日本経済のターニングポイントになるとみられる2020年、法人向けIT業界はどう動くのか――。『週刊BCN』編集部では毎年、新年恒例企画として、SIerやディストリビューター、基幹業務ソフトベンダーなどのIT企業各社トップへインタビューとアンケートを実施し、各社が新しい年のIT市場動向をどう見ているか調査している。今回は51社からの回答を基に、20年のIT市場動向を展望するとともに、各社の「デジタルトランスフォーメーション(DX)」への取り組み状況を探る。
回答いただいたITベンダー
アイティフォー、内田洋行、SRAホールディングス、エス・アンド・アイ、SCSK、SB C&S、NECソリューションイノベータ、NECネクサソリューションズ、NECネッツエスアイ、NECフィールディング、NSD、NTTコムウェア、NTTデータ、NTTテクノクロス、OSK、オージス総研、オービックビジネスコンサルタント、応研、キヤノンITソリューションズ、CAC Holdings、JBCCホールディングス、シネックスジャパン、ソフトクリエイトホールディングス、Dynabook、ダイワボウ情報システム、TIS、TDCソフト、DTS、電算システム、電通国際情報サービス、東芝ITサービス、東芝デジタルソリューションズ、日興通信、日鉄ソリューションズ、日本事務器、日本情報通信、ネットワールド、野村総合研究所、PE-BANK、ピー・シー・エー、日立システムズ、富士ソフト、富士通エフ・アイ・ピー、フューチャーアーキテクト、豆蔵ホールディングス、ミロク情報サービス、弥生、ユーザックシステム、ユニアデックス、理経、菱洋エレクトロ
(計51社、五十音順)
Q1 2020年の法人向け IT市場の成長率は?
ほぼ全てのベンダーがプラス成長を見込む DXへの投資が継続
2020年の法人向けIT市場の成長率はどうなると見ているかを聞いたところ、前回(19年)調査に引き続き、回答を得られた全てのベンダーがプラス成長になると予測した。内訳は、「0~4%」が74%、「5~9%」が18%、「10%以上」が4%、「わからない・回答なし」が4%だった。
米中貿易摩擦の影響による世界経済の失速などを背景に、前年と比べて国内景気にも不透明感が漂う19年だったが、今年1月14日に迫ったWindows 7のサポート終了(EOS)に伴うWindows 10への移行需要やDXの機運によって、ユーザー企業のIT投資が活発化し、市場は堅調に推移。過去最高の売り上げ・利益を上げたベンダーも少なくない。20年についても、駆け込みに間に合わなかった顧客のWindows 10移行案件の刈り取り、老朽化したシステムのリプレース、最新技術を活用したDX推進など、引き続きユーザー企業のIT投資需要は高いと見る企業が多いようだ。
一方で、Windows 10移行や改元、消費増税に伴うシステム改修、東京五輪・パラリンピックに関連して需要を得たベンダーからは、その反動減を警戒する声も聞かれた。
Q2 2020年の自社業績の見通しは?
9割超がプラス成長と予測 ただし伸び率は低下か
ほぼ全ての企業が20年の法人向けIT市場が伸びると予測する中で、自社業績についてもプラス成長を見込む企業が大多数だ。回答のうち、1番多い「0~4%」が62%で、次に「5~9%」の24%、「10%以上」が10%と続いた。
特筆すべきは、前年と比べると高い成長率を予測する企業が減少していることだ。前回調査で「5~9%」もしくは「10%以上」と回答した企業は54%で半分超を占めたが、今回は34%と20ポイントの減少。一方、前回「0~4%」と答えた企業は43%で、今回は62%と前年比19ポイントの増加となった。調査の母数が異なるため単純比較はできないが、多くのベンダーでプラス成長を見込んではいるものの、伸び率としては減少すると見ている。また、「5~1%」のマイナス成長を予測する企業、「わからない・回答なし」とした企業はそれぞれ2%で、前回調査と変わりはなかった。
Q3 ユーザー企業のIT投資意欲は?
2020年は「流通・サービス業」がくる? 製造業の需要は減退か
ユーザー企業のIT投資動向について、2019年に活発だった産業と、20年に活発になりそうな産業について聞いた。
「2019年、特にIT投資が活発だと感じた産業」は、「製造業」が32%でトップだった。製造業では近年、生産現場の設備点検や予知保全にIoTを導入する動きが加速しており、IT投資が活発な産業の一つ。一方、直近は自動車業を中心に製造業の景気が後退傾向にある。それが影響してか、「2020年、特にIT投資が活発になりそうな産業」に「製造業」と答えた企業は20%となり、12ポイント減少した。
一方、好調が見込まれるのが「流通・サービス業」だ。19年に投資が活発だったと答えた企業は30%と、トップの製造業とほぼ同数。20年に投資が活発になりそうと答えた企業は42%と、19年と20年の間で12ポイント増加している。小売業では需要予測にAIを活用したり、キャッシュレス決済を導入したり、店舗の無人化・省人化を図ったりするなどして、ITを活用して経営の効率化・最適化を図る動きが本格化している。
そのほか、「金融・保険業」が活発化すると答えた企業は19年・20年で15%前後。店舗窓口の省人化や、FinTechの動きが継続する見通し。「建設業」と「医療・介護」は、19年はともに一桁台、20年は建設業がゼロだった。また、「公共・教育機関」は19年が8%で20年が16%と8ポイント上昇。16年の「自治体情報システム強靭性向上モデル」で導入したシステムの更改や、小中学校の1人1台PC導入に向けて需要を見込んだものとみられる。
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