トータルソリューションを提供できる企業の姿をアピールしていきたい――。リコー製品の保守業務だけではなく、ネットワーク関連分野に強いシステムインテグレータとして発展を続けているリコーテクノシステムズ。社長就任から3年目を迎えた我妻一紀社長は、今年を「飛躍の年」と位置づける。
全国約260か所の拠点でネットワーク事業を展開
──リコーグループの中でリコーテクノシステムズは、どのような位置づけになるのですか。
我妻 元々はリコー製複写機の保守・サポート会社だったのですが、複写機もドキュメントシステムへの発展など、ネットワークやシステム構築が避けては通れないことが見えてきました。そこで1999年に、大阪と東京に分かれて、リコー製品の保守業務などを手がけていたリコーテクノネットと、システムインテグレーション・ネットワークインテグレーション事業を担当していたリコー情報システムを統合して、リコーテクノシステムズを設立しました。リコーグループの中で、プリンタなどの保守に加えて、ネットワーク関連のソリューションを一貫して提供できる会社になりました。
──リコー製品の保守業務だけのイメージが強く、ネットワーク、システムインテグレーション分野は、まだ知名度が低いように感じますが。
我妻 確かに、その印象は否めないかもしれません。売り上げでみますと、保守事業が6割、ネットワークインテグレーションサービスとシステムインテグレーションサービスは各2割といった比率です。しかし、当社には他社にない大きな強みがありますので、とくにネット事業はこれから大きく伸ばしていきたいと考えています。
──その強みとは。
我妻 まず、ネットワークインテグレーション事業では、全国を網羅する約260か所の拠点が大きな強みとなります。このうち、約160か所がネットワーク構築事業に対応しており、24時間365日、2時間以内にユーザーの元に駆けつけることができる体制をとっています。ネットワークというのは、全国同時にメンテナンスする必要性が高いわけですが、この体制でサービスを提供できる企業はそうはありません。
システムインテグレーション事業では、当社を含めたリコーグループのIT環境が武器になっています。とくに、リコーはグループウェアの先進的ユーザーとして知られているわけですが、ユーザーからリコーグループの利用ノウハウを教えて欲しいなどの要望が多く、コンサルティングなども含め、グループウェアをユーザーに提供するケースが増えています。これらに加えて、リコーの製品を販売するリコー直系販売会社が全国に45か所、約1万2000人の営業部隊が全国を走り回っています。この強力な営業網をベースに、展開できることも当社の強みです。
──ネットワークやシステムでは、リコー製品以外も扱っているのですか。
我妻 そうです。マルチベンダーでやっています。
──人材の配分はどのように。
我妻 現在、社員総数は約6300人ですが、ルータやサーバーの保守が出来るCE(カスタマー・エンジニア)は約1600人います。人材教育には力を入れており、たとえばシスコシステムズの技術者認定資格である「CCIE」(Cisco Certified Internetwork Expert Program)の取得者は、約40人います。これは国内トップのはずです。
オフィス総研を統合、ドキュメントサービスを拡大へ
──ドキュメント管理ソリューションを手がけるオフィス総研を1月1日付で統合しましたが、その狙いは。
我妻 オフィス総研は、システムインテグレーション事業のサービスラインアップに、より厚みを出すために統合しました。これまでオフィス総研では、オフィスの大量の文書・資料・図面などを整理・体系化し、迅速かつ正確にユーザーに提供する技術、またその全体的な管理ソリューションを提供してきました。文書管理は、過去、レコードマネジメントと呼ばれ、日本企業にとっては特に大きな課題になっていたわけです。
このレコードマネジメントで大きな実績をもっていたのがオフィス総研です。しかし、文書を単純にデジタル化しても、レコードマネジメントをしっかりしておかないと、かえって使いにくくなってしまいます。ここをしっかり盛り込んだソリョーシュン提案を行うために、統合しました。これまで、そうしたコンサルティングができる人員は約30人でしたが、この統合により約100人まで増やして、ドキュメントサービス事業を拡大させていきます。
──このドキュメントソリューションに加え、今年のキーワードに「保守プロセスの改革」も打ち出しています。具体的にはどのようなことですか。
我妻 昨今の市場環境から、単価が下落傾向にあるのは否めません。保守プロセスを見直して、生産性を上げることが重要です。昨年、中期経営計画「ビジョン21」を策定しました。顧客満足度を向上させるために、故障が発生した時に、修理完了まで顧客の待ち時間をできる限り短縮するインフラ作りなどにも取り組んでいます。たとえば、「飛び道具」と呼んでいるんですが、携帯電話の有効活用、複写機本体への故障検知機能の組み込みなど、いろいろ打ち出していくつもりです。それで省ける人材、経費をネットワーク、システムインテグレーション事業に費やしていきます。
──我妻社長は、今年を「飛躍の年」と位置づけていますね。その理由は。
我妻 それは人材にあります。現在のIT事情は、二極化している感があります。大手企業は先進的に取り組んでいますが、中堅・中小企業は、まだまだITの分かる人材がおらず、IT弱者が大半です。ここに大きなビジネスチャンスが存在します。そのような中堅・中小企業のユーザーの要望に、柔軟に応えることができる人材がなんと言っても大事です。
IT業界の“お助けマン”が昨今の中小・中堅企業には急務で、ここに大きな潜在需要があると考えています。得意技をもった人材教育に力を入れてきましたので、今年はそれが実を結び、社員が現場でユーザーの”お助けマン“となることができるでしょう。もちろん、今後も人材教育には注力します。当社はサービス会社です。サービスを提供するのは人。人材の提案力なくして、サービス会社は成長しませんから。
──業績の方はいかがですか。
我妻 昨年度(02年3月期)の売上高は約1100億円ですが、当社は物販はやっていませんので、不況には強い。
今年度(03年3月期)も経常利益は2ケタ成長が可能かなと考えています。
眼光紙背 ~取材を終えて~
「やっぱり人は紙が好きなんですよ。重要な情報は紙で持ちたいものなんです」ドキュメントソリューションを説明する際、我妻社長はこうつぶやいた。取材前に行われた写真撮影での出来事。カメラマンの注文は、我妻社長のデスクでのカットだった。
写真では机の様子までは分かりづらいかもしれないが、机の上は綺麗に片付いているのだ。実は撮影前、「こんな汚いままじゃ」と、我妻社長自らが片付けた。撮影前は、膨大な書類・書籍が山積みにされていたのだ。我妻社長の経営指針となる重要な書類は、ハードディスクの中ではなく、もしかしたら、山積みにされた膨大な書類の中にあるのかも。(鈎)
プロフィール
我妻 一紀
(あずま かずのり)1949年、北海道生まれ。71年3月、室蘭工業大学工学部電気工学科卒業。同年4月、リコー入社。87年10月、情報処理振興協会事業協会シグマOS開発室長。92年10月、リコーシステム開発(北見)社長。94年10月、リコー人事部付北海道リコー社長。97年4月、リコーシステムソリューション事業本部販売統括室室長。00年6月、リコー執行役員。同年10月、リコーテクノシステムズ代表取締役社長に就任(リコー執行役員を兼務)。
会社紹介
リコーテクノシステムズは、リコー製品の保守会社として1977年に設立されたリコーエレクトロニクスが母体である。88年にはリコーテクノネットに発展。99年に、システム構築事業を手がけていたリコー情報システムと統合して、現在の社名になった。
事業の柱はリコー製品の保守業務、ネットワークインテグレーション事業、システムインテグレーション事業の3分野。年商は約1100億円。現在の売上比率は保守業務が約6割、ネットワークインテグレーション事業が約2割、システムインテグレーション事業が約2割となっている。従業員は約6300人。国内拠点は約260か所に及ぶ。