリッククラウドを採用する商談が活発化している。例えば、海外展開を積極的に進める大手製造業ユーザーがIBMクラウドを採用。IBMクラウドの利用料金のなかにDC間の通信料金が含まれる“お得感”が得られることや、世界各地のITインフラを統一しやすい点などにメリットを見出したケースである。「グローバル企業ユーザーは、早い段階から主要クラウドベンダーのインフラに着目。基幹業務システムのクラウド移行の商談は途切れることがないほど盛況」(インテックの君塚修・クラウドサービス事業部長)だと手応えを感じている。
もう一つの類型は、AI/IoTに象徴される新しいIT領域への投資意欲の増大である。クラウドはインフラ部分のIaaS層と、開発環境のPaaS層に大きく分かれるが、主要各社がこぞって差異化に力を入れるのがPaaS層だ。PaaS層はIT新領域のシステム開発に適したツールが揃っており、「PaaSを使わないシステム開発に比べて、はるかに高速な開発が可能になる」(インテックの北村基・クラウドサービス事業部クラウドサービス部副部長)と生産性の高さを指摘する。
右からインテックの君塚 修事業部長、神保岳大課長、北村 基副部長、西野勝則課長
インテックが担当するIBMクラウドは、企業向けAIのWatsonをはじめ企業の業務システムに特化したPaaS層が充実。また、IaaS層もハードウェアを直接使えるベアメタルや、企業ITで広く使われている仮想化基盤のVMwareにもいち早く対応している。「企業システムを受け入れる環境が整ったクラウドであること」(インテックの西野勝則・クラウドサービス事業部クラウドサービス部サービス企画開発課長)を前面に押し出している。
しかし一方で、基幹業務システムを支えるITインフラを、パブリッククラウドという自らのコントロールできる範囲の外に依存するのに抵抗を感じるユーザーが一定数存在するのも事実だ。そこで、インテックでは、ユーザー企業とTISインテックグループの各種DC/クラウドサービス、そしてIBMクラウドなどのクラウドサービスを相互接続する閉域ネットワークサービス「DCAN」を活用する。
DCANを使えば、オンプレミスやTISインテックグループのハウジング、クラウドを、仮想的に一つのITインフラとして接続できる。既存のオンプレミスやDCを使いながら、PaaSなどのメリットを段階的に利用することで、「スムーズなITインフラのモダナイズ(近代化)」(インテックの神保岳大・N&O事業推進部ICTサービス課長)が可能になる。業務システムを動かすITインフラは適材適所で選ぶマルチクラウド戦略を実践。リスクを抑えつつ、パブリッククラウドのメリットを積極的に取り込んでいくことでビジネスを伸ばす。
勘定系システムをAzureに対応へ
日本ユニシスグループは、パブリッククラウド対応を巡ってグループで役割を分担している。日本ユニシス本体がAzureとAWS、グループ会社のエス・アンド・アイがIBMクラウドを主に担当。パブリッククラウドの特性に合わせて販売体制を整備したり、人材を育成する体制である。
日本ユニシスでは、自社で開発している地銀向け勘定系システム「BankVision(バンクビジョン)」を、Azure上で稼働させるプロジェクトを今年度からスタートさせている。同勘定系システムは、山梨中央銀行や北國銀行、大垣共立銀行など10行で採用されており、豊富な実績のあるシステム。「フルバンキングシステムのパブリッククラウド環境への実装は国内初の取り組み」(日本ユニシスの萬代光晴・基盤技術部クラウド技術一室室長)と胸を張る。
インターネットバンキングなどのフロントエンド系システムは、すでにクラウド移行が進んでいるが、「勘定系だけは従来のオンプレミス型のままで、いわば切り離されている状態」(日本ユニシスの小倉雅人・データ&サービス企画部サービス企画室室長)。これを機に、勘定系とフロントエンド系、FinTechサービスがクラウド上で統合していく動きに弾みがつくと、日本ユニシスではみているわけだ。APIの公開は、クラウド環境と親和性が高く、銀行にとってもAPIを通じてさまざまな外部のFinTechサービスと連携することで「新しい収益源の開拓」(日本ユニシスのデータ&サービス企画部サービス企画室・大野力氏)につながることが期待されている。
国内FinTech産業振興に向けて銀行にAPIの開放を求める国の政策と、基幹業務システムを取り込みたいパブリッククラウドベンダー、こうした動きをビジネスチャンスと捉える日本ユニシスの思惑が具現化した。
左から日本ユニシスの萬代光晴室長、大野 力氏、小倉雅人室長
閉域ネットワークでデータを保護
一方、IBMクラウドを主に担当するグループ会社のエス・アンド・アイは、IBM Watsonの学習データ(コーパス)作成にいち早く取り組むなど、日本IBMと密接に連携。企業向けAIのWatsonはIBMクラウドのPaaS層の中核部分を占め、他のクラウドベンダーとの差異化の要になっている。Watson関連の商談件数は、この1年で200件を超えるなど、「顧客企業の関心は極めて高い」(エス・アンド・アイの佐々博音・コグニティブソリューション統括部長)と手応えを感じている。
左からエス・アンド・アイの佐々博音統括部長、川辺隆史統括部長、田村宏樹マネージャー
Watsonの活用をはじめ新しいIT領域への投資意欲は高まるものの、既存の基幹業務システムをIBMクラウドへ移行する動きは「まだ本格化していない」(同)という。データ保護の観点から、「重要データは自分たちがコントロールできるITインフラを使いたいとの心理的作用が、依然として強い」(エス・アンド・アイの川辺隆史・ストラテジックサービス統括部長)ことなどが背景にあるとみている。
エス・アンド・アイでは外部からの接続ができない閉域ネットワークをIBMクラウドとの間に構築。「IBMクラウド側にデータを残さずにWatsonを使う仕組み」(エス・アンド・アイの田村宏樹・マネージドサービスマネージャー)といったデータ保護の機能を充実させていくことで、基幹業務システムのクラウド移行を段階的に推進していく。
基幹業務は“ブルーオーシャン”
ユーザー企業のフロントエンド系のシステムやIT新領域がパブリッククラウドに移行していくなか、既存ITの代表格である基幹業務システムは、依然としてオンプレミス(客先設置)型や、SIerのDCに預けるケースが多い。
パブリッククラウド大手からみれば、基幹業務システムの領域は未開拓の“ブルーオーシャン”。一方SIerからみると、自分たちが手がけてきた既存のオンプレミスのITインフラビジネスは、今後大きく伸びる可能性は高くない。それならば、パブリッククラウド大手と協業して、基幹業務システムのパブリッククラウドへの移行ビジネスでチャンスをつかんだほうが、今後の伸びしろが大きいとみるSIerが増えている。
SIerの関与できないパブリッククラウドで、もし障害が発生したら誰が責任をとるのか。例えば、「『止まっていた時間分の代金を返却する』といった安易な契約内容では、企業顧客は到底納得しない」と、ある大手SIer幹部は話す。既存システムのITインフラだけをパブリッククラウドに入れ換えたところで、節約できるコストは限られる。こうした課題を把握しつつも、SIerは基幹業務システムのパブリッククラウド移行をビジネスチャンスと捉えている。
TISインテックグループ
SIerの「チャンス」と「リスク」
SIerにとって、パブリッククラウドは「ビジネスチャンス」であると同時に「リスク要因」でもある。TISインテックグループでは、TISは主にAWS、インテックは主にIBMクラウド、Microsoft Azureは両社といった具合に、グループ主要2社で適度に役割とリスクを分散しながらビジネスチャンスをつかんでいく体制を組んでいる。
TISの黒田訓功・プラットフォームサービスコンサルティング部長は、「パブリッククラウドが基幹業務システムの運用に耐え得る性能になるに伴い、従来のITインフラを見直す機会が増えている」と、ITインフラ回りの商談機会が活気づいていると話す。SIerにとって商談機会が増えるのはよいことだ。実際、TISのITインフラ関連の直近のビジネス規模は、「ITインフラの見直し機運」の高まりが追い風となって前年同期比で10%程度の伸びだという。
パブリッククラウドベンダーが、基幹業務システムへの対応を加速させ、世界規模で告知活動を展開していることもあり、ユーザー企業がもっていた“パブリッククラウドは安かろう、悪かろう”といった「従来の印象が変わりつつある」(黒田部長)。パブリッククラウドを活用する際、「ある程度まとまった予算を確保してくれる」ことも、商談に弾みをつけている。
一方、リスク要因は、これまでオンプレミス機材の保守運用や、TISインテックグループの自社DCで機材を預かるといったビジネスが減ってしまう危険性があること。また、今はAWSやAzure、IBMクラウド、グーグルクラウド、オラクルクラウドなどがメジャーだが、こうしたトレンドはTISのあずかり知らないところで変わっていく可能性があること。変化の大きいフロントエンド系やサブシステムのレベルならばともかく、基幹業務系システムは短くても5年、長ければ10年スパンで運用することが一般的。ITインフラに変化が大きすぎるのもリスクになる。
チャンスとリスクの両方をもちながらも、もし時流に乗ったパブリッククラウドと密接な関係を保たなければ、「ある日、気づいたら世の中のトレンドに大きく遅れをとってしまい、顧客から『最新トレンドに疎いSIerだ』と見限られてしまう」(TISの渡邊敦史・プラットフォームサービスコンサルティング部主査)ことは、なんとしても避けなければならない。こうした判断のもと、TISインテックグループでは、これまで適用することが少なかった基幹業務システム領域においても、パブリッククラウドを積極的に活用する方向に舵を切っている。
侮れないPaaSを使った高速開発
インテックでも、基幹業務システムのITインフラにパブリッククラウドを採用する商談が活発化している。例えば、海外展開を積極的に進める大手製造業ユーザーがIBMクラウドを採用。IBMクラウドの利用料金のなかにDC間の通信料金が含まれる“お得感”が得られることや、世界各地のITインフラを統一しやすい点などにメリットを見出したケースである。「グローバル企業ユーザーは、早い段階から主要クラウドベンダーのインフラに着目。基幹業務システムのクラウド移行の商談は途切れることがないほど盛況」(インテックの君塚修・クラウドサービス事業部長)だと手応えを感じている。
もう一つの類型は、AI/IoTに象徴される新しいIT領域への投資意欲の増大である。クラウドはインフラ部分のIaaS層と、開発環境のPaaS層に大きく分かれるが、主要各社がこぞって差異化に力を入れるのがPaaS層だ。PaaS層はIT新領域のシステム開発に適したツールが揃っており、「PaaSを使わないシステム開発に比べて、はるかに高速な開発が可能になる」(インテックの北村基・クラウドサービス事業部クラウドサービス部副部長)と生産性の高さを指摘する。
インテックが担当するIBMクラウドは、企業向けAIのWatsonをはじめ企業の業務システムに特化したPaaS層が充実。また、IaaS層もハードウェアを直接使えるベアメタルや、企業ITで広く使われている仮想化基盤のVMwareにもいち早く対応している。「企業システムを受け入れる環境が整ったクラウドであること」(インテックの西野勝則・クラウドサービス事業部クラウドサービス部サービス企画開発課長)を前面に押し出している。
しかし一方で、基幹業務システムを支えるITインフラを、パブリッククラウドという自らのコントロールできる範囲の外に依存するのに抵抗を感じるユーザーが一定数存在するのも事実だ。そこで、インテックでは、ユーザー企業とTISインテックグループの各種DC/クラウドサービス、そしてIBMクラウドなどのクラウドサービスを相互接続する閉域ネットワークサービス「DCAN」を活用する。
DCANを使えば、オンプレミスやTISインテックグループのハウジング、クラウドを、仮想的に一つのITインフラとして接続できる。既存のオンプレミスやDCを使いながら、PaaSなどのメリットを段階的に利用することで、「スムーズなITインフラのモダナイズ(近代化)」(インテックの神保岳大・N&O事業推進部ICTサービス課長)が可能になる。業務システムを動かすITインフラは適材適所で選ぶマルチクラウド戦略を実践。リスクを抑えつつ、パブリッククラウドのメリットを積極的に取り込んでいくことでビジネスを伸ばす。
日本ユニシスグループ
勘定系システムをAzureに対応へ
日本ユニシスグループは、パブリッククラウド対応を巡ってグループで役割を分担している。日本ユニシス本体がAzureとAWS、グループ会社のエス・アンド・アイがIBMクラウドを主に担当。パブリッククラウドの特性に合わせて販売体制を整備したり、人材を育成する体制である。
日本ユニシスでは、自社で開発している地銀向け勘定系システム「BankVision(バンクビジョン)」を、Azure上で稼働させるプロジェクトを今年度からスタートさせている。同勘定系システムは、山梨中央銀行や北國銀行、大垣共立銀行など10行で採用されており、豊富な実績のあるシステム。「フルバンキングシステムのパブリッククラウド環境への実装は国内初の取り組み」(日本ユニシスの萬代光晴・基盤技術部クラウド技術一室室長)と胸を張る。
インターネットバンキングなどのフロントエンド系システムは、すでにクラウド移行が進んでいるが、「勘定系だけは従来のオンプレミス型のままで、いわば切り離されている状態」(日本ユニシスの小倉雅人・データ&サービス企画部サービス企画室室長)。これを機に、勘定系とフロントエンド系、FinTechサービスがクラウド上で統合していく動きに弾みがつくと、日本ユニシスではみているわけだ。APIの公開は、クラウド環境と親和性が高く、銀行にとってもAPIを通じてさまざまな外部のFinTechサービスと連携することで「新しい収益源の開拓」(日本ユニシスのデータ&サービス企画部サービス企画室・大野力氏)につながることが期待されている。
国内FinTech産業振興に向けて銀行にAPIの開放を求める国の政策と、基幹業務システムを取り込みたいパブリッククラウドベンダー、こうした動きをビジネスチャンスと捉える日本ユニシスの思惑が具現化した。
閉域ネットワークでデータを保護
一方、IBMクラウドを主に担当するグループ会社のエス・アンド・アイは、IBM Watsonの学習データ(コーパス)作成にいち早く取り組むなど、日本IBMと密接に連携。企業向けAIのWatsonはIBMクラウドのPaaS層の中核部分を占め、他のクラウドベンダーとの差異化の要になっている。Watson関連の商談件数は、この1年で200件を超えるなど、「顧客企業の関心は極めて高い」(エス・アンド・アイの佐々博音・コグニティブソリューション統括部長)と手応えを感じている。
Watsonの活用をはじめ新しいIT領域への投資意欲は高まるものの、既存の基幹業務システムをIBMクラウドへ移行する動きは「まだ本格化していない」(同)という。データ保護の観点から、「重要データは自分たちがコントロールできるITインフラを使いたいとの心理的作用が、依然として強い」(エス・アンド・アイの川辺隆史・ストラテジックサービス統括部長)ことなどが背景にあるとみている。
エス・アンド・アイでは外部からの接続ができない閉域ネットワークをIBMクラウドとの間に構築。「IBMクラウド側にデータを残さずにWatsonを使う仕組み」(エス・アンド・アイの田村宏樹・マネージドサービスマネージャー)といったデータ保護の機能を充実させていくことで、基幹業務システムのクラウド移行を段階的に推進していく。
パブリッククラウド大手が、ユーザー企業の基幹業務システムの取り込みを加速させている。足並みを揃えるかのように有力SIerも、基幹業務システムのクラウド移行の支援ビジネスに力を入れる。営業支援やグループウェアなどのフロントエンドシステム、あるいはAI/IoTといったIT新領域は、いち早くクラウド活用が進展した。しかし、既存のIT領域の代表格である基幹業務システムは、依然としてオンプレミスかSIerのデータセンター(DC)でのハウジングが主流である。企業ITの“本丸”ともいえる基幹業務のクラウド進展をSIerは、どう受け止め、どこにビジネスチャンスを見出しているのか。(取材・文/安藤章司)
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