システムインナカゴミは、自治体のIT投資効果を最大にする組織づくりに力を入れている。山梨県内のIT関連企業で構成する山梨県情報サービス産業協会(YSA)をベースに、これに新しく通信・放送関連各社の参加を得ることで、地域活性化に最も効果のあるIT化戦略を自治体から引き出したい考えだ。同時に、情報セキュリティ事業の強化にも乗り出しており、失速気味の地方IT産業のなかにあって、力強く成長路線を歩もうとしている。
ITと通信・放送の連合体を提唱、地域経済の底上げに結びつく投資を
──山梨県を拠点に事業展開されると同時に、県内のIT産業育成にも努めておられるそうですね。
中込 ご存じの通り、山梨県は人口約88万人と民間活力の弱い地域です。地元のシステムインテグレータにとって、山梨県庁や市町村などの官公庁による投資は、ビジネスを続けていくうえで外せない要素となっています。当社も、売上高の約半分は官公庁関連が占めます。e-Japan計画に関連して、山梨県でもIT化計画が進んでいます。その一環として来年度以降、県内に光ケーブルを敷設し、通信の光化を推進するというのがあります。これに対し私は、山梨県情報サービス産業協会の副会長として、「計画が単純すぎて、地場のIT産業の育成に結びつかない」と訴えています。光ケーブルの敷設だけでは、NTTなど一部の大手通信事業者が利益を得るだけで、山梨県の地場IT産業には何も残りません。これでは地場のIT産業を生かすどころか、殺してしまいます。
そこで私は、ただ光ケーブルを敷設するのではなく、データセンターを開設し、これを運営する組織を立ち上げることで、今後事業の拡大が着実に見込める体制づくりを提唱しています。私は、山梨県情報サービス産業協会の副会長をやらせていただいていますが、この組織を来年4月をめどに、まだ仮称ですが「山梨県情報通信産業協会」というような名称に変更しようと計画しています。「通信」とは放送も含めた意味で、ITと通信・放送事業者の連合体にしようと考えています。これにより、会員社数も現在の約80社から、来年4月以降は100社以上に増える見込みです。ケーブル敷設や電気工事を請け負う事業者、あるいはインターネット接続プロバイダなども含めて参加を呼びかけていきます。
──具体的に、どのような組織にするつもりですか。
中込 ただ協会をつくるだけでなく、実際に事業を推進できる組織にしようと思っています。最初はNPO(民間非営利団体)法人にしようかと考えましたが、NPOでは責任の所在がぼやけるため、今の段階では限りなく株式会社に近い形態を考えています。データセンターをつくり、各家庭までのブロードバンド網を整備した後は、その上に乗せるアプリケーションソフトやコンテンツが必要になります。最初のインフラづくりは、県などの官公庁から資金支援を得る必要があります。来年度の投資額はおよそ20億円前後になるものと見込まれていますが、この初期投資を仮にわれわれ民間企業が負担するとすれば、いつ損益分岐点を超えられるか、まったく分からないからです。もし、採算が合うことが明確に分かっていれば、官公庁の力を借りずとも、民間企業が先に投資しているはずです。
情報化政策=光ケーブルという比較的単純な発想になるのは、県をはじめとする自治体の特性でもあります。役所の人事制度では2―3年ごとに担当者が変わっていくため、どうしても専門的なノウハウが蓄積されにくい。このため、自治体だけでは新しい情報システムの設計や見積もりなどができず、どうしても業者に丸投げになってしまいがちです。これを改善するため、われわれ情報サービス業界、プロバイダなどの通信事業者、CATVなどの放送事業者など、地場の情報・通信・放送業界全体が一致団結して、自治体が地域経済の底上げに結びつく投資ができる環境づくりに力を入れる必要があります。
折しも市町村合併により、今後、自治体のIT投資は先細りになる可能性があります。現在、山梨県内には58市町村あり、これら自治体から受託計算などを請け負っている事業者もあります。しかし、合併により2005年3月末までにおよそ40まで市町村数が減る見通しも出ています。極端なところですと、6市町村が1つの市に合併する地域もあり、これらの自治体ではIT投資が半減することもあり得ます。これでは情報サービス業界は立ちゆかなくなるため、新しい収益モデルの確立が求められているわけです。
情報セキュリティの認証取得を支援、ジェイエムシーと共同展開
──セキュリティ分野にも力を入れていますね。
中込 情報セキュリティは官公庁、民間を問わず、非常に引き合いが強い分野です。情報セキュリティでは、内部情報漏洩対策、外部からの侵入防止、ウイルス感染防止など、アイデア次第でさまざまな切り口のサービスを考案することができます。当社は今年8月、情報セキュリティマネジメントシステム標準規格の「BS7799―2」、およびISMS適合性評価制度認証基準Ver.2・0に加え、品質管理システムの「ISO 9001」の認証を同時に取得しました。同時に取得したのは、国内で初めてだそうです。情報セキュリティの整備が急務な地方自治体への認証取得支援も同時に手がけており、この分野では、早い時期から情報セキュリティに取り組んでおられるジェイエムシー(JMC、香月誠一社長)と共同展開しています。
──JMCの香月社長とは、NECマイコンショップ会の頃からのお付き合いですね。
中込 香月さんのJMCは以前の社名が「日本マイクロコンピュータ」と呼ばれていて、そうしたNECマイコンショップの時代から、同業者としてやってきました。ところが今のJMCは、セキュリティの専門ノウハウを持つ企業へと大きく変貌されました。香月さんは今、全国の元マイコンショップ時代の企業などに声をかけておられ、その中の1社が当社だったということです。NECマイコンショップ会の最盛期には、全国約180社が加盟していましたので、会員ベースは相当に大きいと思います。マイコン時代からずっと元気にやっておられる会社を中心に、当社を含めて現在6社ほどがセキュリティ分野で提携を結んでいます。最終的には、全国で30社くらいのネットワークをつくり、それぞれ地域の強みを生かしつつ、全国規模での強力なタッグを組んでいく計画です。
──経営目標などをお聞かせください。
中込 昨年度(03年9月期)の売上高は前年度並みの約30億円で、ここ数年は減収増益の傾向が続いています。ハードウェアの価格が下がり続けているのが減収の主な要因であり、その一方でサービス・サポートの領域が拡大しているのが増益の主要因となっています。これは、地方のシステムインテグレータの典型的な収益構造の変化だと思います。当面は、ITを活用して顧客の業務のコストダウンを図り、その削減したコストの半分を当社の利益としていただくという蕫厳しいビジネスモデル﨟が続くと予想しています。しかし、今年度(04年9月期)で何とか減収に歯止めをかけます。来年度以降、自治体分野や情報セキュリティ分野で事業強化を図ることで、増収増益に結びつける考えです。
眼光紙背 ~取材を終えて~
「山梨県は全国的に民力が弱い地域。何をやるにも、一番最後になってしまう――」山梨県の人口は約88万人。東京・世田谷区より少し多い程度だ。「とにかく自治体、民間企業、コンシューマと、市場のすべてをカバーしないとビジネスが立ちゆかない」システムインナカゴミでは、自治体向けの売上高が全体の約半分を占めるものの、一方で携帯電話・パソコンショップなども幅広く手がける。「政府・自治体、民間企業ともに、景気浮揚の切り札としてのIT投資の位置づけが、あやふやになりかけている。だからこそ今、地元の情報・通信・放送業界が一致団結して、新しい産業育成に向けた投資を引き出していくことが大切」と訴える。(寶)
プロフィール
中込 裕
(なかごみ ゆたか)1956年、山梨県甲府市生まれ。80年、山梨大学工学部電子工学科卒業。同年、東芝入社。82年、家業である中込電気商会の専務取締役に就任。同年、NECマイコンショップとしてOA機器の販売を始める。88年、システムインナカゴミを設立し、代表取締役社長に就任。日本コンピュータシステム販売店協会(JCSSA)理事、山梨県情報サービス産業協会(YSA)副会長を務める。
会社紹介
中込電気商会を持株会社とし、情報サービス分野はシステムインナカゴミが、家電販売分野はライフインナカゴミが担当する。システムインナカゴミは、自治体や法人向けのシステム構築のほか、山梨県内にパソコンショップやドコモショップ(携帯電話販売など)を展開している。
自治体向けシステムでは、独自開発した図書館管理システム「LMO」が有名。全国約40市町村に納入した実績を持つ。昨年度(2003年9月期)の売上高約30億円の内訳は、自治体向けシステム販売が約5割、携帯電話販売が約3割、残り2割がパソコンショップ・その他サービスが占める。全社の売上高のうち、山梨県内における売上高は約8割を占め、残り約2割を他県が占める。社員数は正社員、契約社員などを含め約120人。情報セキュリティ事業や、モバイルを活用した情報システム構築などにも力を入れる。