2017年から19年にかけて、RPAは日本企業に広く知られるようになった。大規模な導入を含めて、多くの企業で採用が進んだ。20年の新型コロナウイルスの感染拡大で、リモートワーク対応が求められる中、RPAの利用は新たな局面に入ったとも言われる。リモートワーク時代のRPA活用法を改めて考えてみる。
(取材・文/指田昌夫  編集/日高 彰)

「デジタル労働者」と働く

 ある銀行では、一人の行員が毎週水曜日の朝9時30分までにレポートをまとめる業務を命じられていた。そのレポートの元データは、当日の朝まで揃わないため、水曜日は朝7時台に出勤して作業に取りかからなければいけなかった。

 この作業をなんとかしたいと思った行員は上司に相談し、上司はシステム化を情シス部に持ちかけた。だが工数にして2時間弱の作業で、費用対効果的にシステム化は取り合ってもらえない。

 そこでその行員はRPAツールを使い、自らシナリオを設定して業務を自動化した。その結果、水曜日の朝も、他の曜日と同じ時間に出勤すればよくなった。その行員は早朝出社をしなくてよくなっただけでなく、「いやな仕事をせずに済む」ことで精神的にも楽になったという。

 周知の通りRPAは、大量のバックオフィス業務を自動処理する「サーバー型」と、オフィスで従業員が行ってきたPC作業を自動化する「デスクトップ型」に大別される。これまでは、いかに多くの時間を削減するか、またコストはどれだけ減るかという定量化できる効果に注目が集まり、大きな効果が見込める大企業を中心に、サーバー型RPAの導入が進んできた。

 一方、デスクトップ型RPAは中堅・中小企業にも導入が広がり、より手元の細かい業務に対する効果が期待されている。労働力不足やコロナ禍のリモートワークに対応するためのツールとしても、注目されているのである。

 冒頭の事例を紹介してくれた、RPAテクノロジーズの大角暢之代表取締役社長は、同社が提供するRPAの「BizRobo!」は、ITツールでなく、「デジタル労働者」だと言い切る。
 
RPAテクノロジーズ 大角暢之 社長

 「特に地方を中心に労働者が枯渇していく中で、単純労働を貴重な人材にさせていた『つけ』が回ってきていた。特に、女性の就労が大きな課題だが、優れたスキルを持っていても、出産、育児などでフルタイム勤務は難しい場合も多い。そこをデジタル労働者で補間し、企業の力になってもらうというのが、当社の大きな目標だ」

 RPAをITツールでなく労働者の派遣と同じように考えると、人間の上司が指示命令を正しく出さなければ、狙ったとおりの成果を出すことができない。そのため、上司としての管理者は、あくまで業務の現場と位置づけている。

 「RPAをITでなく人事の問題として考えている企業では、現場の業務を次々と自動化することに成功している。冒頭の例のように現場でいやな業務、面倒な定型作業を自動化することが重要。費用対効果を気にしていると失敗する」(大角社長)

 大角社長は、RPAの利用が拡大しない企業は、費用対効果の呪縛から抜け出せていないと語る。「費用対効果に縛られると、最初は当然最大のインパクトが出る全社的な業務プロセスをターゲットにする。だがそこから対象業務を広げていくと、必然的に量的な効果は尻つぼみになっていく。それだけでなく、現場の小さな課題は置き去りにされてしまう」

 この考え方を改め、現場主導、業務本位のRPA化を一から検討し直すべきだというのが、大角社長の主張だ。