2020年1月の「Windows 7」サポート終了(EOS)まであと約5カ月。大手企業や官公庁・自治体などでは移行が順調に進む一方、中小企業や地方では依然遅れが見られる。さらに、インテル製CPUの供給不足が顕在化し、これが市場の勢力図にも影響を与えている。Windows 7のEOSを取り巻くPC市場の動向を追った。(取材・文/大河原克行)
迫るWindows 7のサポート終了
「Windows 10の利用率90%」目指すマイクロソフト
20年1月14日にWindows 7のサポートが終了する。マイクロソフトでは、Windows 10から「Windows as a Service(WaaS)」と呼ぶ仕組みを採用しており、年2回の大規模なアップデートを通じて最新の機能やセキュリティ環境を提供することから、これまでのように一定期間を経過すると新たなOSに完全に入れ替えるといった作業が不要になり、都度アップデートを行うことで、Windows 10を最新の状態で使い続けることができる。そのため、今回のWindows 7のEOSが事実上、Windowsとしては最後のEOSということになる。
Windows 7のサポートが終了することで、日本マイクロソフトからWindows 7ユーザーに提供されていたセキュリティ更新プログラムや仕様変更、新機能の追加、サポート窓口での対応が終了することになる。特に、セキュリティ更新プログラムが提供されなくなることは、Windows 7を利用しているユーザー企業にとっても大きな問題を引き起こすことになりかねない。そのままの状態で使い続けると、新たな脅威に対する脆弱性が増すことになり、サイバー攻撃の標的にされやすくなる可能性が高まるからだ。
日本マイクロソフトは、「日本においては、東京五輪・パラリンピック、ラグビーワールドカップなど国際的なスポーツイベントが相次いで開催されるが、これまでの例を見ても、開催国を標的としたサイバー攻撃が増加する傾向がある。また、トラブルでシステムが停止したときにも、日本マイクロソフトのサポートが受けられないため、ビジネスが止まるといったリスクが発生する可能性もある」とし、Windows 7の環境のままで利用し続けることの危険性を指摘している。
日本マイクロソフトでは、Windows 7搭載PCは今年6月の時点で、法人市場で1141万台、個人市場では871万台が稼働していると推定している。昨年12月時点では法人市場で1600万台、個人市場で1100万台と推定していたことから、この半年間で国内のWindows 7搭載PCが約690万台減少していることになる。
また、サポート終了直後の20年3月末時点では、Windows OSに占める Windows 7の構成比は約19%になると推計。昨年6月の推定値が25%であったことに比べると、6ポイントの減少だ。日本マイクロソフトでは、20年1月14日のWindows 7のサポート終了時点でWindows 10の利用率を90%に高める目標を打ち出しており、その目標の達成に向けては、もう一段の踏み込みが必要になる。
ただ、この推定値や目標値からも分かるように、20年1月以降もWindows 7が一部で使われ続けることは想定内に入っている。その理由として、認知の徹底から漏れてEOSを知らなかった場合や、知っていても頑なに既存環境で利用するユーザーがいることも見逃せないが、さらに、ネットワーク環境に接続されていない環境で機器制御などに利用されており、セキュリティ面での影響をすぐには受けにくいユーザーが新たな環境への移行計画を先送りにしていること、全社の移行計画の中でリプレース時期が先送りになっていることなどもある。
なお、一部のユーザーを対象として、23年1月までWindows 7のセキュリティ更新プログラムを提供するサービスも用意されている。これは、「Windows 7 Extended Security Update(ESU)」と呼ばれている仕組みを利用することで可能になるもので、Windows 7 ProfessionalおよびEnterpriseのボリュームライセンスの契約をしていること、さらに、デバイス単位に課金する有償サポートを受けていることが条件となる。
中堅・中小企業の遅れが顕著に
「Windows 10の利用率90%」の目標を達成するカギとなるのは、温度差がある移行状況をいかに高位平準化するかということだ。
日本マイクロソフトによると、例えば、従業員1000人以上の企業では、95%がWindows 10への移行に向けた取り組みをすでに開始しているという。また、18年8月時点で、地方自治体においては、Windows 7のサポート終了に対する認知度が97%、市および特別区においては95%に達しており、新たな環境への移行が順調に進んでいるとみられる。
それに対して、中堅・中小企業での移行には遅れが見られる。日本マイクロソフトによると、19年6月時点で、20年1月にWindows 7のサポートが終了することを知っている中堅・中小企業は77%にとどまっており、4分の1近くの中堅・中小企業が、Windows 7のサポート終了を知らないというのが実態だ。また、地方都市においても、新たな環境への移行が遅れており、日本マイクロソフトでは、中堅・中小企業と地方企業で移行が遅れている現状を懸念材料に挙げている。最新環境への移行支援において、中堅・中小企業や地方都市の企業を強く意識した施策をどれだけ実行できるかが、この5カ月間の勝負となりそうだ。
なお、日本マイクロソフトでは、サポート窓口での相談のほか、中堅・中小企業に強いパイプを持つパートナー各社が用意した移行支援策を積極的に訴求している。また、Windows 10のライセンス、あるいはMicrosoft 365の契約法人ユーザーを対象に、「Desktop App Assure」を提供し、Windows 10およびOffice 365 ProPlus を展開する際に、アプリの互換性に関する問題が発生した場合には、スペシャリストによるアドバイスと修復ガイダンスを提供する特典も用意し、移行の際に最大の懸念事項にあがる「互換性」の課題を解決しようとしている。
[次のページ]デバイスを月額利用できる「DaaS」 中小企業向け施策の最適解に?