――業種向けITソリューション事業の拡大に力を入れ、販売スタイルを大きく変える取り組みはどの程度進んでいるのか。
リコージャパンは、これまでの「OA機器メーカー販社」から「デジタルサービス」の会社に変わると宣言して、顧客生涯価値(LTV)を最大化する施策を打ってきた。2021年はユーザー企業の状況も、コロナ禍で急遽リモートワークに対応するなどの緊急避難的なフェーズから、業務のデジタル化と効率化を目標にIT投資の領域や深さが増すフェーズに変わった。22年は当社のデジタルサービスがより幅広いユーザー企業に受け入れられるよう、提案活動に力を入れる。
代表取締役社長執行役員CEO
坂主智弘
――具体的にはどのようなデジタルサービスが売れているか。
当社は建設や不動産、製造、医療、流通・小売りなど重点9業種と、働き方改革や情報セキュリティ、バックオフィスの重点3業務に焦点を当てたデジタルサービスを展開している。中小企業向けにはこれら業種・業務のITソリューションをパッケージ化した「スクラムパッケージ」、中堅企業向けには柔軟なカスタマイズ対応が可能な「スクラムアセット」を展開し、本年度上期(21年4-9月)は前者の売上高が前年同期比33%増の243億円、後者が29%増の103億円と大きく伸びた。
LTV最大化に向けて「進化」
――従来の複合機の稼働台数を増やす売り方と、LTV重視の売り方との違いは何か。
業種や業務の課題を聞き出し、ユーザー企業の生産性の向上や利益を増やすのに役立つことを最も重視するのがLTVのアプローチだ。うまく課題を解決できれば次の受注につながる好循環が生まれる。複合機は営業が販売し、保守部門が保守サポートを提供する分業体制だったが、LTVは営業や保守のメンバーが一つのチームとなり、導入から保守のフェーズに至るまで情報をしっかり共有し、ユーザー企業と伴走するかたちで課題を解決する。顧客との接し方そのものが大きく違う。
――22年の事業戦略で重視することは何か。
一言で表せば「進化」だ。ユーザー企業の課題を掘り下げる「深化」、真の意味でデジタルサービス会社に転換する「真化」といった漢字も当てはめられる。ほぼ100%のビジネスパートナーが、既にスクラムパッケージを売ってくれている。22年はより多くのパッケージをパートナーに売ってもらえるよう支援し、パートナーとの関係も進化させていく。
21年6月から欧州発のワークフロー「DocuWare」の全国販売も始めており、スクラムアセットの対象ユーザーを中心に販売を加速させていく。商材の幅を広げ、業種の深掘り、パートナーとの連携強化でビジネスを伸ばす。