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<オービックビジネスコンサルタント特集>今後10年の主力製品“原版”次世代通信環境で利用拡大へ

2008/05/05 19:56

週刊BCN 2008年05月05日vol.1234掲載

 オービックビジネスコンサルタント(OBC)は2007年10月、同社初の本格的なERP(統合基幹業務システム)となる「奉行V ERPシリーズ」を全国の販売パートナーを通じて販売を開始した。4‐5年の長期間にわたる開発を経て完成し、マイクロソフトの次世代開発環境「Microsoft Visual C#」を活用した64ビットネイティブ製品だ。和田成史社長は「この先10年以上にわたって当社の主力製品となる“原版”」とみており、NGN(次世代ネットワーク網)時代などの到来を先取りした製品になると期待している。内部統制強化が叫ばれるなかで、この「次世代製品」がどんな商流でどのように波及するかに注目が集まっている。

「奉行V ERP」で新規市場を創出

NGNを視野に入れた最新製品 Server2008のロゴを最速取得

 「中堅・中小企業」「業務・情報」「パートナーシップ」「マイクロソフト」へのフォーカス――。業務ソリューションベンダー大手のオービックビジネスコンサルタント(OBC)が貫き通す基本的な理念である。また、ユーザー企業とパートナーの満足度アップを徹底的に追求し続けるという思想を胸に、製品開発と保守・導入支援などのサービス拡充に磨きをかけてきた。

 07年10月に販売を開始した「次世代製品」となる新ラインアップのERP「奉行V ERPシリーズ」は、そんな理念と思想にさらに厚みを加え、次世代の通信環境などで業務システムを利用することを見据えた製品として開発された。

 和田社長は、次のように語る。

 「マイクロソフトの次世代サーバーOS『Microsoft Windows Server 2008』や64ビット、NGN(次世代ネットワーク網)、SaaS(Software as a Service)、オンデマンドといった『次世代環境』で有効利用することを踏まえた戦略製品だ。この先、NGNの普及とともに『通信とソフトウェアの融合』が進展し、企業内だけでなく、企業間のデータ交換などを容易にする製品として業務システムは進化する必要があった」(和田社長)。

 このためOBCは、業界に先がけ「奉行V ERPシリーズ」で、マイクロソフトからクライアントOSの「Certified for Windows Vistaロゴ」とサーバーOSの「Certified for Windows Server 2008ロゴ」の両方を取得。先陣を切って「次世代環境」でデファクトを目指して突き進もうとしている。

 「奉行V ERPシリーズ」は、中堅・中小企業向け業務システム「奉行シリーズ」で最上位版に位置づけられている。会計、人事・給与、販売管理に加え、内部統制の構築・運用に対応した統合運用管理ツール「OBC Management Studio」をラインアップに揃えた。同ツールは、ユーザー企業側の細かな権限設定や部門セキュリティ、マイクロソフトのディレクトリサービス「Active Directory」連携、ログ管理を統合し、「奉行V ERPシリーズ」のすべてのユーザー管理ができるため、「内部統制の構築・運用のソリューションとして重要なツールになる」(和田社長)と捉え、上場企業やそのグループ会社、関連企業とのデータ連携や内部統制を想定した仕組みを備えた。

オプション拡充、カスタマイズを低減 内部統制に対応、成長企業へ浸透

 従来は、カスタマイズで対応してきた会計のセグメント管理や販売のロット管理などを専用オプションとして開発し、パッケージ化している。「奉行V ERPシリーズ」が出る前までの最上位版「奉行新ERP」などの導入・開発では、ユーザー企業のシステム要求レベルが高まっていることを受け、年々カスタマイズ内容が複雑化・多様化する傾向にあった。

 和田社長は「カスタマイズには限界が生じていた。そこで、当社ではオプションを増やすことで、カスタマイズせずにすべてを賄えるアーキテクチャを活用し、“一”から『奉行V ERP』を開発した。パートナーの販売の仕方もカスタマイズがなくなることで、営業に注力でき営業生産性を上げ、保守・サポート面でもバージョンアップなどの作業の煩わしさがなくなる」と、拡張性の高いマイクロソフトの次世代開発環境「Microsoft Visual C#」ベースで開発し、「.NETテクノロジー」に完全準拠したパフォーマンスと拡張性の高い製品に仕上げたという。

 08年2月には、4月に適用される「金融商品取引法」の前に、経済産業省が公表した内部統制の整備運用に求められる「システム管理基準 追補版」に対応した機能を「奉行V ERPシリーズ」に強化した。OBCでは、「奉行V ERP」の内部統制支援強化を機に、上場企業のほかグループ会社や関連会社、成長企業に向けて全国の販売パートナーを通じて本格的な売り込みを開始した。「上場企業の大手はともかく、グループ会社や関連会社、取引先などは高額なERPを導入することはできない。『奉行V ERPシリーズ』ならば、グループ全体を予算や規模に応じて、クライアント/サーバー型やシェアードサービス型、Windows/Webフォーム型、SaaS型などで、一貫した基幹システムを低コストで構築できる」と和田社長。さらにこう訴える。「将来的には、企業内・企業間のシステム環境がSOAP(XMLとHTTPなどをベースに他のコンピュータにあるデータやサービスを呼び出すプロトコル)環境になり、IPv6環境も整備されれば『携帯電話とコンピュータの融合』も進む。この『次世代環境』までを見据えた製品だ」。

発売以来半年で100社導入 金融機関と協業を強化へ

 OBCは「奉行V ERPシリーズ」を07年10月に、発売以来の半年でネットワーク版を中心に100社へ導入した。さらに普及を加速するため、「内部統制支援キャンペーン」と銘打ち、08年9月までの期間限定で「スタンドアロン対応版」のキャンペーン特価を設定した。例えば、「勘定奉行V ERP Single Edition」は通常価格71万4000円(税込み)を34万6500円(同)と半額以下で提供している。

 「奉行V ERPシリーズ」は、最新のアーキテクチャを備え「企業内・企業間などにつながる」(和田社長)次世代環境へ移行したことで、すでに事業化している同社業務ソフトから金融機関との取引業務を行えるエレクトロバンキングシステム「OFFICE BANK 21」を利用したサービス拡大も、視野に入れている。「OFFICE BANK 21」は現在、全国の都銀、地銀、第二地銀、信託銀行など約100行に採用されている。「今の通信環境にIPv6の環境整備が進めば、よりセキュアに基幹データのやり取りができ、会計処理などの効率化につながる」(和田社長)と、既存の販売パートナーに加え、新たに金融機関とのパートナー制度を拡充する考えだ。

 07年11月には、マイクロソフトから技術の先進性やサービスの完成度などが評価され、「ISV/Software Solution Partner of the Year」として最優秀賞を受賞した。今年度(09年3月期)期初のスタートダッシュに弾みをつけ、販売パートナーとともに急成長を遂げようとしている。

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