Special Feature
今こそ知りたいオンライン営業 リモートでも成果をあげる方法
2020/07/24 09:00
週刊BCN 2020年07月20日vol.1834掲載
オンライン営業ツールの需要が急拡大
ベンダー各社の製品戦略
ベルフェイスコロナ禍で利用が急増 電話を使ったオンライン営業
「オンライン営業」のツールとして代表的なのが「bellFace」だ。運営するベルフェイスでは、新型コロナウイルス対策として3月から5月までの3カ月間、期間限定でサービスの無償提供を実施。この期間中の登録企業数は1万2000社に上ったという。bellFaceは約5年前に提供を開始しており、無償提供の開始前の時点での有償契約数は1200社ほど。無償かつ期間限定とはいえ、5年間で蓄積してきた数のおよそ10倍の企業が一気に押し寄せた形だ。有償契約数はコロナ前と比べて約1000社増加。利用企業の業種も拡大した。従来はITや人材、広告業界を中心に法人営業での利用がほとんどだったが、無償提供では不動産や保険、自動車販売など、個人消費者向け営業用途での利用が増えたという。
資料共有、トークスクリプト表示、双方で同時編集可能なメモ帳など、営業活動に使える機能を搭載。中でもユーザーから評価される最大の理由は「電話」にある。bellFaceは「営業向けに特化したWeb会議ツール」の位置付けにあるサービスだが、通話のインターフェースとして電話を利用する。商談時には電話がつながった状態で、営業を受ける顧客にPCやスマートフォンからbellFaceのサービスサイトにアクセスしてもらい、そこで発行される4桁の番号を営業担当者がシステムに入力することで、画面に資料やカメラ映像を投影しながら商談を開始できる。顧客側では専用アプリなどの特別な準備は必要ない。
同社セールスグループの岩田恭行・セールスグループゼネラルマネージャーは、「特に新規顧客に対する営業では、顧客先の環境を指定できず、ネットワーク環境の良しあしも分からない。顧客担当者がオンライン形式に慣れているかも不明だ。bellFaceでは電話を使えることで途切れることのない安定した音声で通話でき、ストレスなく利用できる」と説明。最近では「社内会議はZoom、商談はbellFaceを利用するというお客様も増えている」と話す。
同社が今年4月30日~5月1日にかけて7都府県の企業経営層・営業職を対象に実施した調査では、オンライン商談を導入しているとの回答が52%に上り、さらにその中でも約半数がコロナ対策として導入を開始したという。コロナ禍でオンライン営業を利用する企業が増えたことで、営業手法の一つとしてオンライン営業が今後浸透していくとする予測もある。岩田ゼネラルマネージャーは、「今まではコンセンサスとして、とにかく会うことが重視されていた。コロナではそれができないということになり、オンライン営業が訪問の置き換えとして活用されてきている」とした上で、今後は「営業の内容までデータ化されるので、それを生かせるかがカギになる」との見方を示す。
bellFaceでは商談の録画録音が可能で、商談中にどのタイミングでどの資料を表示したかなども可視化することができる。こうした機能を新人教育や営業トークの改善に役立て、組織としての営業スキルを磨き、ひいては売り上げ向上につなげていくことが可能になる。岩田ゼネラルマネージャは今後のbellFaceの展開について、「今までは“コストを下げるツール”として提供してきたが、“売り上げをあげるツール”として伸ばしていきたい」と話す。
ブイキューブ
電話や訪問とオンラインは補完的な関係に
Web会議ツール「V-CUBE ミーティング」で知られるブイキューブは、会議のみならずカスタマーサポートやオンラインセミナーなどでもWeb会議の活用を訴求してきた。同社が今あらためて力を入れているのが、Web会議を利用した営業活動の普及である。“営業の働き方改革”といった文脈でインサイドセールスが注目を集めるようになったことを受け、営業担当者が顧客のもとへ出向かなくても商談ができるオンライン営業支援ソリューションに需要があると判断。従来のWeb会議ツールとは異なる、オンライン営業専用のコミュニケーシュンツールとして、昨年4月に「V-CUBE セールスプラス」の提供を開始した。
インターネットを利用した音声および映像の双方向伝送、ファイルや画面の共有、テキストチャットといった機能は一般的なWeb会議ツールと共通だが、利用の流れが商談用に最適化されているのが特徴。営業担当者側、顧客側ともにブラウザー上で完全な機能が利用可能で、事前のインストール作業は不要だ。
同社マーケティング本部インサイドセールスグループ第1チームの篠崎太祐チームリーダーは「顧客にいかに簡単に接続してもらうかを第一に考えて設計した」と説明する。V-CUBE セールスプラスの場合、短いURLをブラウザーに入力してもらう1アクションだけで商談を開始できるので、顧客に煩わしさを感じさせることがなく、商談の場についてもらうハードルを下げられる。
従来は、首都圏に本社を置くIT企業による利用が多かった。Webサービスなどのデモンストレーションを簡単に行うことができるので、画面を見せないと伝わりにくい商材を、全国の顧客に対して提案しやすくなるからだ。新型コロナの影響の深刻化を受けて、3月11日からは1契約あたり3IDまでの無償サービス提供を行っており、4月には問い合わせ件数が昨年同月比約14倍と大幅に増加した。また、非IT企業や西日本の企業にも導入が広がっており、証券や不動産といった業種で、オンライン営業を取り入れる動きが盛んになっているという。
同社のツールはブラウザー上で音声・映像・テキストのコミュニケーションを完結できるので、営業活動から電話を撤廃しすべてオンライン化することも可能だが、篠崎チームリーダーによると「まずは電話でつながっていただく形での利用が基本」といい、最初のコンタクトは従来通り電話で行う形態が多いという。
従来であれば、商材に関心を寄せた顧客との間で訪問スケジュールの調整を行っていたが、オンライン営業ツールに誘導できれば、そのままサービスのデモンストレーションを行ったり、資料を送付したりできるので、場の熱を冷ますことなく初回の会話から具体的な商談が行える。また、架電からオンラインでの商材説明、次回アポイントの獲得までを若手中心の部隊で行い、具体的な提案からクロージングはベテラン営業が担当するといったように役割を分けることで、より多くの顧客にアプローチし、かつ成約率を向上させている例もあるという。「初回の商談を“型化”しやすいのもオンライン営業のメリットの一つ」と篠崎チームリーダーは説明する。
同社のツールも、長年訪問営業スタイルだったB2B企業による採用例が出てきている。日本事務器は昨年、全国の大学を担当する文教ソリューション部にインサイドセールスのチームを発足し、V-CUBE セールスプラスを導入。頻繁に訪問するのが難しい遠方の大学に対しても、顔の見える形で営業活動を継続できるので、顧客の課題をまめにヒアリングし追加提案につなげているという。
RevComm
営業トーク分析で成約率を向上
オンライン営業では直接顧客と対面しない分、訪問営業とは異なる営業スキルが求められる。RevCommが提供するAI搭載型クラウドIP電話の「MiiTel」では、営業電話やコールセンターの通話内容をAIが解析して、話す速さや沈黙の回数、話した・聞いた比率などを数値化して定量的に評価することができる。
MiiTelで解析した内容を基に営業トークを改善していくことで、商談の獲得率や成約率の向上を図ることが可能。例えば、話す速度が速ければゆっくり話し、顧客よりも自分が話しすぎている場合は相手の話を聞くようにするといった具合だ。「定量的に可視化することで、自分自身で納得感を持って改善しないといけない点を明確化し、セルフコーチングができる」と、同社の中島慎吾セールスマネージャーは説明する。MiiTelの契約後には、同社のカスタマーサクセスチームが「オンボーディング」として、顧客が実現したい目標や解決したい課題に対してMiiTelのどの指標を見るべきかを説明するといった、活用に向けたサポートも提供する。
中島セールスマネージャーによると、コロナ禍で在宅勤務が広がるなかで、「家の中だと誰がどのように活動しているか、何件電話をかけているのかなどが見えない。そこを正しく可視化して把握したいというニーズが多い」と言い、ここ数カ月は「資料請求ベースで毎月100件以上増加している状態だ」としている。
今後の営業の在り方として中島セールスマネージャーは、営業の生産性を高める流れのなかでも「より一層、無駄を省くような営業スタイルになっていくだろう」と見る。例えば出勤や訪問にかかる移動時間を削減するだけで、1日の商談数を増やす余地ができる。その点で、オンライン営業の活用が広がる可能性がある。また、オンライン営業で成功するには「全ての情報を可視化することが重要」と指摘。“無駄”の削減が進む一方で、「アポイント率や商談のクロージング率が上がればそれだけ生産性の高い組織だといえるので、そういった指標がより重視されるようになるだろう」と話す。
同社では今後、市場シェアの拡大を目指し業界トップのエンタープライズ企業に対する営業活動に力を入れる。現状、社内の営業体制としてはインバウンド営業が中心のため、アウトバウンドの営業部隊を新設し、業界トップ企業を攻める体制を構築する考え。また、インバウンド営業についても、近頃問い合わせが急増していることから「(問い合わせに)十分対応できるような組織をつくっていく」(中島セールスマネージャー)。商談の成約率も高めるべく、生産性高い組織づくりを急ピッチで進める方針だ。
製品面では、映像による「オンライン商談」の機能を今後リリースする。さらにその先には「リアル商談の分析や、B2Cの分野にも入る予定」と中島セールスマネージャーは説明。商材の提案の幅を広げてアップセルやクロスセルを狙っていく考えを示している。
近藤商会
「bellFace」を活用しインサイドセールスへシフト
今期は全社員での利用を加速
北海道函館市に本社を置き、オフィス内装やITシステムの構築を手掛ける近藤商会は、現在注力しているASKUL(アスクル)事業においてオンライン商談ツールの「bellFace」を2年前に導入、訪問営業からインサイドセールスへの転換を実現した。現在では事務機器の販売もリモートで行っている。近藤商会はもともと事務機器販売から始まった企業だが、近年はオフィス用品販売ASKULの販売代理店としての事業展開に力を入れている。従来は全営業がASKULを担当していたが、既存顧客への提案が中心となり新規顧客の開拓までなかなか手が回らないという課題があった。その解決に向けて2年前に専門部署のASKUL事業部を発足。同時に、新規顧客の獲得に向けてインサイドセールスの取り入れを決断し、ツールを探すなかで出会ったbellFaceを導入した。
ツールの選定時にはWeb会議ツールも検討したが、接続が「切れる」というイメージがあったこと、また事前に専用アプリをインストールする必要があったことなどが課題となって対象外に。「既存顧客への対応はWeb会議ツールでもいいが、接点のないお客様に対して『アプリを入れてください』と言うのは、提案してきているのになぜそんなことをさせるのかと、不信感にもつながりかねない。その点、bellFaceの仕組みだと、お客様側ではネットにつながる環境さえあればよく、つなげやすい」ことが決め手だったと、竹谷淳一・常務取締役事業統括は話す。
社長のトップダウンでbellFaceの導入、インサイドセールスの浸透が図られたため、導入自体は抵抗感もなくスムーズに進んだという。一方で、「導入そのものよりも、入れてから実績をつくり出すまでの苦労が大きかった」(竹谷常務)。そのため、導入からの約半年間は毎日、1日の終わりに振り返りの時間を設けて、トークスクリプトの見直しを徹底的に行った。そうした結果として、導入後3カ月ほどで手応えを感じるようになり、現在では実働5人でASKUL事業部の売り上げを回すことができているという。
なお、トークスクリプトの見直しは月1回ほどの頻度で現在も続けている。「キャリアに関係なく、ある程度教育すると成果にそれほど差が出ない。基本的に教育が楽だ」と竹谷常務は説明する。bellFaceの機能ではトークスクリプトのほか、共同編集で議事録を作成できるメモ帳や、複数拠点から参加できる機能なども活用しているという。
bellFaceを導入したことで、他のASKUL代理店との差別化として「bellFaceを使って導入から運用サポートまでワンストップで提供できることが強みになった」と竹谷常務は強調する。当初はASKUL事業部で活用が始まったbellFaceだが、現在はほかの事業にも利用を拡大。「既存顧客に対するコピー機やPCの商談も、今ではインサイドで行っている」(竹谷常務)という。
同社では毎年スローガンを定めており、7月から始まった今期は「全員ベルフェイス!圧倒的にNo.1」を掲げる。営業だけでなく総務スタッフなど含む全社員がさまざまな場面でbellFaceを積極的に活用していく方針だ。竹谷常務は、今後、「bellFaceを使ったオンライン支援を加速させていきたい」と話す。また、bellFaceの活用幅を広げていく考えで、「bellFaceをしっかり習得し、全ての部署で業績を伸ばせるようにしたい」と意気込む。

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う在宅勤務の広がりで、企業の営業活動に変化が起きている。営業する側・受ける側の双方が会社にいないという状況もあるなかで、足を運び訪問する対面営業の代替として、ITツールを利用してリモートで商談するオンライン営業を取り入れる企業が増加。ただ、うまく成果をあげられず悩む声も。ベンダー・ユーザー企業のそれぞれの取り組みから、オンライン営業の成功法を探る。
(取材・文/本多和幸、日高 彰、前田幸慧)
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