Special Feature
レノボ傘下の新生FCCL PC一辺倒の事業から脱却へ
2019/05/08 09:00
週刊BCN 2019年04月22日vol.1773掲載
新規事業創出プロジェクトで
PCの枠を越えた製品を提供
現在、FCCLは「クライアントコンピューティング」という社名の通り、PC(パーソナルコンピューター)にとどまらないコンピューティングビジネスを展開しようとしている。その象徴的な取り組みが、新規事業創出プロジェクト「Computing for Tomorrow(CFT)」だ。
CFTは、これまでのPC事業の枠にとどまらず、デザインシンキングの手法を用いながら、顧客視点で新たな製品やサービスを創出するプロジェクト。参加する社員は半年間、現業を離れてプロジェクトに専任で取り組むことになる。成果は半年ごとに評価され、開発の継続や中止を決定するという仕組みだ。
これまでに約10件のプロジェクトが推進されており、具体的な成果として、教育向けエッジコンピューター「MIB(Men in Box)」や、電子ペーパーを利用したペーパーレスミーティングシステムが製品化されている。このシステムで採用した電子ペーパーは、「QUADERNO」として製品化。目標に対しては2倍以上の販売台数になっているという。
電子ペーパー
「QUADERNO」
CFTは18年4月から、事業化を重点に置いた取り組みへと進化。管轄部門を開発部門からプロダクトマネジメント本部へと移管し、名称も「CFT 2020」へと変えて、「20年には売り上げ、収益に貢献する事業に育てることを目指す」(竹田副社長)という。
とはいえ、想定しているそれぞれの規模は大きくはない。むしろ、10億円×10プロジェクトという規模感のものだ。そこを起点に時間をかけて育てていくことで、事業の幅を広げることになる。これまでのPCメーカーにはない取り組みの一つだといえる。
エッジAIプラットフォーム
「Infini-Brain」
一方で、新たな取り組みとしては、エッジAIプラットフォーム「Infini-Brain」がある。CADなどで利用される一般的なワークステーションの10台分という性能を持つエッジコンピューターで、複数の異なるAIを同時に稼働させ、低電力で実行できるのが特徴だ。六つの高性能CPUを搭載するとともに、GPUやFPGAのほか、大量のメモリーを搭載。これにより、AIによるリアルタイムでの分析や、高性能な画像処理が可能になる。
FCCLは、Infini-Brainをプラットフォームに位置付けたビジネスの展開を模索している。グラフィックス処理性能の高さや、高性能CPUを搭載しているメリットを生かしながら、このプラットフォーム上で、パートナーとともにソリューションを提供していくビジネスモデルを確立する考えだ。
新生FCCLでは、こうしたPCの枠を越えた取り組みを積極化させており、齋藤社長は「エッジコンピューターによって、PCが実現してきた分散コンピューティングの世界が進化する。将来、PCは無くなるとの指摘があるが、MIBやInfini-Brainは、形や姿を変えながらも、PCにはしっかりとした役割がある、ということを証明するものになる」と強調する。
「人に寄り添う」製品で
PC市場の変化を乗り切る
FCCLが、CFT 2020として新たに取り組む事業化を急いだり、Infini-Brainによってソリューション型ビジネスの創出に乗り出したりする背景には、20年以降に予測されるPC市場の変化が見逃せない。
19年度の国内PC市場は、10月に予定されている消費増税前の駆け込み需要や、20年1月のWindows 7のサポート終了に伴う買い替え需要が見込まれ、出荷台数は大幅に増加するとみられる。だが、14年4月のWindows XPのサポート終了時に過去最高の出荷台数を記録した一方で、その後のPC市場は大きく低迷。15年度以降、PC出荷台数は3分の2程度にまで縮小した経緯がある。これと同じことが起こる可能性も否定できない。PCに頼らない事業構造の確立が早急の課題というわけだ。
このことはFCCLに限らず、PCメーカー各社に共通の課題である。FCCLは、CFT 2020やInfini-Brainを通じて新たな事業の確立を模索している段階にあるが、PC事業には自信を深めている。「日本で開発、生産、販売、サポートまでの一貫体制を持つFCCLだからこそ投入できるPCを、継続的に作り続けることには変わりがない。この1年で、それを証明できた」と齋藤社長は語る。
レノボは、大量生産により、コスト競争力を持った製品を開発、生産するところに特徴を持つ。これに対して、FCCLはその対極にあるともいえる、現場の声を聞いてカスタマイズするモノづくり、最先端技術を活用して世界一や世界初を実現する尖ったモノづくりで成果を上げてきた。その形が、この1年間で確立したということだ。
「エンジニアがお客様のもとに出向いて、要望を聞いて製品化するという手法は、世界的に見ても珍しい取り組みであり、これをFCCLの特徴として、レノボグループの中で理解してもらっている」とする。短距離走型のレノボに対して、FCCLのビシネススタイルは、マラソン型といえる。
この仕組みによって実現する「人に寄り添う」製品が投入できるわけだが、齋藤社長は「これができるのは、FCCLが最後の砦であるというくらいの意識で取り組む」とも語る。
だが、その一方で、CFT 2020で取り組んでいるような、PCとは別の事業軸となる「コンピューティング」領域においては、事業としての確立には時間がかかっており、ここでの成果は上がっていると言い難い。
さらに、齋藤社長は、「レノボが持つワールドワイドの視点を持つことや、実行スピードの速さを、もっと取り入れていく必要がある」とする。
独立性を保ちながら、レノボグループの良さを取り入れることができるか、そして、20年以降の成長事業を新たに立ち上げることができるかが重要になる。東京・田町に新発想の
FCCLは19年2月25日、東京・田町に「東京オフィス」を開設した。
東京・浜松町の世界貿易センタービルに入居していたコンシューマ事業本部コンシューマ営業統括部、同ビジネス管理統括部、プロダクトマネジメント本部新規チャネル開発室、コーポレート本部広報・プロモーション室の四つの組織を新オフィスに移転。齋藤社長は「山手線内という立地にあり、都内でパートナーやサプライヤーを迎えることができる環境を整えた」とする一方、「働き方改革の切り口からビジネスをしているFCCLが、自らそれを実践する場として、さまざまな工夫を取り入れたオフィス」と位置付ける。
東京オフィスは、レノボグループ傘下になって初めての新拠点でもある。オフィスのデザインは、FMVシリーズのデザインを手掛ける同社チーフデザインプロデューサーの藤田博之氏が担当。「東京オフィスのコンセプトは『We innovate the Future』。これは、FCCLの社員が一丸となって、未来を変えていくという意思を示した」(藤田氏)。
大きな変化は、これまでの富士通グループの社員が与えられた場所で働くことを前提としていた発想を変え、社員自らが働きやすいオフィスを考えたことにある。東京オフィスで働くことになる約20人の社員が参加して、3回に渡るワークショップを開催し、富士通デザインのプロダクトデザイナーのほか、空間デザインを行うデザイナーや一級建築士、インテリアコーディネーターなどのサポートを得ながら議論を重ねていった。総務部門がつくるオフィスではなく、社員自らが働きたい環境を考え、それを具現化したオフィスである。
議論の結果、部門を越えたコミュニケーションができること、情報を可視化できること、集中とリラックスができることなどが盛り込まれ、藤田氏は、これらの意見を取りまとめて、「好きな場所で働く―Good View Office」というデザインコンセプトを打ち出した。
「Good View Officeという言葉には、人と人が積極的にコミュニケーションをする景色や、社員が高いモチベーションを持って仕事ができる環境、スピード感を持って効率的に仕事が行える場所、そして、ビジネスを展望できるオフィスであることを目指した」(藤田氏)。
社員の働きやすさを重視した執務フロア
オフィスの中央部分に
コミュニケーションエリア
オフィス内は本来、セキュリティーエリアとなっている。そのため社員以外は入ることができないが、今回は特別に中を見学させてもらった。
まず目についたのは、フリーアドレスで働く社員の姿。フリーアドレス制の採用は、同社としては初の試みだ。
とはいえ、初の取り組みであるだけに、管理部門であるコンシューマ事業本部ビジネス管理統括部は固定席とし、ほかの部門もある程度、席のエリアが決まっている。営業部門は白い机、コーポレート本部広報・プロモーション室は木目の机とし、営業部門の机には、営業担当者がオフィスに帰ってきてから、ノートPCをつないで大画面ディスプレイで作業したり、すぐにスマートフォンを充電したりすることが行いやすい環境を整えている。
その上で、部門を越えたコミュニケーションや、すぐに会議や打ち合わせができるように配慮した。
オフィスの中央部分には、コミュニケーションができるエリアを用意。ファミレス型のソファーを用いたエリアや、窓際の眺めのいい場所などにもミーティングエリアを配置。移動可能なホワイトボードを用意するとともに、会議や打ち合わせができるようなオープンスペースを随所に用意した。これらのエリアは予約なしで利用できるようにしている。
社員エリアでは、扉が閉じられた形で会議ができるミーティングルームは、わずか一つだけ。ゲストエリアには、40人以上が入ることができる大会議室と、10人強が着席できる中会議室、そして、小会議室を二つ用意されている。従来の浜松町のオフィスでは、11の会議室が用意されていたのに比べると半分以下だ。それでも、会議室を減らしたのは、会議を中心にした働き方からの脱却を目指したからである。
「会議室を1時間予約すると、議論が終わっているのに、1時間という時間を最後まで利用して会議をしようとの流れが生まれがちになる。会議室を減らして、予約が不要で、さっと集まって会議ができる環境を作ったことで、こうした効率性の悪さが解決できると考えた」(藤田氏)。
一方で、集中して仕事をするのに適した集中席や仮眠ができる休憩ルーム、医師などによる指導を行うためのヘルスコンサルテーションルームも用意している。
FCCLでは、JR南武線の武蔵中原駅前にある富士通川崎工場内の開発部門についても、19年10月をめどに、同じ地区の新オフィスへ移転する予定。また、東京・浜松町の世界貿易センタービルにいる残りの部門は、新たな武蔵中原のオフィスと田町の東京オフィスへと移転することになる。
藤田氏は、武蔵中原の新オフィスのデザインやレイアウトについても担当しており、東京オフィス開設のノウハウを活用する一方で、東京オフィスと同様に、そこで働くことになる社員の意見を反映するためのワークショップを開催しているところだ。
「ビジネスの成長につなげるオフィスにしたい」と語る齋藤社長。新たなオフィスから、どんな製品が生まれ、どんな戦略が打ち出されるのか注目したい。
PCの枠を越えた製品を提供
現在、FCCLは「クライアントコンピューティング」という社名の通り、PC(パーソナルコンピューター)にとどまらないコンピューティングビジネスを展開しようとしている。その象徴的な取り組みが、新規事業創出プロジェクト「Computing for Tomorrow(CFT)」だ。
CFTは、これまでのPC事業の枠にとどまらず、デザインシンキングの手法を用いながら、顧客視点で新たな製品やサービスを創出するプロジェクト。参加する社員は半年間、現業を離れてプロジェクトに専任で取り組むことになる。成果は半年ごとに評価され、開発の継続や中止を決定するという仕組みだ。
これまでに約10件のプロジェクトが推進されており、具体的な成果として、教育向けエッジコンピューター「MIB(Men in Box)」や、電子ペーパーを利用したペーパーレスミーティングシステムが製品化されている。このシステムで採用した電子ペーパーは、「QUADERNO」として製品化。目標に対しては2倍以上の販売台数になっているという。
「QUADERNO」
CFTは18年4月から、事業化を重点に置いた取り組みへと進化。管轄部門を開発部門からプロダクトマネジメント本部へと移管し、名称も「CFT 2020」へと変えて、「20年には売り上げ、収益に貢献する事業に育てることを目指す」(竹田副社長)という。
とはいえ、想定しているそれぞれの規模は大きくはない。むしろ、10億円×10プロジェクトという規模感のものだ。そこを起点に時間をかけて育てていくことで、事業の幅を広げることになる。これまでのPCメーカーにはない取り組みの一つだといえる。
「Infini-Brain」
一方で、新たな取り組みとしては、エッジAIプラットフォーム「Infini-Brain」がある。CADなどで利用される一般的なワークステーションの10台分という性能を持つエッジコンピューターで、複数の異なるAIを同時に稼働させ、低電力で実行できるのが特徴だ。六つの高性能CPUを搭載するとともに、GPUやFPGAのほか、大量のメモリーを搭載。これにより、AIによるリアルタイムでの分析や、高性能な画像処理が可能になる。
FCCLは、Infini-Brainをプラットフォームに位置付けたビジネスの展開を模索している。グラフィックス処理性能の高さや、高性能CPUを搭載しているメリットを生かしながら、このプラットフォーム上で、パートナーとともにソリューションを提供していくビジネスモデルを確立する考えだ。
新生FCCLでは、こうしたPCの枠を越えた取り組みを積極化させており、齋藤社長は「エッジコンピューターによって、PCが実現してきた分散コンピューティングの世界が進化する。将来、PCは無くなるとの指摘があるが、MIBやInfini-Brainは、形や姿を変えながらも、PCにはしっかりとした役割がある、ということを証明するものになる」と強調する。
「人に寄り添う」製品で
PC市場の変化を乗り切る
FCCLが、CFT 2020として新たに取り組む事業化を急いだり、Infini-Brainによってソリューション型ビジネスの創出に乗り出したりする背景には、20年以降に予測されるPC市場の変化が見逃せない。
19年度の国内PC市場は、10月に予定されている消費増税前の駆け込み需要や、20年1月のWindows 7のサポート終了に伴う買い替え需要が見込まれ、出荷台数は大幅に増加するとみられる。だが、14年4月のWindows XPのサポート終了時に過去最高の出荷台数を記録した一方で、その後のPC市場は大きく低迷。15年度以降、PC出荷台数は3分の2程度にまで縮小した経緯がある。これと同じことが起こる可能性も否定できない。PCに頼らない事業構造の確立が早急の課題というわけだ。
このことはFCCLに限らず、PCメーカー各社に共通の課題である。FCCLは、CFT 2020やInfini-Brainを通じて新たな事業の確立を模索している段階にあるが、PC事業には自信を深めている。「日本で開発、生産、販売、サポートまでの一貫体制を持つFCCLだからこそ投入できるPCを、継続的に作り続けることには変わりがない。この1年で、それを証明できた」と齋藤社長は語る。
レノボは、大量生産により、コスト競争力を持った製品を開発、生産するところに特徴を持つ。これに対して、FCCLはその対極にあるともいえる、現場の声を聞いてカスタマイズするモノづくり、最先端技術を活用して世界一や世界初を実現する尖ったモノづくりで成果を上げてきた。その形が、この1年間で確立したということだ。
「エンジニアがお客様のもとに出向いて、要望を聞いて製品化するという手法は、世界的に見ても珍しい取り組みであり、これをFCCLの特徴として、レノボグループの中で理解してもらっている」とする。短距離走型のレノボに対して、FCCLのビシネススタイルは、マラソン型といえる。
この仕組みによって実現する「人に寄り添う」製品が投入できるわけだが、齋藤社長は「これができるのは、FCCLが最後の砦であるというくらいの意識で取り組む」とも語る。
だが、その一方で、CFT 2020で取り組んでいるような、PCとは別の事業軸となる「コンピューティング」領域においては、事業としての確立には時間がかかっており、ここでの成果は上がっていると言い難い。
さらに、齋藤社長は、「レノボが持つワールドワイドの視点を持つことや、実行スピードの速さを、もっと取り入れていく必要がある」とする。
独立性を保ちながら、レノボグループの良さを取り入れることができるか、そして、20年以降の成長事業を新たに立ち上げることができるかが重要になる。
東京・田町に新発想の
「東京オフィス」を開設
FCCLの社員が働きやすい環境を提案
FCCLは19年2月25日、東京・田町に「東京オフィス」を開設した。東京・浜松町の世界貿易センタービルに入居していたコンシューマ事業本部コンシューマ営業統括部、同ビジネス管理統括部、プロダクトマネジメント本部新規チャネル開発室、コーポレート本部広報・プロモーション室の四つの組織を新オフィスに移転。齋藤社長は「山手線内という立地にあり、都内でパートナーやサプライヤーを迎えることができる環境を整えた」とする一方、「働き方改革の切り口からビジネスをしているFCCLが、自らそれを実践する場として、さまざまな工夫を取り入れたオフィス」と位置付ける。
東京オフィスは、レノボグループ傘下になって初めての新拠点でもある。オフィスのデザインは、FMVシリーズのデザインを手掛ける同社チーフデザインプロデューサーの藤田博之氏が担当。「東京オフィスのコンセプトは『We innovate the Future』。これは、FCCLの社員が一丸となって、未来を変えていくという意思を示した」(藤田氏)。
大きな変化は、これまでの富士通グループの社員が与えられた場所で働くことを前提としていた発想を変え、社員自らが働きやすいオフィスを考えたことにある。東京オフィスで働くことになる約20人の社員が参加して、3回に渡るワークショップを開催し、富士通デザインのプロダクトデザイナーのほか、空間デザインを行うデザイナーや一級建築士、インテリアコーディネーターなどのサポートを得ながら議論を重ねていった。総務部門がつくるオフィスではなく、社員自らが働きたい環境を考え、それを具現化したオフィスである。
議論の結果、部門を越えたコミュニケーションができること、情報を可視化できること、集中とリラックスができることなどが盛り込まれ、藤田氏は、これらの意見を取りまとめて、「好きな場所で働く―Good View Office」というデザインコンセプトを打ち出した。
「Good View Officeという言葉には、人と人が積極的にコミュニケーションをする景色や、社員が高いモチベーションを持って仕事ができる環境、スピード感を持って効率的に仕事が行える場所、そして、ビジネスを展望できるオフィスであることを目指した」(藤田氏)。
オフィスの中央部分に
コミュニケーションエリア
オフィス内は本来、セキュリティーエリアとなっている。そのため社員以外は入ることができないが、今回は特別に中を見学させてもらった。
まず目についたのは、フリーアドレスで働く社員の姿。フリーアドレス制の採用は、同社としては初の試みだ。
とはいえ、初の取り組みであるだけに、管理部門であるコンシューマ事業本部ビジネス管理統括部は固定席とし、ほかの部門もある程度、席のエリアが決まっている。営業部門は白い机、コーポレート本部広報・プロモーション室は木目の机とし、営業部門の机には、営業担当者がオフィスに帰ってきてから、ノートPCをつないで大画面ディスプレイで作業したり、すぐにスマートフォンを充電したりすることが行いやすい環境を整えている。
その上で、部門を越えたコミュニケーションや、すぐに会議や打ち合わせができるように配慮した。
オフィスの中央部分には、コミュニケーションができるエリアを用意。ファミレス型のソファーを用いたエリアや、窓際の眺めのいい場所などにもミーティングエリアを配置。移動可能なホワイトボードを用意するとともに、会議や打ち合わせができるようなオープンスペースを随所に用意した。これらのエリアは予約なしで利用できるようにしている。
社員エリアでは、扉が閉じられた形で会議ができるミーティングルームは、わずか一つだけ。ゲストエリアには、40人以上が入ることができる大会議室と、10人強が着席できる中会議室、そして、小会議室を二つ用意されている。従来の浜松町のオフィスでは、11の会議室が用意されていたのに比べると半分以下だ。それでも、会議室を減らしたのは、会議を中心にした働き方からの脱却を目指したからである。
「会議室を1時間予約すると、議論が終わっているのに、1時間という時間を最後まで利用して会議をしようとの流れが生まれがちになる。会議室を減らして、予約が不要で、さっと集まって会議ができる環境を作ったことで、こうした効率性の悪さが解決できると考えた」(藤田氏)。
一方で、集中して仕事をするのに適した集中席や仮眠ができる休憩ルーム、医師などによる指導を行うためのヘルスコンサルテーションルームも用意している。
FCCLでは、JR南武線の武蔵中原駅前にある富士通川崎工場内の開発部門についても、19年10月をめどに、同じ地区の新オフィスへ移転する予定。また、東京・浜松町の世界貿易センタービルにいる残りの部門は、新たな武蔵中原のオフィスと田町の東京オフィスへと移転することになる。
藤田氏は、武蔵中原の新オフィスのデザインやレイアウトについても担当しており、東京オフィス開設のノウハウを活用する一方で、東京オフィスと同様に、そこで働くことになる社員の意見を反映するためのワークショップを開催しているところだ。
「ビジネスの成長につなげるオフィスにしたい」と語る齋藤社長。新たなオフィスから、どんな製品が生まれ、どんな戦略が打ち出されるのか注目したい。
富士通クライアントコンピューティング(FCCL)がレノボグループの企業として再スタートを切ってから、まもなく1年が経過する。その間、「FUJITSU」ブランドのPCビジネスを推進する一方、PCの枠にとどまらない新たなコンピューティングデバイスの開発にも着手した。この1年の動きから見えてきた、FCCLの生きる道とは――。(取材・文/大河原克行)
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