大手SIerの上期業績が好調だ。野村総合研究所(NRI)は2023年3月期までの4カ年中期経営計画で掲げた連結営業利益1000億円を1年前倒しで達成できる見通し。NTTデータは前期の足踏みから一転、今年度(22年3月期)までの3カ年中期経営計画の目標である連結売上高2兆5000億円、営業利益率8%に迫る可能性が出てきた。TISは売上高、営業利益ともに過去最高を更新している。既存システムの刷新のみならず、“DX”と呼ばれる新領域へのIT投資が顕著に増えており「旺盛なDX領域への投資は向こう数年は続く」と、NRIの此本臣吾会長兼社長は話す。大手SIerの好業績の背景をレポートする。
(取材・文/安藤章司)

通期上振れ視野、NTTデータが中計目標に迫る

 NTTデータの上期(4-9月期)連結業績は前年同期比で大幅な増収増益となった。売上高、営業利益ともにすべての主要事業セグメントで増加。本間洋社長は「上期の好業績を踏まえ、通期での上振れも視野に入る」と、通期での上方修正も視野に入れている。

 上期の増収増益の背景には、IT投資の回復によって小幅な伸びにとどまった昨年度上期(20年4-9月期)からの反動増が挙げられる。コロナ禍が国内外で急速に深刻化した昨年度上期の売上高は前年同期比0.2%増、営業利益0.1%増だったが、今年度上期はその反動もあって売上高が同12.2%増の1兆2120億円、営業利益は同71.0%増の1091億円で着地した。海外事業における円安ドル高の為替影響も後押ししたが、その影響を除いても売上高は二桁増となった。営業利益についても、北米、EMEA(欧州・中東・アフリカ地域)の構造改革を経て稼ぐ力が高まった(図参照)。
 

 国内は、コロナ禍の影響がまだ残っている交通、旅行、飲食などの業種を除けば、おおむねIT投資は拡大トレンドにある。なかでも、社会全体のオンライン化、デジタル化への行動変容に適応していくためのIT投資が活発化している。

 例えば、国内金融機関における非対面取引の需要や、小売店舗の自動化、効率化に関する問い合わせ、行政サービスのオンライン対応の案件が増えているという。本間社長は、「金融、産業、公共のいずれの分野もオンライン化、デジタル化への対応という共通的な課題を抱えている」と、幅広い業種で変化へ適応が迫られていると話す。

 とはいえ、北米やEMEA、中南米といった海外でのコロナ禍の状況はまだ読み切れない部分があるため、上期決算の発表時点では、今年度通期の売上高2兆3600億円、営業利益1800億円(営業利益率7.6%)の期初予想は据え置いた。同社は今年度までの中期経営計画で連結売上高2兆5000億円、営業利益率8%を目標に掲げており、状況次第では目標達成に迫る余地がある。

リモートと対面をうまく組み合わせ

 北米では大手サービス企業から大規模なITアウトソーシング案件の3年間の契約延長を今年7月に獲得。スペインの鉄道会社からは、乗客一人一人の最適な交通手段を組み合わせて提示するMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)案件の要件定義からシステム構築、運用まで5年間の大型受注を果たしている。国内のみならず海外でも、ユーザー企業が「NTTデータグループを“デジタルパートナー”と位置づけ」(本間社長)、戦略的なIT投資案件を発注するケースが増えているという。

 NTTデータ自身の仕事の仕方も大きく変わった。コロナ禍期間中を通じて平均7割のリモートワークを実施。都心部オフィスが密にならないよう郊外オフィスも活用しながら分散ワークに努めてきた。その結果、「海外を含む遠隔地との時間と距離のハードルを克服する働き方があたりまえになった」(本間社長)と、グローバルでの意思疎通がより円滑になった。今後も生産性を一段と高めるべく、リモートと対面をうまく組み合わせた働き方を継続する。