情報処理推進機構(IPA)は10月11日、「DX白書2021」と題したレポートを刊行した。日米の企業におけるDX戦略や人材、技術などを大規模に調査・分析し、現状を丁寧にまとめている。ほとんどの項目で日本企業の現状、取り組み姿勢は米国に比べて後れをとっており、読み進むにつれて暗い気分になった人もいたかもしれない。ただ、現状を嘆くだけでは、何も生み出すことはできない。この結果を踏まえ、日本のITベンダーや企業がDXにどう向き合うかが重要だ。取り組むべき方向性についてヒントを探るため、IPAの担当者に話を聞いた。
(取材・文/指田昌夫  編集/藤岡 堯)

 白書のとりまとめを主導した、IPA 社会基盤センターイノベーション推進部の古明地正俊部長は「米国に後れていることを強調したかったわけではない。ITのユーザー企業向けに設計したものであり、事業環境の変化に迅速に対応するには、レガシーシステムなどの既存の仕組みを変えなければいけないということを具体的に明らかにした」と狙いを説明する。
 
IPA 古明地正俊 部長

 ひとまず、白書の概要を見ていこう。全体は「DXの取り組み状況」「DX戦略の策定と推進」「デジタル時代の人材」「DXを支える手法と技術」の4章に分かれており、いずれも日米の企業を対象とした調査について、その結果をIPAの研究員が解説している。

 「DXの取り組み状況」に関しては、全業種で見て米国では79%が取り組んでいるが、日本は56%と差が付いていることが示された。業種別金融、通信では差が少ないものの、製造や流通・小売業のDXでは日米の差が大きくなっているのが気になるところだ(表1)。
 

 「DX戦略の策定と推進」では、主に企業の戦略としてDXがどのように位置づけられているかを聞いている。パンデミックやディスラプターの出現など、外部環境の大きな変化に敏感に反応し、かつ商機として捉えている米国企業が多いのに対し、日本企業は検討まではするものの、対応に至らない企業が過半数を占めている。

データ活用の環境整備 ベンダーの役割大きく

 DXの推進プロセスに関しては、さらに差が広がる。特に自社におけるアナログ・物理データのデジタルデータ化(デジタイゼーション)について聞いた項目では、十分な成果が出ていると答えた企業は米国で56.7%に上る一方、日本は17.0%にとどまる。

 この部分は、日本のITベンダーにとっては企業を支援する大きな潜在市場だと古明地部長は指摘する。データ管理は高い専門性が求められるほか、活用するためのプロセスも多い。例えば、顧客情報を処理データから抜き出し、クレンジングして標準化するなど、前処理だけでも複雑だ。実際、データ分析への取りみ組状況を聞いたところ、「できている」とした日本企業はわずか1.9%しかいなかった(表2)。
 

 ITインフラとしてデータの活用環境を整備することは重要であり、外部ソリューションの活用は必須である。古明地部長は「どういうアーキテクチャーにするか、またどんなツールを使うかを決め、社員に対する教育も考えなければならない。これらの実現にはベンダーの持つ知見と技術が必要であり、果たす役割は大きい」と強調する。

 また、日本企業はDXの推進体制にもスピード感が不足している。昨今注目されるアジャイルの原則に則ったアプローチについて聞いた項目では、IT部門、経営企画部門、業務現場部門の全てで米国では70%以上が取り組んでいるのに対し、日本はいずれも30%前後である。さらに、DXに関してIT、経営、業務部門が協調して取り組んでいるかを聞いた問いでは、米国で全体の8割以上ができていると答え、日本は約4割と2倍の開きが出ている。

 古明地部長は「白書では経営とIT、業務部門がしっかり連携すべきとしているが、日本企業の場合はIT部門の立場はあまり強くなく、専門性という点でも人材が揃っているとは言えない。そのため、IT部門とチームを組むベンダーには、経営のニーズに応えるシステムを提案できる能力が問われている。3部門が連携してDXを進める際に、ベンダーもその輪の中に入れるようにしなければいけない」と語る。