Special Feature
ノーコードから始まる自治体DX パートナーに生まれる商機とは
2024/04/11 09:00
週刊BCN 2024年04月08日vol.2009掲載
自治体でノーコードツールの存在感が高まっている。IT知識が少ない行政職員でも、それぞれが抱える課題に応じて、低コストで素早くアプリケーションを開発できることから、現場起点のデジタル化技術として徐々に広まりつつあるようだ。果たして、ノーコードツールは自治体DX実現への足掛かりとなるか。そして、自治体を支えるSIerなどのパートナーはいかに商機を見出すことができるだろうか。「ノーコード宣言シティー」プログラムなどを通じて、自治体のノーコード習得を後押しするノーコード推進協会(NCPA)、プログラムに参画する静岡県伊豆市とそのパートナー企業の取り組みから、未来を考える。
(取材・文/藤岡 堯)
NCPA 中山五輪男 代表理事
NCPAの中山五輪男・代表理事(アステリアCXO=最高変革責任者・ノーコード変革推進室室長・首席エバンジェリスト)は自治体がノーコードツールを活用する意義について「デジタルを起点に課題を解決できる能力が身につく」と強調する。
近年、行政に求められる役割は高度化・複雑化の一途をたどる。一方で、人材や資金といったリソースは不足しており、多様な住民ニーズに対応するために、デジタルによる生産性の改善は急務となっている。ノーコードツールは現場が直面する小さな悩みに対して、自分たちの手でつくったアプリケーションによって、それを解消できる効果的な手段となりうる。中山代表理事は「自分たちで(アプリの)改善点を見つけ、すぐに直せる」点が強みだと語る。
デジタルへの理解が深まることは、単純にアプリ開発のスキルを得られるだけでなく、外部にシステム開発を依頼する場合でも役立つ。自分たちができる分と、外部に任せたい部分の切り出しが可能となり「すべてを外にお願いして作ってもらう必要がなくなり、無駄な費用を抑えることができる」(中山代表理事)。
もちろん、ノーコードとはいえ、自治体が最初からスムーズに開発ができるわけではない。ノーコード宣言シティープログラムに加わった自治体は、職員向けの勉強会や、NCPAに属する「支援パートナー企業」による伴走サービスの提供といった支援が受けられる。スムーズな立ち上げにはパートナーの存在は不可欠であり、NCPAではパートナーになりうる企業の協会参加を積極的に呼びかけている。中山代表理事は「プロコードを理解し、一気通貫で面倒を見ることができる企業が必要になる」と強調する。
ノーコード宣言シティープログラムは「売る機会」を提供する場としての役割もあるとの考えで、地域の自治体の実情に通じたローカルIT企業の参画にも期待を寄せる。パートナーとして動く中で、自治体との関わりが深まり、より高度な開発案件を受けられる機会もあると指摘する。
宣言した自治体同士のコミュニティーも活性化しており、互いの体験やノウハウの共有、悩みの相談などに役立てているという。中山代表理事はノーコード宣言シティープログラムの活動がさらに盛り上がることで「小さな自治体の開発事例を通じて『自分たちでもできるんじゃないか』と思う自治体が広がってほしい」と話す。
NCPAの会員になった自治体に向けては、24年3月に開始した「NCPA認定ノーコードパスポート」の初級レベルに当たる「サファイア」の受験費用を減免するなどの施策を展開する方針だ。認定には、NCPA所属団体が提供する「ノーコードパスポート認定講座」の受講が要件の一つとなっている。同講座にはハンズオンも盛り込まれており、中山代表理事は「簡単にアプリがつくれたという体験が人を成長させる。『食わず嫌い』で嫌厭する人もいるため、実際につくる機会を増やしたい」と意気込む。
伊豆市 中村祥子 CIO補佐官
現状では施設使用許可、補助金関連といった申請系のアプリが中心で、バックエンドの処理の自動化を図っている。これまでは紙に書かれた内容を職員が入力する必要があったが、作業の削減につながっているという。ただ、始まったばかりの段階であり「まだまだこれから」(中村CIO補佐官)といったところだ。
ノーコードなどを活用する最大の目的はやはり業務の効率化である。伊豆市もまた人的、予算的なリソースは厳しい状況が続いている。システムでもできることを人が手掛けている状態も続いており、中村CIO補佐官は「自動化によって、これまで(業務に)かかっていた時間を、市民に対面する時間に変えたい。その時間を生み出す一つの道具として使いたい」と述べる。
現場に運用が委ねられている業務の大半は規模が小さく、費用対効果を考えると外部による大掛かりなシステム化は難しい。にもかかわらず、職員1人当たりの作業時間をみると、無視できない分量となる。こういった業務こそノーコードツールの出番というわけだ。利用の促進は簡単ではないが、小さな成功事例を積み重ね、それを横展開して、庁内の開発をより活発にしたいという。
ノーコード宣言シティープログラムに関しては、地方にいると得にくい情報を外部ベンダーから提供してもらえることや、参画自治体との交流などの点で有益だとする。
NCPA側のパートナーとして伊豆市を支えているのが、キーウェアソリューションズのDX推進コンサルティング本部の佐藤貴憲・首席エバンジェリストだ。セミナーの講師や、ハンズオンのサポートを手掛けるほか、職員による発表会のコメンテイターなども務めている。佐藤首席エバンジェリストは他の自治体のパートナーとしても活動しており「自治体職員の皆さんは、一般企業よりもさらに業務改善への意識が高い。一生懸命にどうしたら住民サービスがよくなるかを考えており、協会としてもその点を支援することが重要だ」と手応えを示す。行政職員はITへの理解が浅いため、システムを開発する上で抑えるべき勘所や作法から外れたアプリをつくることも少なくない。ITのスペシャリストであるパートナーはこういった場合に適切な助言を送り、アプリのクオリティを高める役割も担う。
キーウェアソリューションズ 佐藤貴憲 首席エバンジェリスト
中村CIO補佐官も「職員だけではなく、地域の企業にもノーコードツールを使っていただき、利益を上げられる状況をつくってほしい」と展望する。行政側としても、経済が活性化すれば税収増なども見込め、効果は庁内の業務改善だけにとどまらないといえる。
佐藤首席エバンジェリストは、ノーコードツールが自治体における業務プラットフォームの一つになりうるとの見方を示す。行政はときに「縦割り」とも呼ばれるように、部署をまたいだ連携に課題があるとの声も多い。ノーコードツールそのものは業務内容に関わらず利用可能なため、他部署に異動となった職員が、前の部署で培った開発ノウハウをそのまま応用できる利点がある。基本的にはデータも共通の基盤上で管理されるため、データ連携も比較的容易だ。佐藤首席エバンジェリストは「ノーコードツール自体は利用のハードルが低い分、大きなことはできないかもしれないが、細かいところからこつこつと改善することで大きな積み重ねになる。ノーコードは部署をまたいだ効率化に向いている」と指摘する。
中村CIO補佐官はノーコードの活用によって、市民との対話など、職員が本来注力すべき部分に人員を当て「市役所職員として誇りをもって働けるかたちになるようにする」と力を込める。さらにこの動きが全国に広がる未来も描く。「人口3万人ほどの小さな伊豆市でもできるのなら、ほかの自治体でもできるはず。そんな動きにもっていければいい」と見据える。佐藤首席エバンジェリストはノーコード宣言シティープログラムをきっかけに、さらにステップアップし「デジタル宣言」のような姿勢を打ち出す自治体が増えてほしいと願う。
自治体DXを実現するための手法は幅広く存在し、その中でノーコードツールは、必ずしも一度に劇的な成果を挙げるものではないかもしれない。ただ、現場で働く職員それぞれの問題意識を反映させやすいツールであることは間違いなく、ボトムアップで継続的な業務変革を実現できる魅力がある。自治体DXの第一歩としてノーコードには確かな価値があり、実現までの工程を明確に示せるパートナーには、新しい商機が生まれるはずだ。
(取材・文/藤岡 堯)

デジタルを起点とした課題解決能力が身につく
NCPAは2022年9月設立で、ツールを提供するベンダーやSIer、ユーザーなどで構成されている。一般社団法人として、国内での利用拡大に向け、情報発信や普及啓発に取り組んでいる。ノーコード宣言シティープログラムは23年5月に始まり、NCPAが主催する「日本ノーコード大賞」で第1回の大賞を受賞した鹿児島県奄美市など、12の自治体が現在は参加している。
NCPAの中山五輪男・代表理事(アステリアCXO=最高変革責任者・ノーコード変革推進室室長・首席エバンジェリスト)は自治体がノーコードツールを活用する意義について「デジタルを起点に課題を解決できる能力が身につく」と強調する。
近年、行政に求められる役割は高度化・複雑化の一途をたどる。一方で、人材や資金といったリソースは不足しており、多様な住民ニーズに対応するために、デジタルによる生産性の改善は急務となっている。ノーコードツールは現場が直面する小さな悩みに対して、自分たちの手でつくったアプリケーションによって、それを解消できる効果的な手段となりうる。中山代表理事は「自分たちで(アプリの)改善点を見つけ、すぐに直せる」点が強みだと語る。
デジタルへの理解が深まることは、単純にアプリ開発のスキルを得られるだけでなく、外部にシステム開発を依頼する場合でも役立つ。自分たちができる分と、外部に任せたい部分の切り出しが可能となり「すべてを外にお願いして作ってもらう必要がなくなり、無駄な費用を抑えることができる」(中山代表理事)。
もちろん、ノーコードとはいえ、自治体が最初からスムーズに開発ができるわけではない。ノーコード宣言シティープログラムに加わった自治体は、職員向けの勉強会や、NCPAに属する「支援パートナー企業」による伴走サービスの提供といった支援が受けられる。スムーズな立ち上げにはパートナーの存在は不可欠であり、NCPAではパートナーになりうる企業の協会参加を積極的に呼びかけている。中山代表理事は「プロコードを理解し、一気通貫で面倒を見ることができる企業が必要になる」と強調する。
ノーコード宣言シティープログラムは「売る機会」を提供する場としての役割もあるとの考えで、地域の自治体の実情に通じたローカルIT企業の参画にも期待を寄せる。パートナーとして動く中で、自治体との関わりが深まり、より高度な開発案件を受けられる機会もあると指摘する。
宣言した自治体同士のコミュニティーも活性化しており、互いの体験やノウハウの共有、悩みの相談などに役立てているという。中山代表理事はノーコード宣言シティープログラムの活動がさらに盛り上がることで「小さな自治体の開発事例を通じて『自分たちでもできるんじゃないか』と思う自治体が広がってほしい」と話す。
NCPAの会員になった自治体に向けては、24年3月に開始した「NCPA認定ノーコードパスポート」の初級レベルに当たる「サファイア」の受験費用を減免するなどの施策を展開する方針だ。認定には、NCPA所属団体が提供する「ノーコードパスポート認定講座」の受講が要件の一つとなっている。同講座にはハンズオンも盛り込まれており、中山代表理事は「簡単にアプリがつくれたという体験が人を成長させる。『食わず嫌い』で嫌厭する人もいるため、実際につくる機会を増やしたい」と意気込む。
市民と対面する時間を生み出す道具
静岡県伊豆市はノーコード宣言シティープログラムに参加している自治体の一つだ。ノーコード、ローコード、RPAの各種ツールを導入し、業務改善を図っている。中村祥子・CIO補佐官は「SIerが入ってシステムをつくるまででもないが、日々の業務で改善したい、自動化したい部分を、業務を分かっているメンバーでつくっていこうという考え」と狙いを説明する。各部署から選んだデジタル変革に取り組む職員や、若手職員のチームなど約50人が開発に取り組んでいる。
現状では施設使用許可、補助金関連といった申請系のアプリが中心で、バックエンドの処理の自動化を図っている。これまでは紙に書かれた内容を職員が入力する必要があったが、作業の削減につながっているという。ただ、始まったばかりの段階であり「まだまだこれから」(中村CIO補佐官)といったところだ。
ノーコードなどを活用する最大の目的はやはり業務の効率化である。伊豆市もまた人的、予算的なリソースは厳しい状況が続いている。システムでもできることを人が手掛けている状態も続いており、中村CIO補佐官は「自動化によって、これまで(業務に)かかっていた時間を、市民に対面する時間に変えたい。その時間を生み出す一つの道具として使いたい」と述べる。
現場に運用が委ねられている業務の大半は規模が小さく、費用対効果を考えると外部による大掛かりなシステム化は難しい。にもかかわらず、職員1人当たりの作業時間をみると、無視できない分量となる。こういった業務こそノーコードツールの出番というわけだ。利用の促進は簡単ではないが、小さな成功事例を積み重ね、それを横展開して、庁内の開発をより活発にしたいという。
ノーコード宣言シティープログラムに関しては、地方にいると得にくい情報を外部ベンダーから提供してもらえることや、参画自治体との交流などの点で有益だとする。
NCPA側のパートナーとして伊豆市を支えているのが、キーウェアソリューションズのDX推進コンサルティング本部の佐藤貴憲・首席エバンジェリストだ。セミナーの講師や、ハンズオンのサポートを手掛けるほか、職員による発表会のコメンテイターなども務めている。佐藤首席エバンジェリストは他の自治体のパートナーとしても活動しており「自治体職員の皆さんは、一般企業よりもさらに業務改善への意識が高い。一生懸命にどうしたら住民サービスがよくなるかを考えており、協会としてもその点を支援することが重要だ」と手応えを示す。行政職員はITへの理解が浅いため、システムを開発する上で抑えるべき勘所や作法から外れたアプリをつくることも少なくない。ITのスペシャリストであるパートナーはこういった場合に適切な助言を送り、アプリのクオリティを高める役割も担う。
地域企業へのビジネス波及も
企業としてはビジネスが主体ではなく、ノーコードの普及という観点から、パートナーとして「目先の利益にとらわれず」(佐藤首席エバンジェリスト)活動している。自治体は入札条件などもあり、パートナーとはいえ、簡単に事業者としてシステム開発業務を受けられるとは限らない。一方、自治体を支援する中で、セミナーなどを通じて地域の中小企業などとの接点ができ、ノーコード関連の仕事を受注するなど、新しいビジネスにつながったケースもある。視野を広げれば、自治体向けのノーコード支援から生まれるビジネスチャンスの可能性は大きい。
中村CIO補佐官も「職員だけではなく、地域の企業にもノーコードツールを使っていただき、利益を上げられる状況をつくってほしい」と展望する。行政側としても、経済が活性化すれば税収増なども見込め、効果は庁内の業務改善だけにとどまらないといえる。
佐藤首席エバンジェリストは、ノーコードツールが自治体における業務プラットフォームの一つになりうるとの見方を示す。行政はときに「縦割り」とも呼ばれるように、部署をまたいだ連携に課題があるとの声も多い。ノーコードツールそのものは業務内容に関わらず利用可能なため、他部署に異動となった職員が、前の部署で培った開発ノウハウをそのまま応用できる利点がある。基本的にはデータも共通の基盤上で管理されるため、データ連携も比較的容易だ。佐藤首席エバンジェリストは「ノーコードツール自体は利用のハードルが低い分、大きなことはできないかもしれないが、細かいところからこつこつと改善することで大きな積み重ねになる。ノーコードは部署をまたいだ効率化に向いている」と指摘する。
中村CIO補佐官はノーコードの活用によって、市民との対話など、職員が本来注力すべき部分に人員を当て「市役所職員として誇りをもって働けるかたちになるようにする」と力を込める。さらにこの動きが全国に広がる未来も描く。「人口3万人ほどの小さな伊豆市でもできるのなら、ほかの自治体でもできるはず。そんな動きにもっていければいい」と見据える。佐藤首席エバンジェリストはノーコード宣言シティープログラムをきっかけに、さらにステップアップし「デジタル宣言」のような姿勢を打ち出す自治体が増えてほしいと願う。
自治体DXを実現するための手法は幅広く存在し、その中でノーコードツールは、必ずしも一度に劇的な成果を挙げるものではないかもしれない。ただ、現場で働く職員それぞれの問題意識を反映させやすいツールであることは間違いなく、ボトムアップで継続的な業務変革を実現できる魅力がある。自治体DXの第一歩としてノーコードには確かな価値があり、実現までの工程を明確に示せるパートナーには、新しい商機が生まれるはずだ。
自治体でノーコードツールの存在感が高まっている。IT知識が少ない行政職員でも、それぞれが抱える課題に応じて、低コストで素早くアプリケーションを開発できることから、現場起点のデジタル化技術として徐々に広まりつつあるようだ。果たして、ノーコードツールは自治体DX実現への足掛かりとなるか。そして、自治体を支えるSIerなどのパートナーはいかに商機を見出すことができるだろうか。「ノーコード宣言シティー」プログラムなどを通じて、自治体のノーコード習得を後押しするノーコード推進協会(NCPA)、プログラムに参画する静岡県伊豆市とそのパートナー企業の取り組みから、未来を考える。
(取材・文/藤岡 堯)
NCPA 中山五輪男 代表理事
NCPAの中山五輪男・代表理事(アステリアCXO=最高変革責任者・ノーコード変革推進室室長・首席エバンジェリスト)は自治体がノーコードツールを活用する意義について「デジタルを起点に課題を解決できる能力が身につく」と強調する。
近年、行政に求められる役割は高度化・複雑化の一途をたどる。一方で、人材や資金といったリソースは不足しており、多様な住民ニーズに対応するために、デジタルによる生産性の改善は急務となっている。ノーコードツールは現場が直面する小さな悩みに対して、自分たちの手でつくったアプリケーションによって、それを解消できる効果的な手段となりうる。中山代表理事は「自分たちで(アプリの)改善点を見つけ、すぐに直せる」点が強みだと語る。
デジタルへの理解が深まることは、単純にアプリ開発のスキルを得られるだけでなく、外部にシステム開発を依頼する場合でも役立つ。自分たちができる分と、外部に任せたい部分の切り出しが可能となり「すべてを外にお願いして作ってもらう必要がなくなり、無駄な費用を抑えることができる」(中山代表理事)。
もちろん、ノーコードとはいえ、自治体が最初からスムーズに開発ができるわけではない。ノーコード宣言シティープログラムに加わった自治体は、職員向けの勉強会や、NCPAに属する「支援パートナー企業」による伴走サービスの提供といった支援が受けられる。スムーズな立ち上げにはパートナーの存在は不可欠であり、NCPAではパートナーになりうる企業の協会参加を積極的に呼びかけている。中山代表理事は「プロコードを理解し、一気通貫で面倒を見ることができる企業が必要になる」と強調する。
ノーコード宣言シティープログラムは「売る機会」を提供する場としての役割もあるとの考えで、地域の自治体の実情に通じたローカルIT企業の参画にも期待を寄せる。パートナーとして動く中で、自治体との関わりが深まり、より高度な開発案件を受けられる機会もあると指摘する。
宣言した自治体同士のコミュニティーも活性化しており、互いの体験やノウハウの共有、悩みの相談などに役立てているという。中山代表理事はノーコード宣言シティープログラムの活動がさらに盛り上がることで「小さな自治体の開発事例を通じて『自分たちでもできるんじゃないか』と思う自治体が広がってほしい」と話す。
NCPAの会員になった自治体に向けては、24年3月に開始した「NCPA認定ノーコードパスポート」の初級レベルに当たる「サファイア」の受験費用を減免するなどの施策を展開する方針だ。認定には、NCPA所属団体が提供する「ノーコードパスポート認定講座」の受講が要件の一つとなっている。同講座にはハンズオンも盛り込まれており、中山代表理事は「簡単にアプリがつくれたという体験が人を成長させる。『食わず嫌い』で嫌厭する人もいるため、実際につくる機会を増やしたい」と意気込む。
(取材・文/藤岡 堯)

デジタルを起点とした課題解決能力が身につく
NCPAは2022年9月設立で、ツールを提供するベンダーやSIer、ユーザーなどで構成されている。一般社団法人として、国内での利用拡大に向け、情報発信や普及啓発に取り組んでいる。ノーコード宣言シティープログラムは23年5月に始まり、NCPAが主催する「日本ノーコード大賞」で第1回の大賞を受賞した鹿児島県奄美市など、12の自治体が現在は参加している。
NCPAの中山五輪男・代表理事(アステリアCXO=最高変革責任者・ノーコード変革推進室室長・首席エバンジェリスト)は自治体がノーコードツールを活用する意義について「デジタルを起点に課題を解決できる能力が身につく」と強調する。
近年、行政に求められる役割は高度化・複雑化の一途をたどる。一方で、人材や資金といったリソースは不足しており、多様な住民ニーズに対応するために、デジタルによる生産性の改善は急務となっている。ノーコードツールは現場が直面する小さな悩みに対して、自分たちの手でつくったアプリケーションによって、それを解消できる効果的な手段となりうる。中山代表理事は「自分たちで(アプリの)改善点を見つけ、すぐに直せる」点が強みだと語る。
デジタルへの理解が深まることは、単純にアプリ開発のスキルを得られるだけでなく、外部にシステム開発を依頼する場合でも役立つ。自分たちができる分と、外部に任せたい部分の切り出しが可能となり「すべてを外にお願いして作ってもらう必要がなくなり、無駄な費用を抑えることができる」(中山代表理事)。
もちろん、ノーコードとはいえ、自治体が最初からスムーズに開発ができるわけではない。ノーコード宣言シティープログラムに加わった自治体は、職員向けの勉強会や、NCPAに属する「支援パートナー企業」による伴走サービスの提供といった支援が受けられる。スムーズな立ち上げにはパートナーの存在は不可欠であり、NCPAではパートナーになりうる企業の協会参加を積極的に呼びかけている。中山代表理事は「プロコードを理解し、一気通貫で面倒を見ることができる企業が必要になる」と強調する。
ノーコード宣言シティープログラムは「売る機会」を提供する場としての役割もあるとの考えで、地域の自治体の実情に通じたローカルIT企業の参画にも期待を寄せる。パートナーとして動く中で、自治体との関わりが深まり、より高度な開発案件を受けられる機会もあると指摘する。
宣言した自治体同士のコミュニティーも活性化しており、互いの体験やノウハウの共有、悩みの相談などに役立てているという。中山代表理事はノーコード宣言シティープログラムの活動がさらに盛り上がることで「小さな自治体の開発事例を通じて『自分たちでもできるんじゃないか』と思う自治体が広がってほしい」と話す。
NCPAの会員になった自治体に向けては、24年3月に開始した「NCPA認定ノーコードパスポート」の初級レベルに当たる「サファイア」の受験費用を減免するなどの施策を展開する方針だ。認定には、NCPA所属団体が提供する「ノーコードパスポート認定講座」の受講が要件の一つとなっている。同講座にはハンズオンも盛り込まれており、中山代表理事は「簡単にアプリがつくれたという体験が人を成長させる。『食わず嫌い』で嫌厭する人もいるため、実際につくる機会を増やしたい」と意気込む。
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