ヴィーム・ソフトウェア
クラウドを前提としたデータ管理ソリューション
技術もライセンスも
オンプレ/クラウドを問わず
クラウドを前提とした「クラウド・データ・マネジメント」を行うためソリューションを提供する――と説明するのは、ヴィーム・ソフトウェア(Veeam)の古舘正清社長だ。複雑化するクラウドのデータ管理をシンプル化し、信頼性と柔軟性を担保するのが、同社製品の目的だという。
ヴィーム・ソフトウェアの古舘正清社長(右)と森浩司チャネル・セールス・リーダー
同社では、プラットフォームを問わないソフトウェア製品であることを優位点として強調する。取得したバックアップデータの保存先としてパブリッククラウドを選択するケースが増えているが、システム自体はオンプレミスに残るものもあり、場合によってはパブリッククラウドからオンプレミスに戻すケースもある。ポータビリティを考慮したハイブリッドクラウドが前提となれば、ソフトウェア型の仕組みはフィットしやすいと主張する。
クラウドに対応するためシンプルにするのは技術面だけではない。「オンプレミスからクラウドへ移行する際に、ライセンス形態が変わり複雑で困るという声がある。Veeamのライセンスは、オンプレミスでもクラウドでもシンプルなサブスクリプション型で利用できる。シングルコンソールでライセンスもシンプルなことが、クラウドへの入り口となる」と古舘社長。ライセンス移行性の高さは、100%ソフトウェアだからこそだと説明する。
日本では、東日本大震災以降、災害対策を検討する企業が増えた。最近も台風などで水害が発生しており、自然災害の脅威からITシステムを守る意識は高まっている。しかし、関心は高いものの、実際の対策はデータをクラウドに転送してそこで終わっている。有事の際のフェイルオーバーテストを日常的に行う例はほとんどない。
また、リカバリーのテストはDRの仕組みを構築した際の一度だけで、その後に仮想サーバーが追加されるなどして状況が変わっても、その都度のテストは実施されていないケースも少なくない。しかし、システムに変更があれば、復旧要件も変わるはずだ。リカバリーポイントは1日前で良かったものが、1時間前となるかもしれない。ヴィーム製品を採用したあるサービスプロバイダーでは年に一度のテストを行っているが、ヴィームの森浩司チャネル・セールス・リーダーによれば「これはかなり良いほう」という。
このため、同社でもリカバリーの自動化機能には力を入れている。リカバリーのテストを自動的に行うことが可能で、リカバリー時には正確に復旧したかのドキュメントや、復旧手順書まで自動で生成される。ここまで自動化に腐心するのは、人はミスをするのが前提となっているからだ。「日本でも、クラウドを使いDR構成を作るところまでは企業が取り組み始めている。一方欧米の大手企業は、復旧の自動化まで取り組んでいる」と森氏は話す。
グランドデザイン段階から
バックアップとDRを組み込む
企業がクラウドを利用する理由として、コストよりもアジリティ(素早さ)が挙げられることも多い。バックアップ/リカバリーは、新規システムの構築では最後に出てくる要件だったが、変化が前提のクラウドでは、グランドデザイン段階からバックアップ/リカバリーとDRを組み込むべきだ。その際は復旧テストも含める必要がある。そのためヴィームでは、新規構築プロジェクトにはアセスメント段階から入れるようアプローチしている。
「バックアップの取得が速いことを示すデモはよく見られるが、当社ではいかに迅速に復旧できるかのデモを行う。Veeamは常に戻せて速い。だからこそ安心して使ってもらえる」と古舘社長。その上でデータを最適な場所に保管でき、有事の際に最適な場所に戻せる。一般にパブリッククラウドで提供される契約上の稼動率は99.95%程度で、必ずしも可用性が高いとは言えない。それを前提としたバックアップ/リカバリー、DR体制を、個々のシステムのビジネス要件に沿って整えておく必要があると改めて指摘する。
とはいえ、バックアップは“保険”と捉えられることも多く、Veeamに投資したくなるような新たな価値も求められる。例えば、バックアップを使えば数時間前の「ほぼ本番と同じデータ」を用意できる。それを使い開発やテストが行える。またVeeamにはデータ統合APIがあり、復旧せずにバックアップデータの中身の解析などができる。
古舘社長は「AIエンジンを持っているようなパートナーが、当社と組みバックアップデータを活用する新たなサービスを展開できる。バックアップが確実にとれて復旧できるのは当たり前で、それは訴求ポイントにならない。Veeamはクラウド・データ・マネジメントで、新たなデータ活用までを提案する」と説明。このためパートナーも、バックアップを起点にした新たな提案を一緒に行えるところを増やしていく。「そこに価値を感じ、バックアップ製品の軸足をVeeamに移してくれるパートナーも出てきている」とも言う。バックアップデータをいかに活用し新たな価値提供ができるかが、今後の同社のチャレンジだ。
コヒシティジャパン
セカンダリストレージに必要な機能を一から統合
ファイルサーバー機能や
コンテナ実行環境も統合
データセンターでは、コンバージドインフラにOracleなどのデータベースを移行し、プライマリストレージにはオールフラッシュ製品を用いるなどして、トランザクションシステムの集約化が進んでいる。一方で、それ以外のファイルサーバーやメールなど「セカンダリストレージに格納されているデータの保護、バックアップは集約されず取り残されている」と言うのは、コヒシティジャパン(Cohesity)営業本部の東一欣シニアSEマネージャーだ。
コヒシティジャパン
東一欣 シニアSEマネージャー
先にも触れた通り、クラウド時代に多様化するバックアップ対象に、ばらばらなバックアップの仕組みを導入するのは部分最適でしかない。それに対しコヒシティは「バックアップターゲットとソフトウェアを一から統合し作り上げ、ファイルサーバー機能やクラウド連携機能までもが統合されている」(東氏)といい、セカンダリストレージに求められる機能を統合しているのが特徴という。新しい製品だからこそ、クラウドを含め断片化するデータに対処することを、あらかじめ想定したアーキテクチャーとなっているのだ。
ソフトウェア製品としての提供に加え、HPEやDell EMC、シスコシステムズのサーバーを用いたアプライアンスも用意されている。HPEはOEMとして、ハードウェアとCohesityを販売から保守まで一本化した窓口で扱える。仮想化環境については、VMwareはもちろんHyper-V、KVMにも対応し、仮想アプライアンスの形態でも導入可能だ。パブリッククラウド上での動作も、AWS、Azure、GCPをサポートする。「ライセンスは環境が違っても共通のサブスクリプション型で、物理サーバーからクラウドへ、その逆への移行でも買い直す必要はない」(東氏)という。
ユニークなのは、Cohesity自体がDocker、Kubernetesをサポートするコンテナプラットフォームとなっており、マーケットプレイスからバックアップ以外の機能を入手し簡単に追加できることだ。「例えば、ウィルススキャンのアプリケーションやログ管理の『Splunk』、監査ツールなどを追加してすぐに動かせる。別途サーバーを建てる必要がない」と東氏。バックアップデータの利活用は各社から提案されているが、それを実現できる機能がすでに用意されているわけだ。
バックアップだけでなく、アーカイブ用途のクラウド連携機能もある。データの長期保存ニーズは高まっており、テープの代わりに昨今ではクラウドのオブジェクトストレージが利用される。CohesityではAWS、Azure、GCP、Oracle Cloud、そしてAmazon S3互換のオブジェクトストレージをサポートしている。また、重複排除と圧縮機能を搭載し、クラウドにデータを送る際のデータ量削減にも効果を発揮する。
ほかにもニーズが高いのは、SaaSであるOffice 365やOneDriveのデータ保護だ。これらに対応するバックアップ/リカバリー機能が、Cohesityにはすでにある。Office 365などでは、標準でメールのデータを過去にさかのぼり取得できる期間が定められている。コンプライアンス用途で長期間データを保存し内容を確認できるようにしておく必要がある場合、Cohesityの世代管理バックアップ機能が活用できる。
検索・多世代バックアップに強い
独自のファイルシステム
もう一つの特長が、独自のファイルシステム「SpanFS」だ。コヒシティ創業者のモヒット・アーロンCEOは、かつてグーグルでGoogleファイルシステムの開発に従事しており、その際の知見も用いて、エンタープライズのデータ管理に特化したSpanFSを開発した。そのためSpanFSは、検索に強い特徴があるのだ。長期間のバックアップから必要なデータを瞬時に探す場合、SpanFSの検索性能の高さが重宝する。
SpanFSではファイルシステムのメタデータをKey-Value型(※)の仕組みで管理し、無制限にファイルの世代管理ができる。「最長で1000年間のアーカイブも可能。期間が長いだけでなく、極めて数多くの世代を細かく残すことができる。さらにWORM(Write Only、Read Many)で改ざん防止機能もある」と東氏。バックアップデータをコンプライアンス目的で利用する際に、ここまで機能が充実している製品はほかにないと自信を見せる。(※NoSQLデータベースの代表的な方式。保存したいデータ自体であるValueと、それに対応する一意なKeyを1対1でひもづけて格納するシンプルな仕組みのため、データを高速に参照できる)
細かい世代に分けてバックアップを取得できることは、ランサムウェア対策でも有効だ。ランサムウェア被害からの復旧ではどの時点に戻れるかが重要だが、15分に1回しかバックアップデータを取得できなければ、最短で15分前にしか戻れない。Cohesityでは1分に1回といった極めて短いスパンでバックアップを取得でき、システムの重要性に応じ極めて柔軟なバックアップの世代管理ができるのだ。
日本では、セカンダリストレージデータの保護は、SI企業などのITベンダーが提案するケースが多い。その際、複雑な仕組みでは提案の難度が上がるだけでなく、確実なデータ保護もままならない。コヒシティは、機能統合されたシンプルなプラットフォームでこの問題を解決し、その上でバックアップデータの利活用を図ろうとしている。同社では、このコンセプトを踏まえた提案を行える「大きなビジョンを持ったパートナーを増やすこと」(東氏)が国内のビジネスを伸ばすには必要と考えており、そのためのパートナーのトレーニングにも力を入れているという。
昨年は、パブリッククラウドにおいてもインフラ障害が発生することが改めて認識された年だった。そのような障害には、クラウドベンダーが用意する機能だけでは十分に対応できない。クラウドの利用でも、自分たちのシステム要件に合うバックアップ/リカバリー体制を、ユーザーの責任の下に整える必要がある。必要なものは、バックアップソリューションのベンダーからすでに提供されている。ITインフラの変化を見据え、中長期的に自社のパートナーとなり得るバックアップベンダーを見つける必要がありそうだ。