Special Feature
大手SIer上方修正相次ぐ上期決算 “DX投資”は向こう数年続く見通し
2021/11/29 09:00
週刊BCN 2021年11月29日vol.1901掲載

大手SIerの上期業績が好調だ。野村総合研究所(NRI)は2023年3月期までの4カ年中期経営計画で掲げた連結営業利益1000億円を1年前倒しで達成できる見通し。NTTデータは前期の足踏みから一転、今年度(22年3月期)までの3カ年中期経営計画の目標である連結売上高2兆5000億円、営業利益率8%に迫る可能性が出てきた。TISは売上高、営業利益ともに過去最高を更新している。既存システムの刷新のみならず、“DX”と呼ばれる新領域へのIT投資が顕著に増えており「旺盛なDX領域への投資は向こう数年は続く」と、NRIの此本臣吾会長兼社長は話す。大手SIerの好業績の背景をレポートする。
(取材・文/安藤章司)
通期上振れ視野、NTTデータが中計目標に迫る
NTTデータの上期(4-9月期)連結業績は前年同期比で大幅な増収増益となった。売上高、営業利益ともにすべての主要事業セグメントで増加。本間洋社長は「上期の好業績を踏まえ、通期での上振れも視野に入る」と、通期での上方修正も視野に入れている。上期の増収増益の背景には、IT投資の回復によって小幅な伸びにとどまった昨年度上期(20年4-9月期)からの反動増が挙げられる。コロナ禍が国内外で急速に深刻化した昨年度上期の売上高は前年同期比0.2%増、営業利益0.1%増だったが、今年度上期はその反動もあって売上高が同12.2%増の1兆2120億円、営業利益は同71.0%増の1091億円で着地した。海外事業における円安ドル高の為替影響も後押ししたが、その影響を除いても売上高は二桁増となった。営業利益についても、北米、EMEA(欧州・中東・アフリカ地域)の構造改革を経て稼ぐ力が高まった(図参照)。

国内は、コロナ禍の影響がまだ残っている交通、旅行、飲食などの業種を除けば、おおむねIT投資は拡大トレンドにある。なかでも、社会全体のオンライン化、デジタル化への行動変容に適応していくためのIT投資が活発化している。
例えば、国内金融機関における非対面取引の需要や、小売店舗の自動化、効率化に関する問い合わせ、行政サービスのオンライン対応の案件が増えているという。本間社長は、「金融、産業、公共のいずれの分野もオンライン化、デジタル化への対応という共通的な課題を抱えている」と、幅広い業種で変化へ適応が迫られていると話す。
とはいえ、北米やEMEA、中南米といった海外でのコロナ禍の状況はまだ読み切れない部分があるため、上期決算の発表時点では、今年度通期の売上高2兆3600億円、営業利益1800億円(営業利益率7.6%)の期初予想は据え置いた。同社は今年度までの中期経営計画で連結売上高2兆5000億円、営業利益率8%を目標に掲げており、状況次第では目標達成に迫る余地がある。
リモートと対面をうまく組み合わせ
北米では大手サービス企業から大規模なITアウトソーシング案件の3年間の契約延長を今年7月に獲得。スペインの鉄道会社からは、乗客一人一人の最適な交通手段を組み合わせて提示するMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)案件の要件定義からシステム構築、運用まで5年間の大型受注を果たしている。国内のみならず海外でも、ユーザー企業が「NTTデータグループを“デジタルパートナー”と位置づけ」(本間社長)、戦略的なIT投資案件を発注するケースが増えているという。NTTデータ自身の仕事の仕方も大きく変わった。コロナ禍期間中を通じて平均7割のリモートワークを実施。都心部オフィスが密にならないよう郊外オフィスも活用しながら分散ワークに努めてきた。その結果、「海外を含む遠隔地との時間と距離のハードルを克服する働き方があたりまえになった」(本間社長)と、グローバルでの意思疎通がより円滑になった。今後も生産性を一段と高めるべく、リモートと対面をうまく組み合わせた働き方を継続する。
NRIは営業利益目標を1年前倒しで達成見込み
野村総合研究所(NRI)は上期(4-9月期)連結売上高が前年同期比9.7%増の2919億円、営業利益が同35.2%増の539億円と好調に推移した。売上高はオーストラリアでの2社買収の効果で約90億円の押し上げがあり、営業利益は不動産の売却益33億円分を差し引いても前年同期比30%近い増益率となった。今年度通期の業績見通しは期初予想から上方修正して売上高で初の6000億円の大台、営業利益も初の1000億円超の1040億円を見込む。NRIの23年3月期までの4カ年中期経営計画では、連結売上高6700億円、営業利益1000億円を目標に掲げているが、通期業績見通しを達成できれば営業利益の目標を1年前倒しで達成できることになる。
業績を押し上げた要因は、DX絡みの案件の増加だ。此本臣吾会長兼社長は、「先進企業のトップ集団がDX関連投資を行っていたのに加え、第二集団もDXに投資し始め、業種の幅も広がった」と話す。ここでNRIが言うDX投資とは、ビジネス変革に向けたコンサルティングサービスや、キャッシュレス決済、ネット通販、非対面営業、取り引きのオンライン化、ソフトウェア開発の効率化など、基幹業務システムをはじめとする従来から続くシステム構築(SI)とは一線を画す新規の分野全般を指している。
これらDX新領域に関連する上期売上高は前年同期比17%増の1867億円で、全体の64%を占めた。昨年同期が60%、一昨年同期が58%だったのに比べれば、DX関連とNRIが位置づけるビジネスの比率が着実に高まっているのが分かる(図参照)。DX関連の投資の増加は「向こう数年は続く」(此本会長兼社長)と見ている。

リモートワーク完成度は「5合目」
旺盛な需要に支えられてSEの稼働率が高まり、利益率を押し上げている。需要過多で価格交渉もまとまりやすく、また、キャッシュレス決済やネット通販などは機能的に似通っている部分が多い。部品の再利用による工数削減でコストを押し下げる効果も期待できる。ソフト開発の効率化に関しては、オーストラリアでのM&Aでグループに迎え入れたプラニットが行っている、ソフト開発の品質を高める第三者検証サービスが役立つ。同社はソフト開発のテスト工程を効率化する独自のノウハウを持っている会社で、まずはNRIグループ内でプラニットのフレームワークや自動化ツールを活用し、生産性を向上。将来的には第三者検証サービスとしてアジアのオフショア開発拠点や北米の顧客など外部への販売を視野に入れる。
SE稼働率については、あまりに高止まりの状態が続くと、次の成長に向けた新しい技術の習得やスキル転換に必要な時間が圧迫される弊害が懸念される。しかし、今期に関してはリモートワークで節約した時間をスキル向上にうまく活用している社員が多く見られ、「リモートワークをうまく使うことでSEの高稼働率とスキル向上を両立できる可能性が見えてきた」(此本会長兼社長)として、今後も6割程度のリモートワークを継続する。身支度や通勤にかかる時間の削減で余裕が生まれ、家事や育児介護に時間を使ったり、スキル向上のための勉強に割り当てるケースが目立った。
ただ、リモートワーク環境では業務上のコミュニケーションを効率化できる側面があるものの、それ以外の人的交流の輪が広がりにくいなど課題もある。此本会長兼社長はリモートワークと対面ワークを組み合わせた働き方改革について「まだ5合目くらいの完成度に過ぎない」とし、今後も改善に向けた研究を進めていく方針だ。
金融以外の重点領域も精力的に開拓するTIS
TISの上期(4-9月期)連結売上高は前年同期比10.9%増の2343億円、営業利益は同31.1%増の238億円で、ともに上期としては過去最高を更新した。営業利益率は初の10%超を達成している。「国内IT市場は、DXの文脈におけるIT投資が活況を呈している」(岡本安史社長)といい、国内での事業環境は良好に推移している。一方で、TISの海外ビジネスの主要進出先であるASEANではコロナ禍の影響が依然として続いており、「本格的なIT市場の回復は来年度以降になる」との見通しを示す。24年3月期までの3カ年中期経営計画の重点テーマの一つである「社会課題の解決」では、キャッシュレス決済や健康・医療、脱炭素、スマートシティなどの領域でのビジネス拡大を進めている。同領域で24年3月期までに昨年度(21年3月期)の380億円から500億円規模の売り上げに伸ばす目標を掲げる(図参照)。そのうち7割近い340億円をキャッシュレス決済など金融関連が占める見通し。

岡本社長は「金融の“一本足打法”ではなく、他の分野もしっかり育てていく」と述べ、TISがもともと強みとする決済関連以外にも、健康や脱炭素、スマートシティといった社会課題をITで解決するビジネス開拓を精力的に進めることで競争力を高めていく姿勢を強調した。

大手SIerの上期業績が好調だ。野村総合研究所(NRI)は2023年3月期までの4カ年中期経営計画で掲げた連結営業利益1000億円を1年前倒しで達成できる見通し。NTTデータは前期の足踏みから一転、今年度(22年3月期)までの3カ年中期経営計画の目標である連結売上高2兆5000億円、営業利益率8%に迫る可能性が出てきた。TISは売上高、営業利益ともに過去最高を更新している。既存システムの刷新のみならず、“DX”と呼ばれる新領域へのIT投資が顕著に増えており「旺盛なDX領域への投資は向こう数年は続く」と、NRIの此本臣吾会長兼社長は話す。大手SIerの好業績の背景をレポートする。
(取材・文/安藤章司)
通期上振れ視野、NTTデータが中計目標に迫る
NTTデータの上期(4-9月期)連結業績は前年同期比で大幅な増収増益となった。売上高、営業利益ともにすべての主要事業セグメントで増加。本間洋社長は「上期の好業績を踏まえ、通期での上振れも視野に入る」と、通期での上方修正も視野に入れている。上期の増収増益の背景には、IT投資の回復によって小幅な伸びにとどまった昨年度上期(20年4-9月期)からの反動増が挙げられる。コロナ禍が国内外で急速に深刻化した昨年度上期の売上高は前年同期比0.2%増、営業利益0.1%増だったが、今年度上期はその反動もあって売上高が同12.2%増の1兆2120億円、営業利益は同71.0%増の1091億円で着地した。海外事業における円安ドル高の為替影響も後押ししたが、その影響を除いても売上高は二桁増となった。営業利益についても、北米、EMEA(欧州・中東・アフリカ地域)の構造改革を経て稼ぐ力が高まった(図参照)。

国内は、コロナ禍の影響がまだ残っている交通、旅行、飲食などの業種を除けば、おおむねIT投資は拡大トレンドにある。なかでも、社会全体のオンライン化、デジタル化への行動変容に適応していくためのIT投資が活発化している。
例えば、国内金融機関における非対面取引の需要や、小売店舗の自動化、効率化に関する問い合わせ、行政サービスのオンライン対応の案件が増えているという。本間社長は、「金融、産業、公共のいずれの分野もオンライン化、デジタル化への対応という共通的な課題を抱えている」と、幅広い業種で変化へ適応が迫られていると話す。
とはいえ、北米やEMEA、中南米といった海外でのコロナ禍の状況はまだ読み切れない部分があるため、上期決算の発表時点では、今年度通期の売上高2兆3600億円、営業利益1800億円(営業利益率7.6%)の期初予想は据え置いた。同社は今年度までの中期経営計画で連結売上高2兆5000億円、営業利益率8%を目標に掲げており、状況次第では目標達成に迫る余地がある。
リモートと対面をうまく組み合わせ
北米では大手サービス企業から大規模なITアウトソーシング案件の3年間の契約延長を今年7月に獲得。スペインの鉄道会社からは、乗客一人一人の最適な交通手段を組み合わせて提示するMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)案件の要件定義からシステム構築、運用まで5年間の大型受注を果たしている。国内のみならず海外でも、ユーザー企業が「NTTデータグループを“デジタルパートナー”と位置づけ」(本間社長)、戦略的なIT投資案件を発注するケースが増えているという。NTTデータ自身の仕事の仕方も大きく変わった。コロナ禍期間中を通じて平均7割のリモートワークを実施。都心部オフィスが密にならないよう郊外オフィスも活用しながら分散ワークに努めてきた。その結果、「海外を含む遠隔地との時間と距離のハードルを克服する働き方があたりまえになった」(本間社長)と、グローバルでの意思疎通がより円滑になった。今後も生産性を一段と高めるべく、リモートと対面をうまく組み合わせた働き方を継続する。
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- NRIは営業利益目標を1年前倒しで達成見込み
- NRI、高まるSEの稼働率 リモートワーク完成度は「5合目」
- 金融以外の重点領域も精力的に開拓するTIS
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