社長に就任してから、この4月で早くも1年が経つ。1955年の創業以来、初の減収、営業赤字に陥った01年度(02年3月期)の教訓をバネに、小島章利社長は就任と同時に業績の“V字回復”を至上命題に掲げ、創業以来の基本方針「各地域の一番店になる」ための強化策を新たに打ち出した。柱は「競争力のある店舗」、「強い人材」、「効率的な仕組み」、「強い商品」の4つ。その具体的な中身とは、何なのか――。
基盤作りに向けて
4つの強化策を打ち出す
──社長に就任して、もうすぐ1年が経とうとしています。この1年、「地域一番店の集合体」づくりに取り組んでこられたそうですが、振り返っての感想は?
小島 掲げている目標「地域一番店の集合体」を達成するための基盤作りに注力した年となりました。
「各地域の一番店になる」というコジマとしての方向性は、創業以来変わりません。顧客により良い製品を低価格で提供する。お買い上げ頂いた後も、きめ細かいアフターサービスを提供する。そして、一店舗一店舗が顧客、社会からの信頼を獲得できるようになり、各地域の一番店になる。この方向性がはっきりしていますから、それに向かって、再度しっかりとした基盤作りをする年だったといえます。
──「地域一番店の集合体」を実現するために、小島社長は4つの強化策「競争力のある店舗」、「強い人材」、「効率的な仕組み」、「強い商品」を打ち出されましたね。強化策について、現在の具体的な取り組みを教えてください。
小島 まず、「競争力のある店舗」ですが、家電製品を販売していくうえで、3000平方メートルという売り場面積を1つの標準と考えています。白物家電から情報家電までを含めたトータルな展示、提案を行っていくためには、3000平方メートル以上は必要だと判断したからです。
ですので、今後出展する店舗に関しては、3000平方メートル以上の大型店舗にしていく予定です。今年度の新規店舗は、19店舗となる見通しですが、平均売り場面積は約3026平方メートルです。
一方で、500平方メートル以下の小型店舗の閉鎖・統合も進めています。当社の全店舗数は251店舗になりますが、その中で、約120店舗が500平方メートル以下の小型店舗です。この小型店舗については、順次閉鎖・統合を進めていきます。今年度には、20店舗を閉鎖する予定になっています。
──「強い人材」に関してはいかがですか。
小島 これに関しては、大きく分けて2つのことに取り組んでいます。
1つは組織の見直しです。役割の明確化、意思決定のスピードアップ、監視機能と業務執行機能の分担のため、執行役員制を導入しました。
また、全国を8つのエリアに分け、各エリアにエリアマネージャーを新たに配置しました。これまでは、各店舗と本部がダイレクトに結びつく、極めてフラットな組織を構築していましたが、規模が拡大したため、効率的な情報伝達ができなくなっていました。
これを改善するため、8人のエリアマネージャーが本部と連携をとり、この8人が各エリアの店舗と連携をとることによって、きめ細かな情報伝達が行えるようにしました。
マーケティングからプロモーションまでを、エリアマネージャーにある程度任せることにより、地域特性を生かした店舗作りを推進しています。本部の人間では考えつかなかった戦略もとることが可能になると思います。
──もう1つは何でしょうか。
小島 人材教育の強化です。積極的な新卒社員の採用を行ってきたので、当社の従業員は非常に若い。そのため、接客力や販売力が低下しているという問題点が浮かび上がっていました。
そこで、社員を教育していくための専門の教育部署を新たに設けるなど、これまでOJT中心だった社員教育を組織立てて強化しています。全店舗に導入したテレビ会議システムも、全店舗共通した教育を施す意味で、役立てています。
また、業績貢献への結果としての報酬を支払うことにより、社員のモチベーション向上を図る評価制度も来年度には導入します。
商品を低価格で提供する
ローコストオペレーション
──「効率的な仕組み」では。
小島 発注システムや物流システムの見直しを図っています。
一昨年には栃木県宇都宮市に「北関東物流センター」を開設し、昨年9月には東京の立川市に「南関東物流センター」を開設しました。また、今年2月には大阪に「関西物流センター」も設置し、稼動させました。北海道と九州にも設置することを計画中です。
これにより、従来はメーカーから各店舗へ納品してもらっていたものを、これらの物流センターへ集中させることができます。メーカーからの納品回数を減らすとともに、センターから店舗への配送便の搭載率を高め、システムとしての効率化を図ります。
こうしたローコストオペレーションの実現により、顧客に商品をより低価格で提供できます。
また、自動発注システムを全店舗に導入する予定です。需要予測の精度向上による計画仕入れによって、欠品率の減少に努めます。
──最後の「強い商品」に関してはいかがですか。
小島 顧客にメリットのある売れ筋商品の計画仕入れを、さらに推進していきます。また、オリジナル商品の開発などにも力を入れていきます。
──パソコンの販売台数が市場全体で落ちています。今後のパソコン販売に関してはどのように考えていますか。
小島 パソコンは、今後も消費者を魅了する商品であることに変わりはないと思っています。ですので、今後も、店舗の主力商品として位置づけていきます。
パソコンの利用方法は、冷蔵庫や洗濯機と違って、人それぞれに異なりますよね。どのように使うかはその人次第で、用途は何万通りにもなる。ですので、販売力・提案力がモノを言います。
顧客が何をやりたいのか、そのために一番効率的な性能、パソコンはどれなのか。しっかりとした提案をしていく。そうすれば、必ず顧客に今まで以上に浸透する、魅力的な強い商品になるでしょう。
また、これまで開拓されていない市場、たとえば教育機関への提案なども積極的に行っていきます。
──業績に関してですが、昨年度(02年3月期)は創業以来の減収と厳しい結果になりました。4つの強化策は、今後の業績にどのように反映されていくとお考えですか。
小島 掲げた4つの強化策で効率化を進めるとともに、販売力を向上させ、収益を改善させる。各店舗は、地域に密着した、顧客から信頼される地域一番店へと成長すること。とにかくこれが、至上命題です。
達成すれば結果は後から確実についてきます。
来年度(04年3月期)は4つの強化策が本格的に浸透し、今年度(03年3月期)以上に実を結ぶ年になると思いますので、結果を出せる、出さなければならない年と位置づけています。ぜひ期待していて下さい。
眼光紙背 ~取材を終えて~
「利用定義を明確に示すことが商品には重要」と小島社長は話す。
「例えば、洗濯機がなければ、母親は何倍もの時間を洗濯に費やさなければならないし、テレビがなければ最新の情報は入ってこない。だから家庭には必ず洗濯機やテレビがある。当たり前のことですが、『○○を買えば、××ができる』という定義を、顧客に明確に伝えることが非常に重要なのです」
なら、パソコンの場合は?
小島社長は、「人それぞれ利用定義が違うから、しっかりとその定義を聞き出すことがカギ」と強調する。
パソコンで何ができるのか。購入意欲をかき立てる当たり前の提案が、改めて必要なのかもしれない。(鈎)
プロフィール
小島 章利
(こじま あきとし)1963年5月生まれ、栃木県出身。87年3月、東海大学政経学部経営学科卒業。同月、コジマ入社。上三川店、東店主任、企画部主任を経て、89年9月にシステム室室長。90年6月、取締役。91年6月、システム本部長。93年6月、営業企画本部長。95年6月、常務取締役。98年6月、専務取締役。02年4月、代表取締役社長に就任。
会社紹介
大手家電量販店を運営するコジマは、1955年4月創業、63年8月設立。従業員は約6400人。店舗は北海道から鹿児島まで34都道府県に展開し、店舗数は251を数える。
01年度(02年3月期)の連結業績は、売上高が4959億8000万円、営業損益が48億9900万円の赤字、経常利益が20億2500万円となり、創業以来初の減収、営業赤字を強いられた。
そうした逆風下、02年4月にトップの座に就いた小島章利社長は、就任早々、「地域一番店の集合体の確立」をかけ声に、総資本経常利益率9%、売上高経常利益率3%、総資本回転率3回転を経営指数の目標に策定。これまでのコジマにない独自戦略を打ち出し、新生コジマを率いてきた。
この結果、今年度(03年3月期)の9月中間連結業績では、売上高が前年同期比1.9%増の2551億1400万円、営業損益は14億3900万円の赤字(前年同期は17億7000万円の赤字)、経常利益は同129.3%増の20億8200万円、当期純利益は同約20倍の7億3700万円と、回復をみせた。粗利率を前年同期に比べ0.6%改善させたことや、販売管理費の削減努力などが功を奏した。
今年度の通期連結業績は、売上高で前年度比3.0%増の5107億円4000万円、経常利益で同94.1%増の39億円3100万円、当期純利益で同476.8%増の16億1500万円を見込んでいる。