Special Feature
米Oracle クラウド型ERPの未来はAI活用にあり 年次イベント「SuiteWorld 2023」を開催
2023/11/09 09:00
週刊BCN 2023年11月06日vol.1991掲載
【米ラスベガス発】米Oracle(オラクル)はクラウド型ERP「NetSuite」の年次イベント「SuiteWorld 2023」を、米ラスベガスで10月16日から19日(現地時間)に開催した。同製品はクラウド型ERPの先駆的な存在であり、今年で25周年を迎えた。次の25年の成長に向けた戦略として、生成AIをはじめとするAI技術を活用することで、ERP内に蓄積されたデータを企業活動におけるあらゆる業務で活用し、組織の生産性の向上を支援するとした。
(取材・文/大畑直悠)
NetSuiteの創業者で、現在も同事業のトップを務めるエバン・ゴールドバーグ・EVP(エグゼクティブバイスプレジデント)は「あらゆる企業は効率性が高い経営を求められている。(NetSuiteは)25年間、一貫して顧客がより少ない労力でより多くのことを達成できるように製品を強化してきた」と強調。その上で、今後の成長に向けて重視する機能強化の方向性として、NetSuite全体に生成AIやAIを組み込むことで顧客のビジネスプロセスの自動化を推進する考えを示した。
エバン・ゴールドバーグ EVP
ゴールドバーグEVPはAI活用の考え方として「副操縦士のような後付けのものとは考えていない。顧客がNetSuiteの機能を使う際に、いたるところでAIがサポートし、業務を支援する。企業が持つ固有のデータを活用して最適な文脈で、最適な価値を届けるだろう」と語った。
目玉の新機能として発表されたのが、「NetSuite Text Enhance」だ。財務・会計や購買、営業・マーケティング、人事、カスタマーサポートといった、NetSuiteがカバーする全ての業務領域で生成AIを活用した業務効率化を図るもので、例えば営業部門では、自社の製品やサービスに興味を示す見込み顧客に対し、NetSuite内に蓄積された最新の製品説明やキャンペーン情報、製品画像、価格情報、在庫状況、配送詳細に加え、CRM機能内の顧客情報などからEメールのテキストを自動生成する。
「ChatGPT」が話題となって以降、多くの業務アプリケーションベンダーが自社製品への生成AIの導入に動いているが、NetSuiteは他社に対する優位性の一つとして、オラクルのクラウド基盤である「Oracle Cloud Infrastructure(OCI)」をフル活用できる地位にあることを挙げる。OCIでは、NVIDIAのGPUを搭載したベアメタル・コンピュートと、コンピューター同士を高速に接続するネットワーク技術であるRDMAを備える「OCI Supercluster」によって、コストを低減しつつ優れたパフォーマンスでAIモデルのトレーニングができるからだ。
米Cohere マーティン・コン プレジデント兼COO
また、オラクルは法人向けのAI技術を開発するスタートアップの米Cohere(コヒア)に大きな出資をしている。NetSuiteも、コヒアとのパートナーシップにより、各企業の学習データが外部に漏えいしない仕組みを取っている。講演に登壇したコヒアのマーティン・コン・プレジデント兼COOは、「生成AIには誤った情報を確からしく答えるという課題がある。今後のよりよいAI活用のためには、NetSuiteから適切かつ最新の正確な情報を、セキュアなデータから取り出す必要があるだろう」と話した上で、「NetSuiteの顧客により良いインテリジェントを与えることで、経営を支援していきたい。これからもNetSuiteと協力し、ともに成長していきたい」と語り、今後の両社の関係に期待を寄せた。
ゲイリー・ヴィーシンガー SVP
NetSuiteにおいてAIの効果が最大限発揮されるのは、「Suiteness」という思想に基づいて製品設計されているからだ。ゲイリー・ ヴィーシンガー・SVP(シニアバイスプレジデント)・NetSuite application developmentは、Suitenessという考え方について「複雑で相互依存したワークフローから構成されるビジネスにおいて、部門の隔たりに関係なく一体となって働けるように、一つの統一されたシステムを提供することで、顧客のビジネスを最適にすることだ」と説明した。
NetSuiteはさまざまな部門のワークフローやデータベースが一つのシステム上で作動しており、一元管理されている。そのため、例えばサプライチェーン部門で製品供給に問題があった場合、その記録は他部門が使うセールスや顧客管理のシステムのデータとも統合されているため、顧客との関係性や、製品提供を最適化できる。また、購買や営業、サプライチェーンなどの情報が財務システムにも取り込まれるため、財務部門によるキャッシュフローの予測がより正確になる。
ヴィーシンガーSVPは「Suitenessは革新的な考え方で、他部門の状況を踏まえながら、人事部門が採用の判断をしたり、マーケティング部門がキャンペーンなどの戦略を容易に立てたりできるようになる。そうした統合されたデータの中心にAIが立つことで、顧客のビジネス全体に即した、より有益な予測や自動化を提供可能になる。AIはSuitenessと組み合わさることで、顧客のニーズに寄り添い、最適化された素晴らしいものになるだろう」とアピールした。
イベントではNetSuiteを活用する代表的な顧客事例として、前出のコヒアが紹介された。オラクルのテクノロジーパートナーでもある同社は、19年にAIを開発するスタートアップとして設立。現在は米ニューヨーク、英ロンドンといった複数の拠点に200人以上の従業員を擁する企業に急成長している。
コヒアは事業全体の財務・会計プロセスを効率化するため、グローバル経営管理システム「NetSuite OneWorld」を活用。リアルタイムの通貨換算機能や、国や地域ごとの税制や法的なコンプライアンスへの対応に加え、拠点ごとの財務報告を統合することで子会社の管理を効率化させている。
また、イベント会期中には大型の導入事例として、高級靴ブランドの英Manolo Blahnik(マノロ・ブラニク)、レストランチェーンの米TGI Fridays(TGIフライデーズ)によるNetSuiteの導入がアナウンスされた。世界各地で販売活動を行うマノロ・ブラニクは、グローバルで300店舗を超えるまで事業が拡大したことで、業務・業績の可視化が課題となっていた。NetSuiteを導入することで倉庫管理と配送プロセスの最適化、財務とサプライチェーンの統合、意思決定に必要な洞察へのアクセスなどを手に入れることができたとしている。50カ国でレストランを展開するTGIフライデーズも、NetSuiteを導入して財務プロセスを統合。キャッシュフローの改善、経理業務の自動化、意思決定の精度向上といった効果を得たという。
日本オラクル 渋谷由貴 NetSuite事業統括 日本代表カントリー マネージャー
財務・会計機能のローカライズは日本向けにも進められており、インボイス制度や電子帳簿保存法のほか、消費税に関する事務処理のワークフローなどに対応している。24年度以降に追加する機能としては、銀行口座の明細連携機能「Bank Feeds」で、日本の金融機関向けにモジュールをリリースする。デジタルインボイスを送受信する機能に、日本でも利用される電子書類の国際規格Peppolに準拠した、日本版のテンプレートを提供する。また、手形管理機能「Enhancing Tegata」を強化し、他国の要件にも対応できるようにする。イベントに参加した、7月にNetSuite事業統括日本代表カントリーマネージャーに就任した日本オラクルの渋谷由貴・VP(バイスプレジデント)は、「日本は常に重要な市場に位置付けられている」と強調した。
また、日本市場での今後の拡販に向けた戦略を示し、パートナーエコシステムの強化により、販売チャネルの拡大に注力するとした。現在、主要なパートナーとして、トランスコスモス、イメージ情報システム、テクノスジャパンとパートナーシップ契約を結んでおり、8月にはSB C&Sとディストリビューター契約を取り交わしている。今後もリセラーを通じて中小企業にも多くのタッチポイントを持つディストリビューターとの協業を強化する戦略を進める。また、トレーニングなどを通じてパートナーのビジネスに伴走する部隊を立ち上げたことも明かした。
販売ターゲットとしては、NetSuiteのメインターゲットである中堅・中小企業に加え、高成長を示す大企業の子会社や部門での導入も視野に入れる。製造業や卸売り、ハイテクといった産業を軸に幅広い業界での導入を進める。
また、拡販を進める上では、「SuiteSuccess」という導入方法論を重視する。これは業界固有の機能要件や初期設計のテンプレートを用意するもので、短期での導入が可能になることに加え、これまでERPの実装にはあまり関わってこなかったパートナーでも導入が容易になる。渋谷VPは「SuiteSuccessにより、スピーディーな提供が可能であることをパートナーとともに周知していきたい」と意気込んだ。
渋谷VPは「競合である外資のERPベンダーや国産のアプリケーションベンダーに対して、認知度はまだまだ低い。エンドユーザーが日頃信頼しているパートナーを通じてNetSuiteの提供価値を広げていきたい」と今後の展望を語り、国内市場でのプレゼンスを高めていきたい考えだ。
(取材・文/大畑直悠)

生成AIを全ての業務領域に適用
NetSuiteは1998年に提供が開始され、クラウド技術を駆使したERPの先駆的な存在である。2016年にオラクルによって買収された後も、独立したかたちで事業を継続しており、オラクルの技術を生かしながら機能強化を進めている。中堅・中小企業、スタートアップといった成長企業が主なターゲットで、顧客数はオラクルによる買収前の1万1000社から、現在では3万7000社以上に伸ばし、24年度第1四半期(23年6~8月)は、前年同期比21%の高成長を果たしている。NetSuiteの創業者で、現在も同事業のトップを務めるエバン・ゴールドバーグ・EVP(エグゼクティブバイスプレジデント)は「あらゆる企業は効率性が高い経営を求められている。(NetSuiteは)25年間、一貫して顧客がより少ない労力でより多くのことを達成できるように製品を強化してきた」と強調。その上で、今後の成長に向けて重視する機能強化の方向性として、NetSuite全体に生成AIやAIを組み込むことで顧客のビジネスプロセスの自動化を推進する考えを示した。
ゴールドバーグEVPはAI活用の考え方として「副操縦士のような後付けのものとは考えていない。顧客がNetSuiteの機能を使う際に、いたるところでAIがサポートし、業務を支援する。企業が持つ固有のデータを活用して最適な文脈で、最適な価値を届けるだろう」と語った。
目玉の新機能として発表されたのが、「NetSuite Text Enhance」だ。財務・会計や購買、営業・マーケティング、人事、カスタマーサポートといった、NetSuiteがカバーする全ての業務領域で生成AIを活用した業務効率化を図るもので、例えば営業部門では、自社の製品やサービスに興味を示す見込み顧客に対し、NetSuite内に蓄積された最新の製品説明やキャンペーン情報、製品画像、価格情報、在庫状況、配送詳細に加え、CRM機能内の顧客情報などからEメールのテキストを自動生成する。
「ChatGPT」が話題となって以降、多くの業務アプリケーションベンダーが自社製品への生成AIの導入に動いているが、NetSuiteは他社に対する優位性の一つとして、オラクルのクラウド基盤である「Oracle Cloud Infrastructure(OCI)」をフル活用できる地位にあることを挙げる。OCIでは、NVIDIAのGPUを搭載したベアメタル・コンピュートと、コンピューター同士を高速に接続するネットワーク技術であるRDMAを備える「OCI Supercluster」によって、コストを低減しつつ優れたパフォーマンスでAIモデルのトレーニングができるからだ。
また、オラクルは法人向けのAI技術を開発するスタートアップの米Cohere(コヒア)に大きな出資をしている。NetSuiteも、コヒアとのパートナーシップにより、各企業の学習データが外部に漏えいしない仕組みを取っている。講演に登壇したコヒアのマーティン・コン・プレジデント兼COOは、「生成AIには誤った情報を確からしく答えるという課題がある。今後のよりよいAI活用のためには、NetSuiteから適切かつ最新の正確な情報を、セキュアなデータから取り出す必要があるだろう」と話した上で、「NetSuiteの顧客により良いインテリジェントを与えることで、経営を支援していきたい。これからもNetSuiteと協力し、ともに成長していきたい」と語り、今後の両社の関係に期待を寄せた。
効果を引き出す「Suiteness」
Netsuiteは、早くからAI技術の活用に取り組んでおり、80もの機能にAIが組み込まれている。今回のイベントでも、顧客の動きを可視化しインサイトを提供する「NetSuite Analytics Warehouse」や、主要な業務・財務の指標を分析し、自社のパフォーマンスを同じ業界や地域の類似組織と比較した上で次にとるべきアクションを推奨する「NetSuite Benchmark 360」を発表。そのほかにも顧客の意思決定を支援するAIの新機能を多数アナウンスした。
NetSuiteにおいてAIの効果が最大限発揮されるのは、「Suiteness」という思想に基づいて製品設計されているからだ。ゲイリー・ ヴィーシンガー・SVP(シニアバイスプレジデント)・NetSuite application developmentは、Suitenessという考え方について「複雑で相互依存したワークフローから構成されるビジネスにおいて、部門の隔たりに関係なく一体となって働けるように、一つの統一されたシステムを提供することで、顧客のビジネスを最適にすることだ」と説明した。
NetSuiteはさまざまな部門のワークフローやデータベースが一つのシステム上で作動しており、一元管理されている。そのため、例えばサプライチェーン部門で製品供給に問題があった場合、その記録は他部門が使うセールスや顧客管理のシステムのデータとも統合されているため、顧客との関係性や、製品提供を最適化できる。また、購買や営業、サプライチェーンなどの情報が財務システムにも取り込まれるため、財務部門によるキャッシュフローの予測がより正確になる。
ヴィーシンガーSVPは「Suitenessは革新的な考え方で、他部門の状況を踏まえながら、人事部門が採用の判断をしたり、マーケティング部門がキャンペーンなどの戦略を容易に立てたりできるようになる。そうした統合されたデータの中心にAIが立つことで、顧客のビジネス全体に即した、より有益な予測や自動化を提供可能になる。AIはSuitenessと組み合わさることで、顧客のニーズに寄り添い、最適化された素晴らしいものになるだろう」とアピールした。
グローバルの成長企業を支援
NetSuiteは中堅・中小企業を主な販売ターゲットとしているが、中でも急激に事業を拡大する成長企業やグローバルでビジネスを展開する企業にマッチする機能を備えており、地域ごとのローカライズにも力を入れている。イベントではNetSuiteを活用する代表的な顧客事例として、前出のコヒアが紹介された。オラクルのテクノロジーパートナーでもある同社は、19年にAIを開発するスタートアップとして設立。現在は米ニューヨーク、英ロンドンといった複数の拠点に200人以上の従業員を擁する企業に急成長している。
コヒアは事業全体の財務・会計プロセスを効率化するため、グローバル経営管理システム「NetSuite OneWorld」を活用。リアルタイムの通貨換算機能や、国や地域ごとの税制や法的なコンプライアンスへの対応に加え、拠点ごとの財務報告を統合することで子会社の管理を効率化させている。
また、イベント会期中には大型の導入事例として、高級靴ブランドの英Manolo Blahnik(マノロ・ブラニク)、レストランチェーンの米TGI Fridays(TGIフライデーズ)によるNetSuiteの導入がアナウンスされた。世界各地で販売活動を行うマノロ・ブラニクは、グローバルで300店舗を超えるまで事業が拡大したことで、業務・業績の可視化が課題となっていた。NetSuiteを導入することで倉庫管理と配送プロセスの最適化、財務とサプライチェーンの統合、意思決定に必要な洞察へのアクセスなどを手に入れることができたとしている。50カ国でレストランを展開するTGIフライデーズも、NetSuiteを導入して財務プロセスを統合。キャッシュフローの改善、経理業務の自動化、意思決定の精度向上といった効果を得たという。
財務・会計機能のローカライズは日本向けにも進められており、インボイス制度や電子帳簿保存法のほか、消費税に関する事務処理のワークフローなどに対応している。24年度以降に追加する機能としては、銀行口座の明細連携機能「Bank Feeds」で、日本の金融機関向けにモジュールをリリースする。デジタルインボイスを送受信する機能に、日本でも利用される電子書類の国際規格Peppolに準拠した、日本版のテンプレートを提供する。また、手形管理機能「Enhancing Tegata」を強化し、他国の要件にも対応できるようにする。イベントに参加した、7月にNetSuite事業統括日本代表カントリーマネージャーに就任した日本オラクルの渋谷由貴・VP(バイスプレジデント)は、「日本は常に重要な市場に位置付けられている」と強調した。
また、日本市場での今後の拡販に向けた戦略を示し、パートナーエコシステムの強化により、販売チャネルの拡大に注力するとした。現在、主要なパートナーとして、トランスコスモス、イメージ情報システム、テクノスジャパンとパートナーシップ契約を結んでおり、8月にはSB C&Sとディストリビューター契約を取り交わしている。今後もリセラーを通じて中小企業にも多くのタッチポイントを持つディストリビューターとの協業を強化する戦略を進める。また、トレーニングなどを通じてパートナーのビジネスに伴走する部隊を立ち上げたことも明かした。
販売ターゲットとしては、NetSuiteのメインターゲットである中堅・中小企業に加え、高成長を示す大企業の子会社や部門での導入も視野に入れる。製造業や卸売り、ハイテクといった産業を軸に幅広い業界での導入を進める。
また、拡販を進める上では、「SuiteSuccess」という導入方法論を重視する。これは業界固有の機能要件や初期設計のテンプレートを用意するもので、短期での導入が可能になることに加え、これまでERPの実装にはあまり関わってこなかったパートナーでも導入が容易になる。渋谷VPは「SuiteSuccessにより、スピーディーな提供が可能であることをパートナーとともに周知していきたい」と意気込んだ。
渋谷VPは「競合である外資のERPベンダーや国産のアプリケーションベンダーに対して、認知度はまだまだ低い。エンドユーザーが日頃信頼しているパートナーを通じてNetSuiteの提供価値を広げていきたい」と今後の展望を語り、国内市場でのプレゼンスを高めていきたい考えだ。
【米ラスベガス発】米Oracle(オラクル)はクラウド型ERP「NetSuite」の年次イベント「SuiteWorld 2023」を、米ラスベガスで10月16日から19日(現地時間)に開催した。同製品はクラウド型ERPの先駆的な存在であり、今年で25周年を迎えた。次の25年の成長に向けた戦略として、生成AIをはじめとするAI技術を活用することで、ERP内に蓄積されたデータを企業活動におけるあらゆる業務で活用し、組織の生産性の向上を支援するとした。
(取材・文/大畑直悠)
NetSuiteの創業者で、現在も同事業のトップを務めるエバン・ゴールドバーグ・EVP(エグゼクティブバイスプレジデント)は「あらゆる企業は効率性が高い経営を求められている。(NetSuiteは)25年間、一貫して顧客がより少ない労力でより多くのことを達成できるように製品を強化してきた」と強調。その上で、今後の成長に向けて重視する機能強化の方向性として、NetSuite全体に生成AIやAIを組み込むことで顧客のビジネスプロセスの自動化を推進する考えを示した。
エバン・ゴールドバーグ EVP
ゴールドバーグEVPはAI活用の考え方として「副操縦士のような後付けのものとは考えていない。顧客がNetSuiteの機能を使う際に、いたるところでAIがサポートし、業務を支援する。企業が持つ固有のデータを活用して最適な文脈で、最適な価値を届けるだろう」と語った。
目玉の新機能として発表されたのが、「NetSuite Text Enhance」だ。財務・会計や購買、営業・マーケティング、人事、カスタマーサポートといった、NetSuiteがカバーする全ての業務領域で生成AIを活用した業務効率化を図るもので、例えば営業部門では、自社の製品やサービスに興味を示す見込み顧客に対し、NetSuite内に蓄積された最新の製品説明やキャンペーン情報、製品画像、価格情報、在庫状況、配送詳細に加え、CRM機能内の顧客情報などからEメールのテキストを自動生成する。
「ChatGPT」が話題となって以降、多くの業務アプリケーションベンダーが自社製品への生成AIの導入に動いているが、NetSuiteは他社に対する優位性の一つとして、オラクルのクラウド基盤である「Oracle Cloud Infrastructure(OCI)」をフル活用できる地位にあることを挙げる。OCIでは、NVIDIAのGPUを搭載したベアメタル・コンピュートと、コンピューター同士を高速に接続するネットワーク技術であるRDMAを備える「OCI Supercluster」によって、コストを低減しつつ優れたパフォーマンスでAIモデルのトレーニングができるからだ。
米Cohere マーティン・コン プレジデント兼COO
また、オラクルは法人向けのAI技術を開発するスタートアップの米Cohere(コヒア)に大きな出資をしている。NetSuiteも、コヒアとのパートナーシップにより、各企業の学習データが外部に漏えいしない仕組みを取っている。講演に登壇したコヒアのマーティン・コン・プレジデント兼COOは、「生成AIには誤った情報を確からしく答えるという課題がある。今後のよりよいAI活用のためには、NetSuiteから適切かつ最新の正確な情報を、セキュアなデータから取り出す必要があるだろう」と話した上で、「NetSuiteの顧客により良いインテリジェントを与えることで、経営を支援していきたい。これからもNetSuiteと協力し、ともに成長していきたい」と語り、今後の両社の関係に期待を寄せた。
(取材・文/大畑直悠)

生成AIを全ての業務領域に適用
NetSuiteは1998年に提供が開始され、クラウド技術を駆使したERPの先駆的な存在である。2016年にオラクルによって買収された後も、独立したかたちで事業を継続しており、オラクルの技術を生かしながら機能強化を進めている。中堅・中小企業、スタートアップといった成長企業が主なターゲットで、顧客数はオラクルによる買収前の1万1000社から、現在では3万7000社以上に伸ばし、24年度第1四半期(23年6~8月)は、前年同期比21%の高成長を果たしている。NetSuiteの創業者で、現在も同事業のトップを務めるエバン・ゴールドバーグ・EVP(エグゼクティブバイスプレジデント)は「あらゆる企業は効率性が高い経営を求められている。(NetSuiteは)25年間、一貫して顧客がより少ない労力でより多くのことを達成できるように製品を強化してきた」と強調。その上で、今後の成長に向けて重視する機能強化の方向性として、NetSuite全体に生成AIやAIを組み込むことで顧客のビジネスプロセスの自動化を推進する考えを示した。
ゴールドバーグEVPはAI活用の考え方として「副操縦士のような後付けのものとは考えていない。顧客がNetSuiteの機能を使う際に、いたるところでAIがサポートし、業務を支援する。企業が持つ固有のデータを活用して最適な文脈で、最適な価値を届けるだろう」と語った。
目玉の新機能として発表されたのが、「NetSuite Text Enhance」だ。財務・会計や購買、営業・マーケティング、人事、カスタマーサポートといった、NetSuiteがカバーする全ての業務領域で生成AIを活用した業務効率化を図るもので、例えば営業部門では、自社の製品やサービスに興味を示す見込み顧客に対し、NetSuite内に蓄積された最新の製品説明やキャンペーン情報、製品画像、価格情報、在庫状況、配送詳細に加え、CRM機能内の顧客情報などからEメールのテキストを自動生成する。
「ChatGPT」が話題となって以降、多くの業務アプリケーションベンダーが自社製品への生成AIの導入に動いているが、NetSuiteは他社に対する優位性の一つとして、オラクルのクラウド基盤である「Oracle Cloud Infrastructure(OCI)」をフル活用できる地位にあることを挙げる。OCIでは、NVIDIAのGPUを搭載したベアメタル・コンピュートと、コンピューター同士を高速に接続するネットワーク技術であるRDMAを備える「OCI Supercluster」によって、コストを低減しつつ優れたパフォーマンスでAIモデルのトレーニングができるからだ。
また、オラクルは法人向けのAI技術を開発するスタートアップの米Cohere(コヒア)に大きな出資をしている。NetSuiteも、コヒアとのパートナーシップにより、各企業の学習データが外部に漏えいしない仕組みを取っている。講演に登壇したコヒアのマーティン・コン・プレジデント兼COOは、「生成AIには誤った情報を確からしく答えるという課題がある。今後のよりよいAI活用のためには、NetSuiteから適切かつ最新の正確な情報を、セキュアなデータから取り出す必要があるだろう」と話した上で、「NetSuiteの顧客により良いインテリジェントを与えることで、経営を支援していきたい。これからもNetSuiteと協力し、ともに成長していきたい」と語り、今後の両社の関係に期待を寄せた。
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- 効果を引き出す「Suiteness」
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