Special Feature
ヘルステック市場で商機を狙え パートナー戦略が重要テーマに
2023/03/27 09:00
週刊BCN 2023年03月27日vol.1962掲載
医療とITを組み合わせたヘルステックが注目されている。高齢化や企業における健康経営がクローズアップされる中、ITベンダーは商機を逃すまいとビジネスの拡大に注力しており、パートナー戦略を重要視している。医療業界は今後、大きく変わると予想されており、ビジネスチャンスはさらに広がる見通しだ。ヘルステック市場の最新動向と注目企業の戦略を紹介する。
(取材・文/袖山俊夫 編集/齋藤秀平)
EY新日本有限責任監査法人パートナーで、EY Japanの矢崎弘直・ヘルスサイエンス・アンド・ウェルネスリーダーは「底流にあるのはデジタル技術の進歩だ。センサー技術や通信技術の発達で遠隔医療が進み、新しい挑戦がしやすくなっている。さらに、健康の自己責任化も大きな流れだ。コロナ禍で患者の通院行動が変化したこともあるが、今後は個人が自らの健康を管理する時代になっていく。それをテクノロジーによってサポートしていくことがヘルステックの基本的な使命の一つになっていくだろう」とみる。
EY Japan
矢崎弘直 リーダー
果たして、ヘルステックは医療の未来を変えるのであろうか。矢崎リーダーは「大きく変わるし、変えなくてはいけない」と力を込め、「一番求められる方向性は、健康データの分析による個別化医療の推進だ。具体的には健康管理や予防。ここが一丁目一番地となる」と強調する。
こうした要因もあって、ヘルステックの市場は今後、ますます拡大していくと予想される。矢崎リーダーは「従来の医療は当然続く。そこに、デジタル医療や個別化医療、遠隔医療などと幅が広がるのに加えて、健康管理を支援するビジネスも生まれてくる。市場規模は現在の数倍になっていくだろう」との見方を示す。
これからこの領域に参入していくとすれば、何が成功のポイントとなるのか。矢崎リーダーは「いかにマネタイズするかが最も重要だ。そのためには、新しいプラットフォームをつくり上げるとしても、どの企業と組むか、どのような価値を生み出していくか、どういう人を巻き込み、いかに課金・分配していくかといった視点が大切だ」と助言する。
その上で、最終的にヘルステックビジネスにおいて勝ち組となるために必要な条件として、データ活用による新しい医薬・医療プラットフォームの実現を構想する同社のコンセプト「ライフサイエンス4.0」を挙げ、「端的に言えばライフサイエンスとデータサイエンスが融合する世界。患者やデータ中心のインテリジェントヘルスエコシステムを成立させようという考えだ」と紹介。その上で「これを実現していくためにも、ユーザーから見たヘルスケアエクスペリエンス、つまり個人に健康を実感させ、行動を変容させられる企業が勝ち組になると考えている」と語る。
ヘルステックの世界は近い将来、あるタイミングを機に一気に変わるというのが矢崎リーダーの見立てだ。「来るべき転換点に乗り遅れないためにも、今から自分たちのビジネスモデルをどうしていくかを考えておかないといけない」と提唱する。
メドレー
メドレーは、「医療ヘルスケアの未来をつくる」をミッションとして掲げ、テクノロジーを活用した事業やプロジェクトを通じて医療従事者と患者の双方が「納得できる医療」の実現を目指している。
主要な事業は二つ。一つは人材プラットフォーム事業で、医療介護求人サイト「ジョブメドレー」やオンライン動画研修サービス「ジョブメドレー アカデミー」などを展開。もう一つの医療プラットフォーム事業では、日本最大級のクラウド診療支援システム「CLINICS」や、かかりつけ薬局支援システム「Pharms」などを提供している。
このうち、医療機関に向けた「CLINICS」の普及とオンライン診療アプリの登録ユーザーとの連動性向上を目的として活動しているのが、医療プラットフォーム本部のクリニクス事業部だ。
メドレー
藤野郁也 部長
同事業部では、長年にわたり、主に医療機関へのダイレクトセールスを行ってきたが、昨年あたりからパートナーセールスを強化させている。背景について、同事業部の藤野郁也・部長は「新型コロナウイルスの感染拡大などの外部環境の変化があり、引き合いが増えてきた。加えて、当社のプロダクト自体が進化していることが大きい。価値提供の範囲を広げてトータルソリューションを提供していくことを目指しており、われわれの取り組みをしっかりと認識してもらう必要がある」と解説する。
現在、同事業部のパートナー企業について、藤野部長は「医薬品や医療機器などの卸業者やクリニックの開業から運営をサポートするコンサルティング会社、検体検査会社、ネットワーク事業会社、通信事業会社が多い」とし、「いずれも座組としては案件紹介だ。パートナーが出入りしている開業医や医療従事者を紹介してもらうという関係で、提案から販売、導入サポートは当社が行っている」と話す。
今後の戦略としては、既存のパートナー企業との関係強化と、新規パートナー企業の開拓を並行していくとのことだが、力点は前者にあるという。その理由を藤野部長は「当事業部が扱うシステムの機能が進化、アップグレードしていることをパートナー企業に理解してもらい、診療の効率化などの目的を共有できる関係性をつくり上げていきたい」と説明する。
同社は、早くからオンライン診療システムを手掛けていたこともあって、システムベンダーとしての認識が根強い。しかし、予約や問診を含めたトータルソリューションを提供できる事業体制へと進化していることを伝えきれていないことが課題だ。
藤野部長は「当事業部としては、課題の解決を模索しながら、患者がより医療機関にスムーズにアクセスできる世界をつくるとともに、医療機関での診療の効率化を引き続き目指していきたい。それに向けて、製品のアップデートや機能追加を進める。もちろん、パートナー企業との関係もより一層深めていく考えだ」と今後の展望を語る。メディカルノート
ヘルステックの領域では、続々とスタートアップが誕生している。大手企業と資本業務提携しながら、早期のIPO(新規株式公開)を目指す企業も珍しくない。メディカルノートはその一社だ。
同社は、病院以外で信頼できる医療情報が得られないという情報の非対称性に課題を感じた二人が2014年に共同創業した。以来、「すべての人が“医療”に迷わない社会へ」というミッションのもと、メディア&プラットフォーム事業と医療・ヘルスケアイノベーション事業を展開している。
いずれも主軸にあるのは、医療情報メディアとしてスタートし、医療・ヘルスケアプラットフォームに位置付けられる「Medical Note」だ。それを活用し、メディア&プラットフォーム事業では信頼できる医療情報を発信し、医療・ヘルスケアイノベーション事業では同プラットフォームフォームを利用する医療機関に向けたデジタルマーケティングやDXなどを支援している。
医療・ヘルスケアイノベーション事業の中核組織に位置づけられるのが、ホスピタルDX事業部だ。同事業部が手掛ける主要な事業について山口恵介・執行役員はこう語る。
メディカルノート
山口恵介 執行役員
「三つの柱がある。一つめは地域の医療機関同士での連携推進。具体的には、病院から市民・患者向けの情報発信や病院間の紹介・逆紹介の推進を支援している。二つめは病院に向けたDX支援。病院・クリニック間の紹介予約を効率化する地域医療連携SaaS『Medical Note Link』などのソリューションを提供している。三つめはインバウンドや自由診療への対応。日本の高度な医療を受けたい海外の方への情報提供をお手伝いしている。いずれも、今後の需要増がかなり期待できる」
Medical Noteは、医療業界からの信頼が高いメディアとなっている。協定病院や協定学会との幅広い付き合いなどが強みとなり、これまでは顧客からの引き合いを軸としたビジネスを展開してきた。
事業拡大のスピードをさらに高めるために、今後はパートナーセールスの比率を高めたいと山口執行役員は考えており、「具体的には、地方の病院と接点を持つ金融機関と先進的なIT商材を取り扱う事業会社、病院の開業・運営を支援するコンサルティング会社などとの連携を想定している」と話す。
さらに、営業面だけでなく、パートナー企業が提供するサービスとの連携にも意欲的に取り組んでいきたいとし、「自社サービスのみですべてを完結するのは難しい。パートナー企業と連携し、『Medical Note Link』の機能拡充を図っていきたい」と力説する。
同事業部が目指す今後のビジョンは、医療機関向けマーケティングのナンバーワンプレイヤーになること。その実現に向けても、パートナー企業との協力をどう進めていくかが大きなかぎになる。
壮大な市場へとスケールアップすると予想されるヘルステックビジネス。自社の優位性をいち早く確立するためにも、パートナー戦略は重要なテーマと言っていいだろう。
(取材・文/袖山俊夫 編集/齋藤秀平)

個人の健康管理が使命の一つに
ヘルステックとは、健康とテクノロジーを組み合わせた造語だ。健康に関するさまざまな課題をテクノロジーで解決していく取り組みといえる。このヘルステックの領域において、今どのような潮流があるのであろうか。EY新日本有限責任監査法人パートナーで、EY Japanの矢崎弘直・ヘルスサイエンス・アンド・ウェルネスリーダーは「底流にあるのはデジタル技術の進歩だ。センサー技術や通信技術の発達で遠隔医療が進み、新しい挑戦がしやすくなっている。さらに、健康の自己責任化も大きな流れだ。コロナ禍で患者の通院行動が変化したこともあるが、今後は個人が自らの健康を管理する時代になっていく。それをテクノロジーによってサポートしていくことがヘルステックの基本的な使命の一つになっていくだろう」とみる。
矢崎弘直 リーダー
果たして、ヘルステックは医療の未来を変えるのであろうか。矢崎リーダーは「大きく変わるし、変えなくてはいけない」と力を込め、「一番求められる方向性は、健康データの分析による個別化医療の推進だ。具体的には健康管理や予防。ここが一丁目一番地となる」と強調する。
こうした要因もあって、ヘルステックの市場は今後、ますます拡大していくと予想される。矢崎リーダーは「従来の医療は当然続く。そこに、デジタル医療や個別化医療、遠隔医療などと幅が広がるのに加えて、健康管理を支援するビジネスも生まれてくる。市場規模は現在の数倍になっていくだろう」との見方を示す。
これからこの領域に参入していくとすれば、何が成功のポイントとなるのか。矢崎リーダーは「いかにマネタイズするかが最も重要だ。そのためには、新しいプラットフォームをつくり上げるとしても、どの企業と組むか、どのような価値を生み出していくか、どういう人を巻き込み、いかに課金・分配していくかといった視点が大切だ」と助言する。
その上で、最終的にヘルステックビジネスにおいて勝ち組となるために必要な条件として、データ活用による新しい医薬・医療プラットフォームの実現を構想する同社のコンセプト「ライフサイエンス4.0」を挙げ、「端的に言えばライフサイエンスとデータサイエンスが融合する世界。患者やデータ中心のインテリジェントヘルスエコシステムを成立させようという考えだ」と紹介。その上で「これを実現していくためにも、ユーザーから見たヘルスケアエクスペリエンス、つまり個人に健康を実感させ、行動を変容させられる企業が勝ち組になると考えている」と語る。
ヘルステックの世界は近い将来、あるタイミングを機に一気に変わるというのが矢崎リーダーの見立てだ。「来るべき転換点に乗り遅れないためにも、今から自分たちのビジネスモデルをどうしていくかを考えておかないといけない」と提唱する。
メドレー
価値提供の広がりを伝えたい
メドレーは、「医療ヘルスケアの未来をつくる」をミッションとして掲げ、テクノロジーを活用した事業やプロジェクトを通じて医療従事者と患者の双方が「納得できる医療」の実現を目指している。主要な事業は二つ。一つは人材プラットフォーム事業で、医療介護求人サイト「ジョブメドレー」やオンライン動画研修サービス「ジョブメドレー アカデミー」などを展開。もう一つの医療プラットフォーム事業では、日本最大級のクラウド診療支援システム「CLINICS」や、かかりつけ薬局支援システム「Pharms」などを提供している。
このうち、医療機関に向けた「CLINICS」の普及とオンライン診療アプリの登録ユーザーとの連動性向上を目的として活動しているのが、医療プラットフォーム本部のクリニクス事業部だ。
藤野郁也 部長
同事業部では、長年にわたり、主に医療機関へのダイレクトセールスを行ってきたが、昨年あたりからパートナーセールスを強化させている。背景について、同事業部の藤野郁也・部長は「新型コロナウイルスの感染拡大などの外部環境の変化があり、引き合いが増えてきた。加えて、当社のプロダクト自体が進化していることが大きい。価値提供の範囲を広げてトータルソリューションを提供していくことを目指しており、われわれの取り組みをしっかりと認識してもらう必要がある」と解説する。
現在、同事業部のパートナー企業について、藤野部長は「医薬品や医療機器などの卸業者やクリニックの開業から運営をサポートするコンサルティング会社、検体検査会社、ネットワーク事業会社、通信事業会社が多い」とし、「いずれも座組としては案件紹介だ。パートナーが出入りしている開業医や医療従事者を紹介してもらうという関係で、提案から販売、導入サポートは当社が行っている」と話す。
今後の戦略としては、既存のパートナー企業との関係強化と、新規パートナー企業の開拓を並行していくとのことだが、力点は前者にあるという。その理由を藤野部長は「当事業部が扱うシステムの機能が進化、アップグレードしていることをパートナー企業に理解してもらい、診療の効率化などの目的を共有できる関係性をつくり上げていきたい」と説明する。
同社は、早くからオンライン診療システムを手掛けていたこともあって、システムベンダーとしての認識が根強い。しかし、予約や問診を含めたトータルソリューションを提供できる事業体制へと進化していることを伝えきれていないことが課題だ。
藤野部長は「当事業部としては、課題の解決を模索しながら、患者がより医療機関にスムーズにアクセスできる世界をつくるとともに、医療機関での診療の効率化を引き続き目指していきたい。それに向けて、製品のアップデートや機能追加を進める。もちろん、パートナー企業との関係もより一層深めていく考えだ」と今後の展望を語る。
メディカルノート
事業拡大のスピードを高めるために
ヘルステックの領域では、続々とスタートアップが誕生している。大手企業と資本業務提携しながら、早期のIPO(新規株式公開)を目指す企業も珍しくない。メディカルノートはその一社だ。同社は、病院以外で信頼できる医療情報が得られないという情報の非対称性に課題を感じた二人が2014年に共同創業した。以来、「すべての人が“医療”に迷わない社会へ」というミッションのもと、メディア&プラットフォーム事業と医療・ヘルスケアイノベーション事業を展開している。
いずれも主軸にあるのは、医療情報メディアとしてスタートし、医療・ヘルスケアプラットフォームに位置付けられる「Medical Note」だ。それを活用し、メディア&プラットフォーム事業では信頼できる医療情報を発信し、医療・ヘルスケアイノベーション事業では同プラットフォームフォームを利用する医療機関に向けたデジタルマーケティングやDXなどを支援している。
医療・ヘルスケアイノベーション事業の中核組織に位置づけられるのが、ホスピタルDX事業部だ。同事業部が手掛ける主要な事業について山口恵介・執行役員はこう語る。
山口恵介 執行役員
「三つの柱がある。一つめは地域の医療機関同士での連携推進。具体的には、病院から市民・患者向けの情報発信や病院間の紹介・逆紹介の推進を支援している。二つめは病院に向けたDX支援。病院・クリニック間の紹介予約を効率化する地域医療連携SaaS『Medical Note Link』などのソリューションを提供している。三つめはインバウンドや自由診療への対応。日本の高度な医療を受けたい海外の方への情報提供をお手伝いしている。いずれも、今後の需要増がかなり期待できる」
Medical Noteは、医療業界からの信頼が高いメディアとなっている。協定病院や協定学会との幅広い付き合いなどが強みとなり、これまでは顧客からの引き合いを軸としたビジネスを展開してきた。
事業拡大のスピードをさらに高めるために、今後はパートナーセールスの比率を高めたいと山口執行役員は考えており、「具体的には、地方の病院と接点を持つ金融機関と先進的なIT商材を取り扱う事業会社、病院の開業・運営を支援するコンサルティング会社などとの連携を想定している」と話す。
さらに、営業面だけでなく、パートナー企業が提供するサービスとの連携にも意欲的に取り組んでいきたいとし、「自社サービスのみですべてを完結するのは難しい。パートナー企業と連携し、『Medical Note Link』の機能拡充を図っていきたい」と力説する。
同事業部が目指す今後のビジョンは、医療機関向けマーケティングのナンバーワンプレイヤーになること。その実現に向けても、パートナー企業との協力をどう進めていくかが大きなかぎになる。
壮大な市場へとスケールアップすると予想されるヘルステックビジネス。自社の優位性をいち早く確立するためにも、パートナー戦略は重要なテーマと言っていいだろう。
医療とITを組み合わせたヘルステックが注目されている。高齢化や企業における健康経営がクローズアップされる中、ITベンダーは商機を逃すまいとビジネスの拡大に注力しており、パートナー戦略を重要視している。医療業界は今後、大きく変わると予想されており、ビジネスチャンスはさらに広がる見通しだ。ヘルステック市場の最新動向と注目企業の戦略を紹介する。
(取材・文/袖山俊夫 編集/齋藤秀平)
EY新日本有限責任監査法人パートナーで、EY Japanの矢崎弘直・ヘルスサイエンス・アンド・ウェルネスリーダーは「底流にあるのはデジタル技術の進歩だ。センサー技術や通信技術の発達で遠隔医療が進み、新しい挑戦がしやすくなっている。さらに、健康の自己責任化も大きな流れだ。コロナ禍で患者の通院行動が変化したこともあるが、今後は個人が自らの健康を管理する時代になっていく。それをテクノロジーによってサポートしていくことがヘルステックの基本的な使命の一つになっていくだろう」とみる。
EY Japan
矢崎弘直 リーダー
果たして、ヘルステックは医療の未来を変えるのであろうか。矢崎リーダーは「大きく変わるし、変えなくてはいけない」と力を込め、「一番求められる方向性は、健康データの分析による個別化医療の推進だ。具体的には健康管理や予防。ここが一丁目一番地となる」と強調する。
こうした要因もあって、ヘルステックの市場は今後、ますます拡大していくと予想される。矢崎リーダーは「従来の医療は当然続く。そこに、デジタル医療や個別化医療、遠隔医療などと幅が広がるのに加えて、健康管理を支援するビジネスも生まれてくる。市場規模は現在の数倍になっていくだろう」との見方を示す。
これからこの領域に参入していくとすれば、何が成功のポイントとなるのか。矢崎リーダーは「いかにマネタイズするかが最も重要だ。そのためには、新しいプラットフォームをつくり上げるとしても、どの企業と組むか、どのような価値を生み出していくか、どういう人を巻き込み、いかに課金・分配していくかといった視点が大切だ」と助言する。
その上で、最終的にヘルステックビジネスにおいて勝ち組となるために必要な条件として、データ活用による新しい医薬・医療プラットフォームの実現を構想する同社のコンセプト「ライフサイエンス4.0」を挙げ、「端的に言えばライフサイエンスとデータサイエンスが融合する世界。患者やデータ中心のインテリジェントヘルスエコシステムを成立させようという考えだ」と紹介。その上で「これを実現していくためにも、ユーザーから見たヘルスケアエクスペリエンス、つまり個人に健康を実感させ、行動を変容させられる企業が勝ち組になると考えている」と語る。
ヘルステックの世界は近い将来、あるタイミングを機に一気に変わるというのが矢崎リーダーの見立てだ。「来るべき転換点に乗り遅れないためにも、今から自分たちのビジネスモデルをどうしていくかを考えておかないといけない」と提唱する。
(取材・文/袖山俊夫 編集/齋藤秀平)

個人の健康管理が使命の一つに
ヘルステックとは、健康とテクノロジーを組み合わせた造語だ。健康に関するさまざまな課題をテクノロジーで解決していく取り組みといえる。このヘルステックの領域において、今どのような潮流があるのであろうか。EY新日本有限責任監査法人パートナーで、EY Japanの矢崎弘直・ヘルスサイエンス・アンド・ウェルネスリーダーは「底流にあるのはデジタル技術の進歩だ。センサー技術や通信技術の発達で遠隔医療が進み、新しい挑戦がしやすくなっている。さらに、健康の自己責任化も大きな流れだ。コロナ禍で患者の通院行動が変化したこともあるが、今後は個人が自らの健康を管理する時代になっていく。それをテクノロジーによってサポートしていくことがヘルステックの基本的な使命の一つになっていくだろう」とみる。
矢崎弘直 リーダー
果たして、ヘルステックは医療の未来を変えるのであろうか。矢崎リーダーは「大きく変わるし、変えなくてはいけない」と力を込め、「一番求められる方向性は、健康データの分析による個別化医療の推進だ。具体的には健康管理や予防。ここが一丁目一番地となる」と強調する。
こうした要因もあって、ヘルステックの市場は今後、ますます拡大していくと予想される。矢崎リーダーは「従来の医療は当然続く。そこに、デジタル医療や個別化医療、遠隔医療などと幅が広がるのに加えて、健康管理を支援するビジネスも生まれてくる。市場規模は現在の数倍になっていくだろう」との見方を示す。
これからこの領域に参入していくとすれば、何が成功のポイントとなるのか。矢崎リーダーは「いかにマネタイズするかが最も重要だ。そのためには、新しいプラットフォームをつくり上げるとしても、どの企業と組むか、どのような価値を生み出していくか、どういう人を巻き込み、いかに課金・分配していくかといった視点が大切だ」と助言する。
その上で、最終的にヘルステックビジネスにおいて勝ち組となるために必要な条件として、データ活用による新しい医薬・医療プラットフォームの実現を構想する同社のコンセプト「ライフサイエンス4.0」を挙げ、「端的に言えばライフサイエンスとデータサイエンスが融合する世界。患者やデータ中心のインテリジェントヘルスエコシステムを成立させようという考えだ」と紹介。その上で「これを実現していくためにも、ユーザーから見たヘルスケアエクスペリエンス、つまり個人に健康を実感させ、行動を変容させられる企業が勝ち組になると考えている」と語る。
ヘルステックの世界は近い将来、あるタイミングを機に一気に変わるというのが矢崎リーダーの見立てだ。「来るべき転換点に乗り遅れないためにも、今から自分たちのビジネスモデルをどうしていくかを考えておかないといけない」と提唱する。
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