大手パブリッククラウドベンダー各社が、スタートアップ企業の支援に揃って力を入れている。クラウドサービスの一部を無償で提供する施策が中心で、将来の有望顧客を早期に呼び込む狙いがあるが、それは単なるユーザーの囲い込み策にはとどまらない。スタートアップは近い将来のDXの担い手であり、彼らに認められることこそ高いサービス品質の証左となる。大手3社の取り組みを探る。
(取材・文/日高 彰、大蔵大輔)

 パブリッククラウドベンダー各社は大手企業の案件獲得に力を入れる一方、スタートアップ企業に対しても支援している。クラウドサービスを一定範囲で無償提供する施策が代表的だが、最近は事業開発に関するアドバイスを行うなど、支援内容のさらなる充実を図っている。収益の額では大手企業の何千、何万分の一に過ぎないスタートアップのビジネスに、クラウドベンダー各社はなぜ熱い視線を送るのか。

 その理由としては、大きな成長の可能性があるスタートアップに自社のサービスを使ってもらうことで、将来の優良顧客を早期に囲い込むという動機が考えられる。これは当然各社が意図するところだが、実際はそれだけにとどまらない。

 近年でこそ一般企業によるクラウドの活用は進んでいるが、これまでクラウド市場拡大の中心にあったのは、新しいテクノロジーに抵抗のないスタートアップ企業だった。スタートアップがクラウド市場に与える影響力や存在感はその企業規模以上に大きく、マーケティング施策的にも引き続き重視すべき対象だと言える。

 加えて、多くの企業がDXに取り組むようになり、デジタル技術の導入が活発になってきたことも背景として挙げられる。これまで大企業や公共系のユーザーは、システム構築を大手ITベンダーに全面的に依存していることが多かったが、DX推進にあたっては、ある領域に特化した技術を持つスタートアップと組んだり、素早く導入できるSaaSを活用したりするケースが増えている。DXの担い手として重要度の高まるスタートアップを支援することが、間接的に大規模ユーザーによるクラウド利用の拡大につながるというわけだ。

 このような理由から、クラウドベンダー各社はスタートアップの支援をさらに強化しており、アイデアはあっても資金や人材に限りのある事業家が、スムーズにビジネスを立ち上げられる環境を整えようとしている。今年に入ってからだけでも各社が新たな支援策を次々と発表しており、有望なスタートアップの“争奪戦”が加速している。