量子コンピューターを利用したシステム開発を担う「QIer」(Quantum Integrator)。量子コンピューターの一種であるアニーリングマシンが実用段階にあるとはいえ、QIerとして成功している例はまだ皆無に等しい。つまり、量子コンピューターを活用したシステム開発市場は完全にブルーオーシャンというわけだ。

畔上文昭
週刊BCN編集委員
 「アニーリングマシンはカナダのD-Wave Systemsがいち早く製品化に成功したが、NTTや富士通、日立製作所なども、光ファイバーやデジタル回路などを用いたマシンの開発を進めており、現時点では日本のメーカーが性能面で市場をリードしている」と、畔上文昭 週刊BCN編集委員は現状を説明する。量子コンピューターの性能は、量子ビットの数で語られがちだが、アニーリングマシンにおいては結合方式や精度(階調)も重要な指標である。これらを考慮すると、国産アニーリングマシンは性能面で勝っていることが分かる。

 グローバル時代においては、国産かどうかは大きな問題ではないと思われるが、身近なところにサポート体制があるかどうかは市場の形成を大きく左右する。最たる例が汎用機だ。日本は世界トップクラスのメインフレーマー数を誇っていたこともあり、多くの企業や団体において汎用機が現在でも稼働している。システム構築やサポートの体制が整っているためだ。アニーリングマシンにおいても同様のことが期待され、東京五輪後を見据えた事業としても有力と考えられる。

 とはいえ、アニーリングマシンは活用にあたって求められる知識やノウハウが、これまでのコンピューターとは異なる。「アニーリングマシンで必要とされるのは、課題を数式に落とすところ。数式化できれば、後はそれをアニーリングマシンに渡すイメージ。特別なプログラミング知識を必要とせず、APIを利用するのと似たイメージ」とし、課題を数式化する方法などを紹介した。

 アニーリングマシンが得意とするのは、「組み合わせ最適化問題」。代表例と知られるのが「巡回セールスマン問題」で、訪問すべき都市の数が増えると、巡回パターンが指数関数的に増加するため、これまでのコンピューターでは計算処理に多くの時間が必要とされる。それを一瞬で解くのが、アニーリングマシンだ。ただし、「多くの分野で適用できると考えられているが、ビジネスでの活用はこれから。その点では、まだ先の技術ともいえる。活用方法の発明が求められている」という状況にある。それゆえ、市場は完全にブルーシャンであり、今後のビジネスとして検討する価値は十分にあると説明した。