ITベンダー各社トップが予測する、2019年の法人向けIT市場の動向とは――。『週刊BCN』編集部では毎年、新年の恒例企画として、SIer、ディストリビューター、基幹業務ソフトベンダーなどのITベンダートップにインタビューを実施、市場の動向や自社ビジネスに関する共通質問を投げかけて調査を行っている。今回は計61社から回答が集まった。これを基に、IT市場の現状と今後を展望した。(構成/前田幸慧)
回答いただいたITベンダー
アイティフォー、アイネット、内田洋行、SRAホールディングス、エス・アンド・アイ、SCSK、SB C&S、NECソリューションイノベータ、NECネクサソリューションズ、NECネッツエスアイ、NECフィールディング、NSD、NTTデータ、NTTテクノクロス、エプソン販売、OSK、オービックビジネスコンサルタント、応研、OKIデータ、関電システムソリューションズ、京セラコミュニケーションシステム、クロスキャット、コア、CAC Holdings、JBCCホールディングス、シネックスジャパン、新日鉄住金ソリューションズ、ソフトクリエイトホールディングス、Dynabook、ダイワボウ情報システム、TIS、TKC、電算システム、電通国際情報サービス、東芝ITサービス、東芝デジタルソリューションズ、日興通信、日商エレクトロニクス、ニッセイコム、日本事務器、日本情報通信、日本電子計算、ネットワールド、ネットワンパートナーズ、野村総合研究所、PE-BANK、ピー・シー・エー、日立システムズ、富士ゼロックス、富士ソフト、富士通エフサス、フューチャーアーキテクト、ブラザー販売、豆蔵ホールディングス、三井情報、ミツイワ、ミロク情報サービス、弥生、ユーザックシステム、理経、菱洋エレクトロ(計61社、五十音順)
Q1 2019年の法人向けIT市場の成長率は?
「97%」がプラス成長を予測
19年はビジネスチャンスが盛りだくさん
日本経済の好景気が続く中、近年好調に推移しているIT市場の動向についても、回答が得られた全てのベンダーが、19年もプラス成長が続くとみているようだ。内訳は、「0~4%」が66%、「5~9%」が23%、「10%以上」が8%、「わからない・回答なし」が3%だった。
19年は改元と消費増税というトピックを控え、IT需要の高まりが予想される。さらに、「Windows 7」や「Windows Server 2008」のサポートが終了(EOS=End of Support)する20年1月も迫ってきており、これらのマイグレーション需要が本格化する見込み。これを「19年のビジネスチャンスに」と期待する声が複数のベンダーから聞かれた。
老朽化した既存システムのクラウドへの移行や、働き方改革、最新技術を活用したデジタル化の推進などを目的とするユーザー企業のIT投資も活発で、こうした動向は今年も続くとみられる。中でも「デジタルトランスフォーメーション(DX)」の言葉とともに顧客のデジタル化を支援すると答える企業が特に多かった。また、時間外労働の上限規制や年次有給休暇取得の義務化などが含まれる「働き方改革関連法」が4月から順次施行されることを受けて、働き方改革に対する機運が高まると期待するベンダーもあった。
Q2 2019年の自社の成長の見通しは?
2桁成長を目指す企業が「23%」
一方で「人材不足」が課題に
市場全体の伸びを多くの企業が予想するだけあって、自社業績の成長率についてもプラス成長とみる企業がほとんどだ。「0~4%」が43%で、市場の伸びと同程度の堅実な数字を予想する企業が最も多く、次いで「5~9%」の成長を見込む企業が31%だった。
注目は、「10%以上」と答えた企業の割合は昨年の調査と同数の23%で、2割超をキープしていること。継続して2桁成長への意欲が感じられ、このことからも、19年もIT市場が好調に推移することがうかがえる。一方で、「▲5~1%」のマイナス成長を予想する企業、「わからない・回答なし」としたベンダーはそれぞれ2%だった。
ITベンダーに対する需要が高まっている中、人材不足の問題が表面化してきている。「システム開発の案件は多いが、エンジニア不足で対応できていない」と話す企業をはじめ、多くの企業が人材不足を課題に挙げた。
今後、労働人口の減少が進み、あらゆる業界で人材不足が加速すると予想される。そのような状況の中で多数の案件を手掛けていくためには、ITベンダー自身の働き方改革もますます求められていきそうだ。
Q3 ユーザー企業のIT投資意欲は?
「製造業」「流通・サービス業」からの投資が旺盛
各産業でIT需要は高い
ユーザー企業のIT投資動向について、18年の振り返りと19年の予想を尋ねた。
「18年、特にIT投資が活発と感じた産業」に関しては、多くの企業のビジネスターゲットとなっている製造業が39%と最多だった。IoTの導入による生産現場の改善や予知保全などの需要が高まっており、そうしたニーズからの引き合いが数値に反映されたものとうかがえる。19年もIoTに対するニーズは多く市場も拡大すると予測され、引き続きビジネスチャンスは大きい産業だといえる。
流通・サービス業は、「19年に投資が活発になりそうな産業」で39%と最も多かった。訪日外国人客のインバウンド需要への対応やオムニチャネル化、キャッシュレス決済の動きがユーザー企業のIT投資を後押ししている。特に東京五輪が開催される20年には訪日外国人客数の大幅増が予想され、それに向けたネットワークや決済関連の設備投資が活発化してきていると推測される。
その他、18年・19年ともに10%となった金融・保険業では、FinTechのトレンドからIT活用の動きが継続して進んでいる。また、公共・教育機関、医療・介護、建設業については18年・19年はともに1桁台となった。なお、この質問は単一回答としたが「複数ある」と話すベンダーも多く、値が小さいからとはいえ必ずしも投資が活発ではないとはいえないことを念押ししておく。
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