ストレージのこれから
これからのデータ管理
多くのパブリッククラウドが登場し、企業はそれぞれの機能、特性に合わせて使い分けるマルチクラウドの時代になった。それによって企業のデータはオンプレミス環境だけではなく、複数のパブリッククラウド上に点在。この点在したデータを統合管理できるツールが求められている。また統合の先には最適な場所にデータを自動で移動する自動階層化が見えている。
日本ヒューレット・パッカード
ニンブルのAIを活用し自動階層化・修復へ
川端 真
ハイブリッドIT事業統括
データプラットフォーム統括本部
技術本部 本部長
ヒューレット・パッカード(HPE)は、買収や新しい技術の取り込みを積極的に行っている。同社の強みは、取り入れた新しいテクノロジーを既存のテクノロジーときちんと連携させ、相乗効果を出している点だ。ストレージの分野でもこの戦略は同様だ。
昨年、AWS、Microsoft Azure、Google Cloud Platformなどのパブリッククラウドと、同社のオンプレミス環境をまとめて管理できる「OneSphere」をリリースした。このツールにより、高野勝・ハイブリッドIT事業統括 データプラットフォーム統括本部 エバンジェリストは「今どの仮想マシンで何GB動いているか、またコストも管理できる」と話す。現段階では、オンプレミス環境、パブリッククラウド環境の統合管理だけだが、次のフェーズではオンプレミス、パブリッククラウド間でデータの移動ができるよう、移動エンジンを搭載する計画だ。そしてその先が17年に買収したニンブルの予測分析/監視サービス「InfoSight」との連携だ。
高野 勝
ハイブリッドIT事業統括
データプラットフォーム統括本部
エバンジェリスト
InfoSightは、顧客データセンターで実稼働しているストレージ・システムから大量のテレメトリデータを収集し、クラウド上でマシンラーニングを行うAIだ。この学習結果を使って、どのデータをどこに移動させるのが最適かを、InfoSightに判断させる、つまり自動階層化を実装する計画だ。また、故障を予測できる点を活用し、将来的には不具合を自動で修復できる機能を搭載する。「使っている側はストレージを気にしなくてすむようになる。これがHPEの考えるストレージの姿だ」と高野エバンジェリストは語る。
日本アイ・ビー・エム
Watsonがデータの特性を判断
村田 実
システムズ・
ハードウェア事業本部
ストレージ・システム事業部
ビジネス開発担当
副事業部長
パブリッククラウド「IBM Cloud」を提供しているIBM。IBM Cloudだけではなく、AWS、Azure上で動くソフトウェア デファインド ストレージ(SDS)の「IBM Spectrum Storage」を提供。オンプレミス環境とマルチクラウド環境のストレージを統合することができる。
データの統合管理の次として、同社が強化しているのが自動階層化だ。同社はフラッシュ、ディスクだけではなく、膨大なデータを低コストで保存できるテープ ストレージもラインアップしている。村田実・システムズ・ハードウェア事業本部 ストレージ・システム事業部 ビジネス開発担当 副事業部長は「バックアップデータやアーカイブデータ、分析が終わった後のデータなど、いわゆるセカンダリデータが今後増えていく。調査会社によると、企業が保有するデータの7割がこのセカンダリデータになるといわれている」と話す。つまり、セカンダリデータの格納場所として、コストパフォーマンスに優れたテープ ストレージを積極的に活用していく考えだ。
ただ、どのデータを、どのストレージに移動するのが最適か。村田副事業部長は「人ではとても判断しきれない。そこで、AI、IBM Watsonを活用する」という。IBM Watsonがデータの特性の違いをみて、効率よく自動的にデータを動かす。そしてマルチクラウドにもデータを移動できるようにしていく。「どこにデータを置いたらいいか、またどこにデータがあるか、人は考えなくてもすむようになる」(村田副事業部長)。こうした未来に向けて、今開発に取り組んでいる。
ネットアップ
同一の管理ツールでオンプレとクラウドを結ぶ
NAS・SANなどオンプレミス環境におけるストレージデータ管理技術を提供してきた
近藤正孝
常務執行役員
Chief Technology
Officer
システム技術本部
同社だが、近藤正孝・ 常務執行役員 Chief Technology Officerシステム技術本部は、「今後、爆発的にデータが増えていくなかで、これまでのように箱モノのストレージを購入する割合は、市場のなかでどのくらいになるかわからない。クラウドにデータを置くケースが増えていくかもしれない」と話す。そうした将来を見据えて、クラウド環境でも同社のストレージデータ管理技術を提供している。
オンプレミス環境でもクラウド環境でも、同一の管理ツールを提供している点が特徴だ。例えば、データ管理ソフトの「ONTAP」は、同社のフラッシュ、ディスクといった、いわゆる箱モノのストレージだけではなく、ソフトウェアアプライアンス「ONTAP Cloud」としてAWS、Azureなどのパブリッククラウド上にも提供している。これにより、ONTAPという同一の管理ツールを乗せたオンプレミス環境とパブリック環境をレプリケーションすることができる。
レプリケーションができるのは、同一の管理ツールを乗せたフラッシュ、ディスク、クラウド、ソフトウェアと製品の縦軸だけだが、17年からは横のつながり、例えば、ONTAPとSolidFireなど製品をまたいだ連携を進めている。
また、マルチクラウドのITリソースを単一の画面で確認できるオーケストレーションツールの実装にも取り組む。これに関しては、すでに昨年買収した技術と既存製品との連携の調整を行っており、今年後半にリリースする予定だ。
これからのストレージ
データは年々膨らみ続け流。AIでの分析はスピードが求められるようになる。コンピューティングの部分ではGPUを搭載することで処理速度を速めているが、コンピューティングにデータを送るストレージがボトルネックになっている。ストレージは膨大なデータをどのように処理するのか、どのように高速化を高めていくのか。
ピュア・ストレージ
データ削減技術は次世代でも活躍
志間義治
SE本部
本部長
データが増えるごとにストレージを追加していてはストレージの設置面積、そしてコストが膨らみ続けてしまう。それを解決するのが重複排除と圧縮の技術だ。ピュア・ストレージはこの二つの技術を磨き続けている。
同社は二つの技術の開発のため、それぞれに専任の技術者を配置している。志間義治・SE本部 本部長は「毎年、技術の見直しを行っている。ソフトウェアをアップデートするたび、容量効率が上がることが実感できるはず」と自信をもって語る。この技術を磨き続けるのには理由がある。この二つの技術はHDDやフラッシュだけではなく、その次に出てくるであろう次世代のストレージにも使えるからだ。
「フラッシュはどんどん進化し、高速になっていくだろうし、次世代のデバイスも今後登場するだろう。新しいデバイスはどうしても単価が高い。お客様に提供しやすくするため、重要になるのが重複排除と圧縮だ」と志間本部長は語る。
高性能な重複排除と圧縮技術は他社との大きな差異化ポイントになる。新しいデバイスが出た時コーティングを整えるだけですぐに実装ができる。
「5年後、10年後、どのようなテクノロジーが出てくるか、デバイスが出てくるか正直検討もつかない。だが、その時必ず必要になる技術要素は持っている。いざという時、そちらにシフトすることも検討している」と志間本部長はいう。
EMCジャパン
ストレージだけでなくデータのやり取りも加速
飯塚力哉
常務執行役員
システムズ エンジニアリング
統括本部長
ストレージの高速化に取り組んでいるのがEMCだ。IoTやセンサーからは一つひとつは小さいが、大量のデータが生成されている。この大量のデータをすばやく格納し、そしていかに速く分析に回すか、これがストレージの課題だ。
しかし、「ストレージは圧倒的に遅い」状況だと語るのは飯塚力哉・常務執行役員 システムズ エンジニアリング統括本部長だ。単純にアクセス速度の単位を比較しても、CPUのメモリはナノセカンド(1秒の10億分の1)に対し、HDDはミリセック(1秒の1000分の1)、フラッシュはマイクロセック(1秒の100万分の1)と、ストレージはとてもCPUの速さに追いつけていない。
「だが、ストレージの進化、高速化は加速していく。私たちもそこの開発に力を入れている。メモリとフラッシュの間をとりもつ技術も今後出てくるだろう」と飯塚統括本部長は予想する。
もう一つ、同社が取り組んでいるのが、I/O命令の高速化だ。「いまはGPUで演算処理を行い、データの入出力、I/O命令はCPUを中継して出されている。しかし、CPUはほかの作業もしているため、どうしてもI/O命令が遅くなってしまう」と飯塚統括本部長は説明する。そこで、CPUを中継せず、GPUからI/O命令を出せるよう、すでに開発部門が検討を始めているという。「ストレージだけではなく、こうしたデータのやり取りも見直せば、より高速化するはず」と飯塚統括本部長は話す。ストレージが進化する余地はまだ十分にある。