Q4 デジタルトランス フォーメーション(DX)への取り組み状況は?
「DX」の売上比率、半数が「20%以上」と回答 自社のDXレベルは「レベル2~3」が多数
IT業界では数年前から「デジタルトランスフォーメーション(DX)」の言葉が広まり、企業の中に「DX推進室」などDXを冠した組織を立ち上げる企業が増えている。そうしたDXへの機運の高まりを受けて、今回の調査では新たに、ITベンダー各社のDXへの取り組みについて聞いた。
まず、自由回答で「『DX』をどう定義しているか」を聞いたところ、各社からさまざまな回答が得られた。その中でおおむね共通しているのが、DXは「新しい技術」や「データ」を活用して、「新たな価値を生み出す」ことや「顧客のビジネスモデルを変革する」ものであるということ。ここでいう新しい技術として、AIやIoTなどが主に挙げられている。
その上で、「自社でDXと定義したビジネス領域の売上比率」を調査したところ、一番多かったのが「20%以上」の50%。また、「DXと定義した事業の成長率目標」については、「10~49%」が36%と最も多く、次に28%が答えた「100%以上」が続いた。特徴的なのは、ここで「100%以上」と答えた企業は、売上比率の問いで「20%以上」と答えた企業に多いこと。すでにDXである程度の収益を上げながら今後も大きな成長を狙っていくというDXビジネスへの注力姿勢がうかがえる。
一方で、顧客企業のDX実現を支援する立場にあるITベンダー自身がDXを実現できているのか、できていないのにDXを支援できるのか、という意見を聞くこともある。そこで、経済産業省が19年7月に発表した「DX推進指標」を基に、自社のDXへの取り組み状況を聞いたところ、一番多かったのが「レベル2(一部での戦略的実施)」の38%だった。次いで「レベル3(全社戦略に基づく部門横断的推進)」の34%が多く、この二つで全体の72%を占めた。そのほか、「レベル0(未着手)」が2%、「レベル1(一部での散発的実施)」が4%、「レベル4(全社戦略に基づく持続的実施)」と答えた企業が12%、「レベル5(グローバル市場におけるデジタル企業)」と答えた企業はなかった。
この問いに対して10%の企業が「わからない・回答なし」とした。「DX推進指標を知らない」という経営者もいた。また、「自社でDXを定義していない」という声も複数聞かれた。
Q5 2020年に注目のキーワードは?
「AI」がトップを継続 「データ」と「セキュリティ」が上位入り
トレンドの移り変わりが激しく、新しい言葉が現れては消えていくIT業界。昨年は業務自動化のニーズに応える「RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)」の導入が官民で拡大し普及期へ。AI-OCRやチャットボットなどと組み合わせる動きも本格化してきた。また、昨年にも増して「DX」がバズワード的に業界全体で声高に叫ばれるようになったほか、従来型のモノ売りからサービス化の流れの中で唱えられてきた「サブスク(サブスクリプション)」は、今やIT市場にとどまらず、「ユーキャン新語・流行語大賞」にもノミネートされるほど世間にまで広く浸透する語となった。
では、今年の市場をにぎわせるであろうキーワードは何か。各社に自由回答で聞いたところ、1位は「AI」だった。週刊BCNの毎年の調査でも、第3次AIブーム中の17年から継続して「AI」がトップを飾っている。ただ、ブーム当初は経営者から「AIで何かやれ」と言われてPoCだけで終わるというケースも少なくなかったが、今年に関しては「AIの実装が進む」と、本格的な導入・活用が進展とみる企業が多いようだ。
2位は「DX」。新しい技術を活用して競争力を高めていきたいユーザー企業の機運と、そうした顧客のIT戦略を支援する立場であるITベンダーの動きが継続して活発化していくとみられる。
以降、3位は「データ分析・活用」、4位は「クラウド」、5位は「IoT」と「セキュリティ」という結果になった。キーワード自体に大きな変化はないものの、「データ」は挙げるベンダーが増えて初めて上位にランクインした。また、同様に前回は上位にランクインしていなかったセキュリティは、サイバー攻撃が高度化していることやデータ保護の重要性が高まっていることを受け、ビジネスに力を入れる企業が多い。関連するキーワードとして「ゼロトラスト」を挙げる企業もあった。
Q6 海外ビジネスの状況は?
計画通りかそれ以上の実績に 引き続きASEANに投資が集まる
新たな市場に商機を見いだすため、海外進出しているITベンダーも多い。今回調査した50社の中では、31社が海外ビジネスを手掛けている。それらの企業の海外ビジネスの現状について調査した。
まず、海外ビジネスの売上比率について聞いたところ、「0~4%」が52%と半数を占めた。次いで多いのが「5~9%」の29%で、以降「10~14%」が6%、「15~19%」が3%、「20%以上」が10%と続いた。
海外ビジネスの進捗状況については、「計画以上の実績あり。2020年(20年度)も積極投資する」が45%、「計画値通りで現状のまま。(追加投資はせず)展開する」が52%となった。なお、「実績はないが積極投資する」という選択肢もあったがそう答えた企業はなかった。
これらの結果から、海外ビジネスで一定の成果を挙げている企業は一部にとどまり、多くの企業ではまだ実績としては小さいものの、少なくとも計画通りかそれ以上で推移しており、引き続きビジネス拡大に注力していくことがうかがえる。
また、これらの企業がターゲットとして重点を置く地域として1番多いのが「ASEAN」の41%。内訳として、タイ、シンガポール、インドネシア、ミャンマー、フィリピン、ベトナムの順で挙げた企業が多かった。前年の調査でもASEANに最も多くの票が集まっており、堅調に経済成長が続くASEANに引き続き商機を見込む企業が多い。
ASEANの次は、「米国」の18%、「東アジア」の15%、「欧州」と「その他」の13%と続いた。特徴的だったのが、中国を代表とする「東アジア」を挙げた企業が前年調査時の26%から11ポイントも減少したこと。先述したように調査企業の母数が異なるため単純比較はできないが、近年の中国景気の減退などを危惧する向きが反映されたものと推測される。
また、「その他」の中では、近年高い経済成長率を付けているインドを挙げたベンダーが複数見られた。