マイクロソフトが提供している「Microsoft Azure Stack HCI(Azure Stack HCI)」は、認定済みのハードウェアを使用して、仮想化されたワークロードをオンプレミスで実行することができるWindows Server 2019ベースのハイパーコンバージド・インフラストラクチャ(HCI)である。Windows Server 2019の標準機能だけでHCIを実現することができるため、従来の競合他社のHCI製品と比較するとコストメリットが高く、さらにマイクロソフトのクラウドサービス「Azure」との親和性も高いため、これらの強みを生かし、積極的にソリューションを提供してビジネスの拡大を図っているベンダーもある。国内外を含めたHCI市場で、その名をとどろかせているのがDell Technologies(デル)だ。同社でHCIに携わるキーマンに、Azure Stack HCIの強みを聞いた。

(左から)津村賢哉氏(Dell Technologiesインフラストラクチャ・
ソリューションズ事業統括ソリューション本部 ビジネス開発マネージャ)、
小野誠氏(同事業本部・ビジネス開発マネージャ)、
南部憲夫氏(同事業本部・エンタープライズ テクノロジスト)

マイクロソフトHCI製品の販売に長ける

 HCI市場で圧倒的な存在感を見せるのがデルであるが、同社の小野氏(インフラストラクチャ・ソリューションズ事業統括ソリューション本部・ビジネス開発マネージャ)は、「オンプレミスのモダナイズという流れの中、HCIが最適解で、多くのお客様が当社の製品を選択する」と強調する。

 デルでは、ユーザー企業のニーズに応じて複数のHCIソフトウェアベンダーの製品を採用している。マイクロソフトの製品では、「Windows Server 2016 Datacenter」のときから実装されているソフトウェア・デファインド・ストレージ 「Storage Spaces Direct(S2D)」とHyper-V、フェイルオーバ・クラスタリングなどのWindows Server 標準機能だけでHCI化が実現可能であったため、これらを安定動作させることができる認定済みの専用サーバー「Dell EMC Microsoft Storage Spaces Direct Ready Node(S2D Ready Node)」に専用の導入・サポートサービスをパッケージ化したデル独自のWindows ServerベースのHCIソリューションを他社に先駆けて提供してきた。

 なお、今回のテーマのAzure Stack HCIは、この「Windows Server 2016 Datacenter」で既に培ったS2Dをはじめとした機能や構成の仕方を受け継ぎ、マイクロソフトが「Windows Server 2019Datacenter」を市場投入したタイミングで「Azure Stack」製品群の一つと位置付けを改め、リブランドしたものになる。現在、デルではマイクロソフトのHCIソリューションを「Dell EMC Solutions for Microsoft Azure Stack HCI」としている。
 
 

使い勝手の良さでニーズが高まる

 「デルにとってWindowsベースで社内システムを構築しているケースは、非常に多く、お客様が使い慣れている点で、Azure Stack HCIは非常に適している」とAzure Stack HCIを高く評価している(小野氏)。特に仮想化システム「Hyper-V」に慣れたユーザー企業の多くは、コスト、運用面においてHCIにしたいが、使い勝手の部分でやはり不安があり、リプレースすることに躊躇されるケースが多い。「Windows、Hyper-Vユーザーにとっては、Azure Stack HCIは、まさに待ち望んでいた製品で、提案すると、必ずと言っていいほど関心を持っていただき、商談成立の確率が高い」。実際に関連のセミナーを行うと、「セミナーの冒頭に、Azure Stack HCIを知っているかを聞くと、多くて1割、中には1人しか知らないという場合もある。ところがセミナー終了後、来場した方のほとんどが興味を示し、商談につながりやすい」とのことだ。
 
 

圧倒的な低コストとパフォーマンス、運用効率化も

 さらに、Azure Stack HCIの魅力は「HCIを構成するために必要なソフトウェアのライセンスが、全てOSライセンスに含まれていることだ」と津村氏(同事業本部 ビジネス開発マネージャ)は強調した。Windows Server 2019 Datacenter Editionでは、セカンドOSやHyper-V、SDSなどHCI機能を標準で搭載。他社製品は、HCIライセンスや仮想化技術ライセンスなどの費用が追加となるため、Azure Stack HCIのほうが圧倒的に低コストということだ。「お客様にとって、コスト負担が少ないということは導入の大きなポイント」と指摘する。さらに、性能面においてもNVMeドライブやRDMA(リモート・ダイレクト メモリ・アクセス)ネットワークなどの最新テクノロジーをサポートしているため、高いストレージ性能を発揮することができる。実際にマイクロソフトが公開しているストレージのベンチマークでは、約1380万IOPSという驚異のI/O性能を記録しており、潜在能力としてのパフォーマンスの高さでは、他のHCI製品に類をみないほどに圧倒的だ。南部氏(同事業本部・エンタープライズ・テクノロジスト)によると「実案件の提案では、パフォーマンス面での懸念は、従来のインフラの提案と比較すると非常に少なくなった」とのことだ。

 このほか、運用面でもAzureとの連携も含めてカバーする無償のWindows サーバーの管理ツール「Windows Admin Center」でクラウド(Azure)とオンプレミス(Azure Stack HCI)との一体的な運用・連携が可能。Azure Stack HCIは、ハイブリッドクラウド環境でも競合製品との差別化を図っているのだ。なお、デルでは同社のハードウェア管理をWindows Admin Centerのコンソールの中で一元的に統合管理できるプラグイン「Open Manage Integration with Microsoft Windows Admin Center」も無償にて提供している。

案件増で2~3ケタ成長を維持

 デルのAzure Stack HCIソリューションでは、さまざまな企業のニーズやワークロードに対応できるように、現在19の構成パターンのラインアップを揃えている。SQL Serverなどデータベースをはじめとした高負荷なIOを必要とするワークロードの仮想化統合やVDI(仮想デスクトップ)、RDS(リモートデスクトップサービス)環境の基盤、一方、規模としては、リモート・ブランチオフィスなどの小規模なインフラ環境からスケールアウトが必要な大規模なインフラ環境まであらゆるニーズに幅広く提案することが可能だ。
 
既に多くの導入実績を持つDell Technologies(デル)
 
無償のWindowsサーバー管理ツール「Windows Admin Center」からデルのハードウェアも含めた
一元管理が可能

 実際、世界で630社、国内で70社程度をユーザー企業として獲得しているという。津村氏は、「海外では製造や金融、教育機関をはじめ、幅広い業界で導入が進んでいる。中でも欧州が活発的だ。国内では製造や金融、サービス、公共機関も導入している。社員が1000人以上の企業もあれば、中小企業への提供など、さまざまな案件が出てきている」と説明。加えて、「ビジネス規模は着実に拡大しており、しかも伸び代が大きい」としている。

特徴的な導入が相次ぐ

 特徴的な導入事例は数々ある。例えば、ある大手の学習塾では、全国の生徒たちの模擬テストの結果や教員の勤怠管理などを含んだデータベース(DB)システムが多数あり、それを業務アプリケーションの基盤と一緒にHCIに統合したケースがあった。こちらの学習塾では、ハードウェア保守サポート終了への対応、DBシステムであるSQL Serverのサイロ化によって運用負荷の増大などの課題を抱えていた。そこで、Azure Stack HCIの導入を決断した。SQL Serverを全てHCI上の仮想マシンに移行してHA(高可用)化したほか、同時に業務アプリケーション用の仮想マシンもHCIに統合したことから、運用対象がシンプルとなり運用負荷の大幅な軽減につながった。津村氏は、「HCIは仮想デスクトップの案件が多いが、Azure Stack HCIはSQL Serverの統合にも使われるケースが多い。ここが他のHCI製品と異なる点」という。

 また、ある製造業では基幹業務サービス基盤と開発用プライベートクラウドのリプレースで導入。SANストレージ、DBシステムのコスト削減、SLAに必要なパフォーマンス維持、管理による運用負荷の軽減といった課題を抱えていた。Azure Stack HCIによって、高価なストレージやDB専用アプライアンスが不要になったほか、Azure Stack HCIとマイクロソフトの運用管理ソリューション「Microsoft System Center」による自動化にて運用負荷の軽減も果たした。

 多様な案件獲得でデルによるAzure Stack HCI関連のビジネスは、「2~3ケタ成長が続いている。前年比300%を達成した時期もあった」と、小野氏は自信を見せる。

充実したサポートで安心を提供

 デルのAzure Stack HCI関連ビジネスが好調の背景には、サービスやサポートが充実していることもポイントになっている。

 サービスでは、Azure Stack HCI専用の導入サービスを提供。各ノードでのRDMAやネットワーク設定の実施に加えて、S2Dとストレージプールの構成、Hyper-Vやフェイルオーバークラスターの作成などを専門技術者がスピーディーに行う。「遅くても2週間で稼働する」(津村氏)という。

 サポートでは、同様にAzure Stack HCI専用の保守サービスによってAzure Stack HCIのOSとハードウェアを一つの窓口で行っているほか、万が一の障害時でも適切なAzure Stack HCI向け認定パーツを提供。これらのサービスはWindows Serverライセンスのさまざまな購入パターンにも対応している。

 また、検証にも力を入れている。南部氏は、「東京・三田オフィスに検証環境を用意しているほか、グローバルで培った膨大な検証データを生かして、お客様が導入したい構成のPoC(Proof of Concept:概念実証)を実施している。社外サイトでは技術情報も積極的に公開している」とのことだ。

当面は高い成長率が続く

 デルによる今後のAzure Stack HCI関連ビジネスについて、小野氏は「まだまだ伸びる。当面は、高い成長が続く」と断言する。「Windows Server 2008/2008 R2」のサポート終了が2020年1月に控えていることもあり、「旧来のHyper-V 環境をAzure Stack HCIに移行する傾向は高い。潜在需要は大きいだろう」と捉えている。

 なお、デルはAzure Stack HCIの需要開拓を促進するため「Microsoft Azure Stack HCIソリューション期間限定キャンペーン」を実施している(19年11月1日までの発注分)。2ノードと4ノードをそれぞれ2モデル、合わせて4モデルを用意しており、最大で55%引きで販売する。最小構成の2ノードモデルでは460万円(税別)という価格に設定している。Windows ベースのシステムを構築するユーザー企業がまだまだ眠っており、HCIへの移行ニーズが高まっていることからも、ビジネスチャンスがつかめる可能性を秘めている。