全国約120拠点で運用・保守サービスを提供できる体制を整え、システム・ネットワーク構築も手がける。また、スキャナではグローバルでトップシェアを誇る。富士通グループのPFUは、SIerのなかでも異色の存在だ。「強みを徹底的に強く」という考えを持つ輪島藤夫社長は、「スキャナ+ソリューション」による紙文書の電子化に意欲を示す。スキャナ、ソフト、そしてサービスをすべて自前で提供できるPFUの強みを、鮮明に打ち出していく。
「一点突破全面展開」スキャナを軸に拡大
──2008年度(09年3月期)に売上高1250-1300億円の確保という目標を定めました。今期を含め3年間で、昨年度実績に300-350億円を上乗せする計画ですね。どう伸ばしますか。
輪島 強みをより強く。これしかありません。PFUが持つ強みにさらに集中することで伸ばせる。PFUは今、3事業にフォーカスしています。スキャナを中心とした「イメージビジネス」、情報KIOSK端末などの専用情報機器開発の「ProDeS(プロデス)」、そしてシステムとネットワーク構築や運用・保守サービスの「ソリューション」です。この3分野を徹底的に強くする。
社長に就任した直後、顧客回りに多くの時間を費やしました。合計110社ほどに伺い、さまざまな声を聞いたのです。要望や期待、評価などさまざまな意見をもらいましたが、それらを聞いて私の戦略は間違っていないことを改めて認識しています。この3つの事業セグメントに対するお客さんの評価は高いし、期待も大きい。
──スキャナやプロデスはシェアが高いし実績もある。この分野は強みを感じます。でも、ソリューションは範囲が広いしどこにでもある。PFUのどんな独自性が強みになると。
輪島 スキャナを開発しているソリューションベンダーであること。これ自体がすでに強みなんですよ。ソリューションといってもいろいろあるし、そのすべてに強くなろうとは夢にも思っていない。スキャナを生かせるソリューションに焦点を当てます。「スキャナ+ソリューション」による紙文書の電子化関連製品・サービスでトップに立ちたい。
紙文書を電子化することによる総合的なドキュメント管理、情報漏えい対策、コンプライアンス(法令遵守)体制の整備などの提案に積極的に動きます。ハードとソフトウェア、そしてサービスを組み合わせたトータルの提案を、PFUはすべて自前でできる。スキャナを持っていないのに、紙文書の電子化ソリューションをうたうベンダーよりもずっと訴求力があるはずです。
──トータル提案できる体制は。
輪島 整えました。PFUはスキャナ開発、ソフト開発部隊、そしてサービス提供部隊など複数の事業組織があります。トータル提案となると、スキャナ、ソフト、サービスがバラバラで開発してもダメ。だから、各事業グループには、それぞれのビジネスのミッションを達成してもらうことに加えて、新製品・サービス開発の際は、組織の壁を越えて各事業部の担当者が一緒になって開発する連携体制を義務づけました。スキャナもソフトもサービスも自前で開発しているPFUにしかない強みですので、ここをもっと生かしていこうと。
──とはいえ、スキャナの普及具合は、海外に比べ日本は遅れている。
輪島 それは確かにそう。PFUはグローバルで約50%のシェアを誇るスキャナのトップメーカーです。でも、日本での販売比率はまだ10%ほどでかなり低い。だからこそ、マーケットが広いわけです。
昨年度までの4年間で、スキャナの販売はグローバルで台数は4倍、金額で2倍に成長しているんです。欧米諸国は日本よりも電子文書に先進的で、紙文書を電子化することによって情報漏えい対策に役立てている企業も多い。
たとえば、従来、紙文書をFAXで送っていたものを、スキャナで電子文書を作成してメールで送る体制に変えた企業も少なくない。FAXでは番号を一つ間違えただけで情報流出につながるし、流出した場所すら分からないですから。ドキュメントを送る際、FAXの利用をやめる企業も増えてきました。
こういった流れが必ず日本にもくる。私は今年度からの4年間でも、過去4年間と同じ伸び率を達成したいと考えています。日本国内もグローバルの成長スピードと同様に伸ばすつもりです。
全国拠点で高質のサービスを 社員のIT知識をさらに磨く
──05年4月に「電子文書法(e文書法)」が施行された時、紙文書の電子化ニーズが盛り上がるとIT業界は期待していましたが、実際はそうでもなかった。スキャナの需要は強いのでしょうか。
輪島 いや、ニーズは確実にあります。確かに、爆発的に普及はしていませんよ。でも、それは需要がないからではなく、ユーザーは興味を示しながらも導入まで踏み込めていないだけなんです。
これからは違います。「e文書法」だけでなく、情報漏えい対策、そして内部統制基盤の整備などの課題を解決するためには、紙文書の電子化が必ず必要になってくる。企業内にある紙文書をデータ化して、それをセキュアな情報システムで管理し、有効活用するようになる。実需に結びつく段階に入りました。紙文書の電子化ソリューションは、年率50─100%の割合で伸ばせると確信しています。
──紙文書電子化のメリットをどのように訴えていきますか。
輪島 金融機関などニーズが強い業種にスキャナとお客さんの環境にあったソリューションを合わせて販売し、それをケーススタディにして他業種にも横展開する。
また、PFUのスキャナの販売店200─300社に向けても、個々の販売店が扱う製品・サービスのなかで、スキャナによる電子文書化ソリューションのプライオリティを高めてもらえるよう、プロモーション活動を積極展開します。ユーザーにもっとPFUの良さを伝えて欲しい、という要望も販売店から上がっていますので、パートナーとともに市場を活性化させていければと考えています。
──電子文書関連のソリューションでは、50-100%増で伸ばせるということですが、ソリューション事業全体でみると08年度までの年間伸び率は5・7%と低めにみていますね。
輪島 ソリューションに関連する事業は広範囲です。電子文書化ソリューションもあり、SE関連、一般的なシステムやネットワーク構築と運用・保守サービスも含まれる。はっきり言って、ソフトウェア開発や保守運用サービスを急激に伸ばすのは難しい。だから、全体では5・7%の成長率としているんです。
でも、ここでもPFUにしかない強みがあるんですよ。全国120拠点、約1500人の人員で、お客さんのシステムとネットワークを365日24時間体制、しかもマルチベンダーで運用・保守できるサービス体制です。この体制を持っている企業はそうはない。すでに約1万8000社にPFUの顧客になってもらっており、ユーザー訪問でも、このサービスを高く評価していただいていることを実感しました。この分野にフォーカスすることで、市場全体のソリューションビジネスの伸び率が、たとえば3%ぐらいだったとすると、PFUは5─6%で伸ばせると感じています。そのため、「ITIL(コンピュータシステムの運用・管理業務に関する 体系的なガイドライン)」の有資格者数を、現状の60人から今年度末までに150人に増やします。
強みをさらに強く─これはどこの製品・サービスでも一緒です。各事業グループには、「自分たちが立てたビジネス領域で1番になれ!」と発破をかけています。
My favorite 出張の移動中などに利用する「iPod shuffle」。きょう体には、PFUのロゴが入ったステッカーが貼ってある。音楽鑑賞が趣味で、今はもっぱらリスナーのようだが、大学時代はギターを弾いていたとか。お気に入りの曲は、海外のロックバンドと日本の女性歌手
眼光紙背 ~取材を終えて~
2-3週間に1度の頻度で更新される輪島社長の専用サイトがある。社長に就任してからこれまで、社員に対し大々的な挨拶や方針説明の場は設けてはいない。そのため、このウェブサイトを通して戦略や自分の考え、近況、そして社員に対するメッセージを発信している。会社や自分のことだけでなく、社員の頑張りなどもそのつど書き込んでいくとか。
関係会社や海外含め150ほどの拠点を持ち、社員数は約4000人。直接会ってすべての社員と話すのは難しい。ネットを通して社員とコミュニケーションを図り、モチベーションを上げているようだ。
インタビュー中は、一貫して柔らかい物腰で丁寧に答える姿勢が印象的だった。ただ、これから力を注ぐ分野や、やらなければならない課題に言及する際は、表情が変わり、力強さが増す。この輪島社長の力強さがネットを通じてどこまで表現されているか。社員の士気向上には重要な要素だ。(鈎)
プロフィール
輪島 藤夫
(わじま ふじお)1947年3月26日生まれ、石川県出身。69年3月、東京電機大学工学部電子工学科卒業。同年、ユーザック電子工業(現PFU)入社。90年7月、第二開発部技術部担当部長。92年12月、第一開発部部長。97年6月、取締役。00年6月、常務取締役。02年6月、専務取締役。06年6月24日、代表取締役社長に就任。
会社紹介
PFUは、(1)スキャナ開発・販売事業の「イメージビジネス」(2)情報KIOSK端末など情報機器開発の「ProDeS(プロデス)」事業(3)システム構築と保守・運用サービス事業の「ソリューション」の3本柱を軸に事業展開する。昨年度(2006年3月期)の業績は、売上高が933億円、経常利益が31億2000万円。売上高の内訳は、イメージビジネスが238億円、プロデスが158億円、ソリューションが331億円などとなった。スキャナの開発・販売では、グローバルでトップシェアを誇る。
輪島藤夫社長は、大学卒業後、PFUに入社。以来、技術畑をメインに歩んできた。社長就任後は、年率10%で売上高を伸ばす計画を示しており、08年度に売上高1250─1300億円の確保を狙う。
PFUの設立は1962年。従業員は約4000人。本社は石川県かほく市。サービス提供体制として国内に120拠点を持つほか、中国上海市など海外に3社の関係会社を抱える。筆頭株主は富士通で株式の78.59%、内田洋行が16.31%を保有している。