Special Feature

主要SIer上期決算 国内の旺盛なIT投資に支えられる 北米市場の失速感に懸念あり

2023/11/13 09:00

週刊BCN 2023年11月13日vol.1992掲載

 SIer大手3社の2023年度上期(23年4~9月)業績は、国内の旺盛なIT投資に支えられて増収増益の好調な決算となった。NTTデータグループは一連の海外事業の再編を受けて、海外売上高が前年同期比で倍増。野村総合研究所(NRI)の上期業績は予想を上回る着地となり、本年度(24年3月期)の通期業績予想を上方修正している。だが、両社とも北米市場のIT投資の減速によるマイナス影響が顕在化し、海外事業に懸念が残る結果となった。TISは個別SIに依存した収益構造から継続して収益を得られるリカーリング型への転換を引き続き推し進めていく。
(取材・文/安藤章司)
 

NTTデータグループ
グループ再編で海外売上高が倍増

 NTTデータグループの上期業績は、英国に拠点を置くNTT Limited(NTTリミテッド)が昨年10月に傘下に入ったことや、国内や欧州の事業が好調に推移したことで、連結売上高が前年同期比51.6%増の2兆785億円、営業利益が同12.9%増の1218億円と大幅な増収増益となった。

 国内事業の売上高は、公共や金融、法人の主要な事業セグメントで増収だったことを受けて前年同期比7.5%増の8228億円に伸びた。営業利益も増収効果が後押しして4.3%増の800億円となった。海外事業の売上高は、NTTリミテッドが連結された影響で前年同期比103.5%増の1兆2729億円と倍増している。
 
NTTデータグループ 本間 洋 社長

 しかし、北米市場のIT投資の勢いが鈍っていることが影響して、NTTリミテッドを除く北米での既存事業ベースの売上高は、前年同期比1.8%減の2874億円と微減となった。円安による為替影響で144億円のプラス効果があったにも関わらず減収となった背景について、NTTデータグループの本間洋社長は「ユーザー企業のIT投資の意思決定の先送りや大型案件の期ずれが継続して発生している」と指摘。金利上昇などが逆風となり、北米のユーザー企業は総じてビジネスの成長に対して慎重な姿勢を崩していないと分析している。

 一方で、欧州市場でNTTリミテッドを除く既存事業ベースの売上高は、前年同期比19.4%増の3885億円と好調に推移。金額ベースの伸び幅の631億円のうち372億円は円安によるプラス効果が働いたものの、構造改革の成果もあって「欧州事業そのものが好調に推移している」(本間社長)としている。

 データセンター(DC)事業やネットワーク構築などを手がけるNTTリミテッドでは、DC整備に通期で3500億円を投資し、通期EBITDA(金利、税金、償却前利益)810億円を見込む。本間社長は「生成AIの需要増でサーバー台数やデータ流通量が2割増しで増える見通し」と、DC需要増を見込んで投資を続ける構え。27年度までに総額1兆5000億円を投資し、EBITDAで1800億円の収益を見込む。NTTリミテッドと連携したグループ相乗効果も出始めており、昨年度下期のNTTデータの既存のSI事業との連携ビジネスは200億円余りだったが、「この上期はすでに500億円を超えている」(本間社長)と手応えを感じている。

 国内の事業環境は良好であることに加え、欧州市場での売り上げも伸びていることから、北米事業の伸び悩みをカバーしつつ、通期業績目標である連結売上高4兆1000億円、営業利益2920億円の達成は可能とみている。
この記事の続き >>
  • 野村総合研究所(NRI) 年商7000億円の大台に乗る見通し
  • 北米事業会社の組織再編を視野
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