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サポート・サービスをOEM供給 顧客企業の“黒子”に徹する
スリープロ 社長 高野 研
取材・文/田沢理恵 撮影/馬場磨貴
2005/02/07 18:03
週刊BCN 2005年02月07日vol.1075掲載
M&Aを機に事業区分見直す 家電製品全般にビジネス領域を拡大
──今年度(2005年10月期)から事業区分の見直しをされましたが、その狙いから。高野 IT産業の広い領域のなかで、我々はこれまでサービスを、「スポットサービス」、「アウトソーシングサービス」、「CRMサービス」(コールセンター設備を利用したサポート・保守サービスなど)という3つの事業区分で提供していました。しかし、その区分が分かりにくいという意見が多くありました。このため今年度から新たに、「販売支援事業」、「導入・設置・交換支援事業」、「サポート・運用支援事業」という3つの柱に変更しました。本体と子会社2社それぞれに専業の事業を集約して、各社の色を濃く出せるよう事業領域の整理統合を進めている最中です。

──昨年は積極的なM&A(企業の合併・買収)、提携戦略が目立ちました。11月には大塚商会の子会社だったJPSSも子会社化されました。
高野 昨年2月に、アフィリエイト(成果報酬)広告システムや通信回線の利用導入コンサルティングを手がけるコアグルーヴを子会社化し、10月には、老舗ヘルプデスク会社でクレオ子会社のクリエイトラボと業務提携しました。11月には、大塚商会子会社のJPSSを子会社化しました。JPSSとスリープロは事業領域が重なる部分が多いため、全体的な整理統合を進めています。最終的には、スリープロ、JPSS、コアグルーヴの3社がそれぞれの特色を出して各事業に特化した会社にしていきます。
JPSSの子会社化を機に業務提携を結んだ大塚商会との関係についても、JPSSが従来から行ってきた大塚商会向けのサポート業務の継続に加え、新サービスの開発や高付加価値商品の提供に取り組む意向です。クリエイトラボ(現在の出資比率クレオ55%、スリープロ45%)の資本を持つクレオとの業務提携に関しても、グループを巻きこんでシナジーを追求していきたいと考えています。
──従来のパソコン向けサポートを中心とした事業から、さらに幅広い領域へと事業を拡大されています。今後、どういうIT領域に注目していかれますか。
高野 現在、我々が注力している分野は、BtoCでいうとデジタル家電です。競争が激しいことは確かですが、注目度は非常に高い。以前は通信関連のブロードバンドであったり、DVDレコーダーなどの販売やユーザーサポートが多かったのですが、最近では広い意味でのデジタル家電ビジネスに注目しており、新しいテクノロジーを使った家電製品全般に事業領域をシフトしています。最近の家電製品は、従来と比べるとテクノロジーと科学を合わせ持った進化した製品が増えています。例えば、新しいテクノロジーを使った家庭用カラオケ、洗濯機、食器洗浄器などの関連ビジネスも目立ってきています。これらは、ユーザーに使い方を十分に理解してもらう必要がある“説明型商品”と言えます。
──最近のデジタル家電は価格下落が激しく、収益確保が次第に厳しくなっていますが。
高野 価格で勝負する製品は、基本的にユーザーサポートを必要としない商品と考えています。それに対し高付加価値商品は、価格が高いこともあり、ユーザーは内容を良く理解して丁寧に使いたいという気持ちが強いと思います。また、メーカー側も十分機能を引き出して欲しいというニーズがあります。そうは言っても、製品の機能すべてをユーザーが理解することは難しいでしょう。そこは人間がフォローすることが必要だと思います。「良い商品だから、安いから買って下さい」と言って選んでもらうのではなく、ユーザーが理解したうえで買う商品です。家電は価格がより安くなっていくものと、高付加価値化していく製品に2極化していくと思います。高機能化して値上がりする製品に、我々はフォーカスを定めます。値崩れが激しい低価格商品にサービスを提供していくわけではありません。
ネット家電について言えば、例えばテレビを例に挙げますと、最近の高性能テレビには必ずと言っていいほどネット接続端子が標準で付いています。以前は考えられませんでしたが、今は画面で番組表を見る利便性をユーザーは自然に受け入れています。このように、家電にネットがつながっていることを特別に意識しないでもネット家電は浸透し、着実に広がっていくと確信しており、ここが当社の強みを生かすフィールドです。
契約エージェントを3年後には11万人超へ ユーザーとメーカーの両方の視点に立つ
──スリープロのビジネスは、人材スキルに依存する部分が多いですね。さらに業績を伸ばすためには、人材の質や量を高める必要があると思われます。高野 雇用の流動化や多様化が叫ばれる今日、当社の存在意義というのは雇用の多様化に合わせることが社会的ミッションであると考えます。スリープロは「テンポラリーな人材」、「テンポラリーな仕事」を提供をするスタイルを確立してきました。それに対しJPSSは、「ハイスペック、ハイクオリティな人材」、「長期安定型の雇用」を強みとして重んじてきました。人材のコンセプトに関してはお互いに相反する部分がありますが、自分のスペシャリティを生かして、より安定的に働きたいという人もいれば、よりテンポラリーに働きたいという人もいます。両社で相互に人材交流を図ることで、より幅広い人材を囲い込んでいきたいと思います。
昨年度(04年10月期)の時点で、IT分野を中心に多彩な知識をもった登録者(契約エージェント)をグループ全体で6万5000人保有しています。さらに、3年後の07年度(07年10月期)には11万3000人にする計画です。メーカーにはそれぞれの特色があり、アピールしたい内容やニーズも違います。我々はそれぞれのニーズに対応するためのオーダーメードやカスタマイズにより臨機応変にサービスを提供していきます。
──今後のビジネスの方向性は。
高野 当社の事業は、サポート・サービスをOEM(相手先ブランドによる生産)供給するビジネスモデルで、それぞれの企業の付加価値として使ってもらう“黒子”に徹することがコンセプトです。現在の売上比率で、ビジネス系とコンシューマ系の割合は3対7ですが、今後はBtoBへシフトし、将来的には8対2に逆転させ安定収入を確保する狙いです。BtoCにおいては自社のブランディングも考えていますが、BtoBを中心に安定した収益を上げられるようになってから、BtoCのブランディングに力を入れても遅くないと考えています。
中期経営目標として、3年後の07年度(07年10月期)に売上高80億円、経常利益4億円を掲げており、高い目標ではありますが、M&Aを積極的に進めるなどグループ会社間のシナジーを最大限に活用し、マーケットを広げることで実現できると思います。
コンセントにつなぐ程度だった家電がどんどん複雑化していくなかで、ユーザーの設置サポート需要が増えていくと思います。ユーザーのサポートももちろんですが、店頭でのサービスノウハウを教えることや、サポートをサポートする役割も担います。ユーザーとメーカーの両方の視点に立ち、理解して使ってもらえるサポートをすることが我々に求められています。それは、高付加価値な家電製品が売れていくためのキーになると思います。これらをカバーするとともに、コールセンターの需要に対応して事業拡大を図り、収益確保につなげていきます。
眼光紙背 ~取材を終えて~
現在29歳の高野社長は、事業を開始してから9年近く、社長に就任してから5年余りが経つ。弱冠20歳で起業に至った経緯はドラマチックだ。
立命館大在学中に遭遇した阪神・淡路大震災が、「結果的に創業のきっかけになった」と振り返る。「地震に遭わなければ、いまの自分はなかったかもしれない」とも。立命館大には、「一度退学しても、希望すれば再び大学に戻れる制度があった」ことから起業への道を歩み出したが、キャンパスに戻ることはなかった。
最近のパソコン市場にはかつてのような活気はないが、一時期に比べると明るい兆しがあるという。「今また素直にパソコンが面白いと自信をもって人に勧められる」。ITに携わる人間自らが“面白い”と感じることが、市場拡大の源泉かもしれない。「IT市場は新たな変革期を迎える」との予感が的中することを期待したい。(理)
プロフィール
高野 研
(たかの けん)1975年5月生まれ、石川県出身。立命館大学理工学部中退。大学2年の時の95年1月、阪神・淡路大震災に遭いバイト先を失い、仕事を探しながらパソコン通信に没頭。同年12月、京都市ベンチャービジネスクラブ主催の起業アイデアコンテストで「京都ドリーム奨励賞」を受賞。96年4月、ザポイントスタジオ(現スリープロ)に入社し、スリープロ事業部として「パソコン家庭教師」を開始。同年6月、専務取締役。98年6月、大学を中退しビジネスに専念。99年1月、スリープロに社名変更し、同年9月、代表取締役社長に就任。「平成15年度 経済産業省創業・ベンチャー国民フォーラム会長賞」受賞。
会社紹介
1996年4月、ザポイントスタジオ(現スリープロ)のスリープロ事業部として、個人向けパソコンサポート「パソコン家庭教師」を開始。99年1月に「スリープロ」へ社名変更し、同年9月に高野研氏が代表取締役社長に就任した。03年11月に東証マザーズ市場に上場。20代の創業上場社長は5人目となる。グループ従業員数は約150人。
主な事業は、クライアント(通信事業者、メーカー、流通業、サービス業など)向けのサポートや販売スタッフ派遣、コールセンターのアウトソーシングサービスなど。契約スタッフは、独自のエージェントシステムにより全国に6万5000人を擁し、24時間365日対応を強みとしている。
昨年は、2月にコアグルーヴを子会社化したのに続き、3月には無線ルータの訪問設置サービスや電話サポートサービスに関しコレガと業務提携を結んだ。さらに、6月にはMCJと業務提携、10月にはクリエイトラボの株式45%を取得、11月には大塚商会からJPSSを譲り受け子会社化するとともに、クレオ、クリエイトラボと業務提携するなど、積極的なM&A(企業の合併・買収)、提携戦略を推し進めた。
昨年度(04年10月期)の連結業績は、売上高28億3000万円、営業利益1億5000万円、経常利益1億4600万円。今後も引き続きM&A、提携戦略を加速し、その相乗効果により3年後の07年度(07年10月期)には売上高80億円、経常利益4億円を見込む。
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