Special Feature
ERPの「2025年問題」
2018/09/05 09:00
週刊BCN 2018年08月27日vol.1740掲載
日本マイクロソフトはAzure、Dynamics 365の両面作戦
それでも「Dynamicsは、毎年2倍成長できる」
「SAP on Azure」も積極的に推進
本部長
では、「2025年問題」を日本マイクロソフトとしてはどのようにみているのだろうか。斎藤広一・マーケティング&オペレーションズ部門Dynamicsビジネス本部プロダクトマーケティング部長は、「当社としては、SAPを使い続けたいというお客様には、S/4HANAをAzureでクラウド化していただくという選択肢も大歓迎。一方で、SAPをAzureにリフト&シフトしていくなかで、一部のお客様はS/4HANAには移行しないと言い始めている。TCOをこの機会に最適化したいといった課題をもったお客様にはDynamics 365を強く勧めていく」と話す。
S/4HANAをベンチマークに認定技術者を増やす
部長
まずは、旧Dynamics AXのパートナーの活性化に取り組む。トレーニングを充実させ、彼らのクラウドシフトを急速に進めている。旧Dynamics AXパートナーは約30社程度だが、「当面はパートナーの社数を増やすというよりも、Dynamics 365の認定技術者を増やしていく。具体的な人数は、S/4HANAをベンチマークにする」(斎藤部長)ほか、クラウドビジネスに強い新規パートナーの発掘も並行して進めていく。また、前頁で触れたDynamics 365 BCについても、PBCと連携して販路開拓やマーケティングに取り組み、Dynamics 365のエコシステム拡大に注力する方針だ。
日本オラクルはクラウドERP市場の先導役目指す
「2025年問題」特需には頼らないが好調続く
本社ERPも含めたクラウド化案件が出てきた
常務執行役員
SAP ERPの「2025年問題」については、「頭の片隅では意識しているし、SAPユーザーのお客様からS/4HANAではなくOracle ERP Cloudに移行したらどうなるのかという引き合いもいただいているのは事実。しかし、そのマーケットを狙い撃ちするつもりはない」(桐生常務執行役員)という。
避けられないSaaS化の流れ 先行して顧客基盤を固める
日本オラクルが重視しているのは、クラウドERP市場におけるシェアをまずは優先して高めていくことだ。桐生常務執行役員はその背景を次のように説明する。「基幹系も含めて業務アプリケーションがSaaS化していくのは避けられないと考えている。その流れに乗ろうとしているお客様を逃さず捕捉し、本格的に立ち上がろうとしているクラウドERPの市場で先行して顧客基盤を固めて、クラウドERP、SaaS型のERPならオラクルだろうと思っていただけるようなポジショニングをつくることが重要だ」。ERPの顧客開拓アプローチとしては、2025年問題でSAPから離れるユーザーを狙うというよりも、あくまでもクラウド、SaaSに軸足を移そうとしている顧客を重点的に攻めるのが基本で、現在のSAPユーザー2000社のなかには「当然その対象となるユーザーもいるだろう」(桐生常務執行役員)という程度の位置づけだ。
マイクロソフトと同様に、既存パートナーのスキルチェンジも促しながら、ERPのパートナーエコシステム再構築にも取り組んでいく。
「2025年問題と呼ばないで」
SAPにとってのERPビジネスのこれから
「最後のジャンプ台」ではあるが……
マネージャー
上硲優子・ソリューション統括本部デジタルアプリケーション1部マネージャーは、「当社としては2025年“問題”といわれるのは若干不本意だが(笑)、サポート期限が25年に迫っていることを前面に出したキャンペーンのようなものはやっていない。ただ、お客様に対して『25年までのスケジュールを考えると、今年が(一気にデジタルトランスフォーメーションの最前線に躍り出ることができる)最後のジャンプ台ですよ』という問いかけはしている。あくまでも、お客様のビジネスの向上に貢献できるかどうかということに主眼を置いてS/4HANAの提案を行っている」と淡々と話す。
なかなかS/4HANAのビジネス規模そのものが数字としては見えてこない状況だが、川中健・プラットフォーム事業本部ビジネス企画部シニアディレクターによれば、「既存ユーザーのS/4HANA移行ということでいえば、すでにキャズムは超えて、レイトマジョリティ層が移行プロジェクトを始めているようなフェーズになっている。S/4HANAのビジネスはいわば成熟期に入っている」という。
同社は7月、S/4HANAのグローバルでの導入社数が8900社に到達したと発表したが、「日本国内での導入社数も日本の市場規模にふさわしい数字にはなっている。移行の負荷がネックになってS/4HANAに移りたくないというような話はほとんど聞かないし、多くのお客様にその負荷をはるかに超えるメリットを感じていただいていると自負して
いる」と、川中シニアディレクターは手応えを語る。
2025年を過剰に意識せず地道にS/4HANAの価値を問う
シニアディレクター
識者の眼
市場に大きな変化が起こるかは疑問
ERPの価値にフォーカスした
新しい提案が必要
本好宏次
バイスプレジデント
競合ベンダーがビジネスチャンスとみる「2025年問題」についても、「SAPが新規で獲得しているS/4HANAユーザーの数を上回るほどのSAP離れが起きているかというと、そういうわけではない。ガートナージャパンの調査でも、SAP ERPからS/4HANAへの移行が“乗り換え”に近い負荷を伴うとしても、他社製品への乗り換えを決断するほどの要因になるかというと疑問で、少なくとも多数派にはならない」とコメント。ERP市場の勢力図に大きな変化をもたらす可能性は低いとの見方を示した。
一方で、SAP ERPからS/4HANAの移行にしても、他社への乗り換えにしても、時間とコストの負荷が大きいことから、ユーザーの経営層からは相応の付加価値が求められる。本好バイスプレジデントは、「例えば今後、働き方改革への寄与を大義名分としてRFPに盛り込む動きが顕在化するのではないかと考えている」と話す。ガートナージャパンは、そうしたトレンドがERPに与える影響や、ERPプロジェクトに責任をもつCIOなどが取り組むべきことなどをレポートにまとめている。ITベンダー側がユーザーにERPソリューションを提案する場合も、2025年問題をフックにした単なる保守期限切れへの対応ではなく、ERPの“価値”にフォーカスした新しい提案が求められているということなのだろう。
「SAP ERP」のユーザーにとって、基幹システムの刷新は待ったなしの状況になっている。SAPは標準サポートの提供期限を2025年までとしているからだ。新製品の「SAP S/4HANA」に移行するのか、あるいはSAP製品以外の選択肢を検討することになるのか。このERPの「2025年問題」が市場に与える影響を探る。(取材・文/本多和幸)
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