テレワークの導入が拡大、変わる働き方

 新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけとしたテレワーク導入の波は、大企業だけでなく中小企業にも押し寄せた。テレワークに活用できるIT製品・サービスの需要も急増。IT業界でかねてテーマとなってきた「働き方改革」のビジネスにも急激な変化が起きた。中小企業市場ではどのようなIT商材の販売が好調だったのか。また今後の中小企業の働き方の変化をどのように見据えて提案を行っていくのか、IT流通大手各社に聞いた。
(取材・文/指田昌夫 編集/前田幸慧)

強制テレワークで企業は
自社環境の整備を最優先


 2020年、新型コロナウイルスの感染拡大によって、多くの企業でテレワークの実施など働き方の大転換が行われた。それは昨年までの「働き方改革」という国の政策による努力目標や規制とは、次元の違う緊急性と強制力を伴って企業を襲い、各社は対応に追われた。
 

 内閣府が6月にまとめた国民へのアンケート結果でも、その実態が浮き彫りになっている。

 就業者全体でテレワークの実施状況は34.6%で、ほぼ100%の実施と答えた人は10.5%に達した。これは就労者の10人に1人は、コロナ禍以降、調査日までほぼ会社に通勤しなかったことを意味する。

 また、就業者全体において今後もテレワークを続けたいと答えた人の割合は39.9%に達した。つまりコロナによってテレワークのメリットを理解し、今後も働き方の選択肢として取り入れていきたいと考えているのである。

 特に、テレワークの実施で大幅に通勤時間が減少したグループでは、テレワークを継続したいと答えた人が7割を超えた。都市部と地方圏で差がなく、通勤時間が長い人ほどテレワークの効果を実感したことが理解できる。

 一方、テレワークを実施した人が感じた課題として最も多かったのは、「社内の打ち合わせや意思決定の仕方の改善」が44.2%と最も多く、続いて「書類のやりとりを電子化、ペーパーレス化」が42.3%、「社内システムへのアクセス改善」が37.0%と続いている。顧客対応や生産の継続といった事業面よりも、まず社内のプロセスをテレワークに対応させることに企業が追われていたことがうかがえる。

 同様にテレワークにおける不便なことを聞いた結果でも、「社内での気軽な相談・報告が困難」がトップで、「取引先等とのやりとりが困難」を上回った。これらの結果から、テレワークを業績向上に生かす段階は、今後の課題として取り残されたことが推定される。

企業規模が小さくなるほど
テレワーク実施率は低下


 テレワークの実施状況は、企業規模別にみるとどうか。パーソル総合研究所が今年6月に行った調査によると、従業員が1万人以上の企業でテレワーク実施率が42.5%であるのに対し、1000人~1万人未満が36.3%、100人~1000人未満が25.3%と減っていく。そして100人未満では15.5%と、1万人以上のおよそ3分の1しか実施できていない。企業規模が小さいほどテレワークが進まなかったことが分かる。社内体制のデジタル化、オンラインコミュニケーションツールの整備が遅れている中小企業が多いことも、その一因と考えられる。
 

 中小企業のテレワークの実態に関しては、大阪商工会議所も府内の中小企業に行ったアンケート結果をまとめている。これによれば、テレワークの実施率は52%で、そのうち約9割がコロナ対策として急きょ導入したと答えている。その結果、テレワーク実施企業では「セキュリティが不安」「運用規程・労務管理規程等の整備が不十分」などの課題が発生し、導入できなかった企業では「対象となる部門・業務・社員が少ない・選定しにくい」「IT環境が不十分」などが原因と答えている。

 一方でテレワークを導入した企業では、3社に2社が「概ね良好」と答えており、7割を超える企業で継続予定としている。

 企業のテレワーク導入は、コロナの感染拡大による緊急対応として導入を急いだことで、社内の環境整備が優先されてきた。各種のアンケート結果から、現在そのひずみが課題として浮上してきており、自粛解除後は社員に出社を求める企業も増えている。逆に、今後もテレワークを前向きに推進する企業では、対外的なビジネス環境もテレワーク利用を前提に整備していく段階に入ったと言えるだろう。