従量課金サービスの最新版
Dell EMC、日本HPEに続き、各社がITインフラの従量課金サービスをリリースした。リソースの増設が簡単なHCI(ハイパーコンバージド・インフラストラクチャー)やフラッシュストレージなどが、このサービスと相性が良いようだ。
富士通
HCIを使ったプログラムを10月から
HCIの増設のしやすさを生かす
富士通は、HCIをベースにした従量課金プログラム「PRIMEFLEX HCI」を10月から提供する予定だ。運用しながら改善を行い、来年春に本格的に展開する計画を立てている。
最小構成は、稼働サーバー3台と予備サーバー1台から。性能制限はなく、メモリー、ストレージ、CPUをフルに利用できる。リソースが不足すれば予備サーバーの電源を入れ、また新たな予備サーバーを用意する。HCIの増設のしやすさを生かしたプログラムだ。なお、電源を入れた段階で課金対象となる。
(左から)
泉田直樹
データセンタプラットフォーム事業本部
エグゼクティブディレクタ
尾藤篤
プラットフォームビジネス本部
システムプラットフォームビジネス統括部
PRIMERGYビジネス推進部マネージャー
このサービスモデルの特徴は、クラウドとの連携を意識したハイブリッド構成であることだ。泉田直樹・データセンタプラットフォーム事業本部エグゼクティブディレクタは、「まずはオンプレミスでの導入というケースが一般的だが、こうしたサービスの導入を検討している顧客は、クラウドファーストを意識している。いずれオンプレミスとクラウドを連携させたいと考えている」と話し、同社のクラウドサービスと組み合わせて提案を行うという。来春にはマイクロソフトの「Hyper-V」や「Azure Stack」に対応する予定だ。
中長期的な展開として検討しているのが、継続リプレースだ。ハードウェアなので定期的なリプレースが必要になる。減設するHCIのデータをSDSの機能を使い、稼働しているHCIに移行することで、システムを止めずにリプレースができるという。
課題は販売パートナー連携
来春の本格展開に向けて検討しているのが、販売パートナーとの連携だ。尾藤篤・プラットフォームビジネス本部システムプラットフォームビジネス統括部PRIMERGYビジネス推進部マネージャーは「販売パートナーとの連携モデルの創出はこれから。インフラは富士通がサービスとして提供するので、SIerにその上で動くソフトウェアなどをバンドルしてもらいたい。顧客のニーズをみながらSIerと相談して進めていきたい」と話す。
日立製作所
ストレージの従量課金モデル
大野哲史
ITプロダクツ統括本部
プロダクツサービス&ソリューション本部
クラウド&プロダクツサービス部
部長
日立製作所は5月からフラッシュストレージを対象にした従量課金サービス「All Flash Array On Demand Service(AFAODS)」を中小企業、中小規模事業向けに提供している。特徴は容量だけではなく、I/O処理性能を制御できる専用のオールフラッシュアレイを採用することで、I/O処理を料金の対象としている点にある。
ストレージは、容量に余裕のある導入初期に十分な性能がでる。大野哲史・ITプロダクツ統括本部プロダクツサービス&ソリューション本部クラウド&プロダクツサービス部部長は、「導入初期はそれほど性能が要らないケースもある。AFAODSはI/O処理性能を抑えることで料金を下げることができる。必要な時に必要な容量と性能を提供することで過剰投資リスク、導入コストを低減し、投資コストを平準化できる」と話す。
販売代理店に対しては、代金を月額で支払うほか、ソフトウェアのセット販売や問い合わせの一次窓口業務の委託などで連携していくという。
大野部長は今後の見通しについて、「年率10~15%の規模で伸びると予想している。ただ、従来の売り切りモデルから完全に置き換わることはないだろう。2021年には、販売が7割、従量課金サービスが3割くらいになるのでは」と語った。
レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ
パートナー連携を盛り込んだプラン
販売店連携を前提にしたサービス
橘一徳
執行役員
パートナービジネス管掌
製品・パートナー営業統括本部
統括本部長
レノボ・エンタープライズ・ソリューションズは、リース会社と連携した従量課金サービス「Lenovo Pay per Useプログラム」を5月から提供している。リース会社を間に挟むことで、販売店連携を実現したサービスになる。
橘一徳・執行役員パートナービジネス管掌製品・パートナー営業統括本部統括本部長は、「ファイナンシャル子会社を持っていないので、単独では従量課金サービスが提供できない。そのため、長年付き合いのあるリース会社と一緒にサービスを開発した」と話す。
販売代理店が同社から購入したレノボのHCI「ThinkAgile HX」をリース会社が買い取り、顧客に月額利用サービスとして提供する。ITインフラの保守サポートは販売店が提供する。販売店はリース会社に売り切ることで、これまで通り一括の売り上げを得ることができ、また保守などのサービスも提供できる。販売代理店は、ビジネススタイルをほとんど変えることなく従量課金サービスを扱えるのが大きな特徴だ。
顧客満足度向上につなげる
同社は、ニュータニックスとの提携のもと、ニュータニックスのソフトウェアとライセンスをバンドルした「ThinkAgile HXシリーズ」の提案に注力している。案件は順調に伸びており、その傾向として橘執行役員は「6割以上が3~4台のスモールスタートで導入している」と話す。この顧客の増設案件が増えているという。「一つは使い勝手が良かったこと、そして増設がしやすいことが増設案件の増加につながっている」と橘執行役員は手ごたえを語る。このHCIの増設のしやすさが、従量課金サービスと非常に相性が良いようだ。
従量課金サービスと、簡単に増設ができるHCIは非常に親和性が高いようだ。橘執行役員は「システムを止めることなく迅速に増減設ができ、また、お客様に新たな支払い方法を提案できる。これらはお客様の満足度向上につながり、ひいてはレノボのハードウェアを選択してもらえるようになる」と話す。
取り組むメーカー、販売代理店が増えている従量課金サービス。「所有から利用へ、こうしたお客様の要望は今後強くなるだろう」と橘執行役員はITインフラの今後のありようについて語った。
ファイナンス会社との連携
課金サービスを提供するSIerが増えるか
メーカーが提供していることが多い従量課金サービスだが、ファイナンス会社と連携することで、販売代理店、SIerが独自の月額サービスプランを提供するケースが今後増えそうだ。
NECキャピタルソリューションは、リース、ファイナンスだけではなく、最近はメーカーやSIerとの連携を強化。IT機器の月額サービスプログラムを提供している。
内藤保二・ICTアセットサービス営業本部長 兼ICTサービスオペレーション部長は「販売手法の一つとしてファイナンスプログラムはさらに増える。お客様に提案する場では、製品の知識だけではなくファイナンスプログラムの知識も必要になる。ここを当社が担当する」と話し、販売代理店とともに顧客の提案活動を行う準備があることを強調した。
同社はNECの系列企業だが、NEC製品以外も扱っている。「メーカーやSIerと組んでIT機器の月額サービス化を提供した実績がある。月額サービスの提供を検討しているならぜひお手伝いしたい」と内藤部長は呼び掛けた。