伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)
過去12年来で最高の業績を達成
伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)の昨年度(2018年3月期)の業績は、売上高をはじめすべての利益項目、受注残高が、過去12年来で最高に達するなど好調に推移した。一方、昨年度は3か年中期経営計画の最終年度。目標として掲げていた連結売上高5000億円に対して実績は4296億円で未達。営業利益も中計目標値400億円、同利益率8%に対して、実績は同326億円、同7.6%と目標には届かなかった。
今年度からスタートした21年3月期までの新しい中期経営計画では、純利益額と注力ビジネスの目標値などを掲げる。「売上高5000億円の目標は諦めていない」(菊地哲社長)としているが、今中計の経営指標には入れなかった。純利益額の目標値は、昨年度の235億円から約28%伸ばして300億円。注力ビジネスはクラウド・ITアウトソーシング関連で昨年度の486億円から約23%伸ばして600億円、グローバル関連で同386億円から約55%伸ばして600億円を目標値に掲げている。
通信キャリア向けのネットワーク基盤構築に強みを発揮してきたCTC。携帯電話向けの次世代無線通信の「5G」関連のビジネスは19年頃から本格化すると期待している。とはいえ、5Gが現行ビジネスの単純な延長線にあるとは限らない。「従来型のビジネスに新しいビジネスを追加していくイメージ」だと、菊地社長はみている。具体的には通信インフラ部分だけのビジネスにとどまらず、5Gではインフラの上に乗るサービスやアプリケーションのビジネスにも対応していく必要があると考えている。
ただし、今までのように数年かけてサービスやアプリケーションを開発するといったスピード感では世の中の変化についていけない。例えば、IoT関連のアプリケーション開発であれば、顧客のビジネスの成長に合わせてサービスを成長させていくことも重要だ。「売り上げや利益に結びつくサービスを素早く立ち上げるスピードが強く求められる。5Gでは、これまでとは違ったビジネスの伸び方をする」(菊地社長)と予想している。
SCSK
重点事業の車載OSで受注が本格化
昨年度(2018年3月期)、6期連続の増収増益を達成したSCSK。営業利益は前年度比2.6%増の346億円に達しており、20年3月期までの中期経営計画で掲げた営業利益500億円に向けてドライブをかけている。谷原徹社長は、「このまま成長を維持すれば400~450億円は射程圏内に入る」と手応えを感じつつある。だが、目標までの差異50~100億円については、M&Aなどの別の手を打つ必要があるとみている。
今の中期経営計画を始めるにあたり、SCSKは労働集約型や人月ベースの受託型のビジネスモデルからの転換を掲げた。その指標と位置づけているのが「サービス提供型ビジネス」と呼んでいるモデルだ。同社によれば、このモデルは「自社の知的財産やIT資産をベースにSCSKならではの高い付加価値サービスを提供する」ものだと定義づける。具体的には、流通業や製薬業など各業種に向けた自社開発の業務パッケージやサービスを想定している。
このサービス提供型ビジネスによる昨年度の売上高は、前年度比10%増の705億円に到達。中計最終年度の20年3月期には1000億円の大台に乗せることを目指している。
もうひとつ、SCSKが重点事業に位置づけているのが、欧州発の自動車向け車載OSの「AUTOSAR(オートザー)」事業だ。SCSKではAUTOSARに準拠した「QINeS BSW(クインズビーエスダブリュー)」の開発を推進。今年に入ってサンデン・オートモーティブコンポーネントが開発するカーエアコン用電動コンプレッサの次世代モデルに採用されたのに続いて、この5月には大手自動車部品メーカーのミツバが、自動車完成車メーカー向けにパワーバックドア製品の制御ECU(電子制御ユニット)としてQINeS BSWを採用したことを発表している。
QINeS BSW関連事業は、昨年度はまだ20億円程度の赤字事業だというが、今年に入って部品メーカーからの引き合いや採用が本格化。自動車の完成車の開発には時間がかかることもあり、22~23年にはQINeS BSWを採用した新車が世の中に出ると期待している。「今の中計の期間に大きな収益に結びつけるのは難しい」と同社では分析しているが、国内AUTOSAR市場が将来的には2000~3000億円規模の市場になるとみられていることから、引き続き重点事業として力を入れる。
日本ユニシス
四つの注力領域で
相乗効果を出す
日本ユニシスは、新しい3か年中期経営計画を発表した。2021年3月期の目標は連結売上高3200億円、営業利益率8%。昨年度までの前の中計でも当初は売上高3200億円を掲げたものの、事業構造の転換を優先したため2869億円にとどまった。営業利益率は期初目標5.3%に対して、5.7%と目標を達成している。
日本ユニシスの平岡昭良社長
新中計の目玉は、600億円の売上目標を掲げる「4つの注力領域」だ。FinTech関連の「ネオバンク」、流通・小売りのデジタル化を推進する「デジタルアクセラレーション」、公共領域の「スマートタウン」、IoT・AI技術を活用した生産革新「アセットガーディアン」の四つ。
平岡昭良社長は、「四つの注力領域は互いに隣接している」と指摘する。例えばFinTechや流通・小売りのデジタル化は、利便性の向上や新サービスによって暮らしやすい街づくり=スマートタウンにつながる。IoTによってスマートタウンから得られる情報をAIで分析し、企業がビジネスの変革につなげやすいよう支援するといったことを想定している。同分野の直近の売上高は270億円程度だが、これを600億円へと倍増させる。
国内SIerで初の2兆円企業が誕生
トップ集団は一段とグローバル化
NTTデータは昨年度(2018年3月期)、日本のSIerとして初めて連結売上高が2兆円を超えた。今年度から国際会計基準(IFRS)に移行しており、同基準で換算すると昨年度は2兆393億円(未監査)になる。今年度は2兆1000億円を見込んでいる。IFRS移行に伴う決算期の統一で、一部海外法人が12か月を超える決算になっていることから、実質的には1000億円近い上積みを目指すことになるという。
“4000億円クラブ”のトップを行く野村総合研究所(NRI)は、オーストラリアで大型M&Aを行ったことから海外ビジネスが大きく伸長。直近のオーストラリアでの売上高は、5億オーストラリアドル(約410億円)、従業員数約2000人にまで拡大した。グローバル全体では、昨年度(18年3月期)は約435億円だったのに対して、今年度は650億円まで伸ばす。この数字は、純粋に海外で売り上げたものであり、国内で受注した海外関連の売り上げもプラスすれば今年度は750億円ほどになる見込み。
伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)の今年度からの3か年中期経営計画では、海外並びに国内における海外関連の売上高を含めたグローバル関連売上高を、昨年度(18年3月期)の386億円から中計最終年度の21年3月期には600億円に伸ばす計画を立てる。
また、昨年度に念願の4000億円クラブへの仲間入りを果たしたTISは、21年3月期までの中期経営計画で連結売上高4300億円、営業利益率10%を目指す。昨年度(18年3月期)の売上高は4056億円であり、この3年で250億円近く上乗せしていく方針だ。TISは主にASEANの有力SIerを持分法適用会社にするなどして資本業務提携を推進。協業を加速させることでグローバル事業の拡大につなげていく。