他社とのアライアンスを重視
──今後、業績アップに向けて強化することは何ですか。
伊土 主力事業の連携を今後は強化します。ソリューションのラインアップを強化するということです。
当社では、「NGN」「モバイル」「情報処理」という三つのカテゴリを得意分野として事業を手がけているのですが、これまでは、各事業のベクトルに収まっていた。ただ、事業領域を拡大するためには、3事業のシナジーを出さなければユーザー企業に最適なソリューションを提供できない。競合他社との差別化を図るためにも、自社の強みを連携させることが必要です。そこで、SIとNIの融合を視野に入れた「SI&NI・ソリューション事業グループ」という第四の組織を作りました。この組織を中心に、ソリューションの創造を進めていきます。
また、今の時代は、1社ですべてを網羅するには限界がある。多くのベンダーと積極的にパートナーシップを組み、お互いの強みを発揮したほうが賢明です。これまでは、必要な製品やソフトは自社で開発するという自前主義でしたが、今後は他社とのアライアンスを強化します。
──具体的なアライアンスは?
伊土 SaaS事業の着手に向けてテラスカイさんと協業しました。08年10月1日から、企業内の情報システムとSaaSアプリケーションの連携を図る「SkyOnDemand」のサービスを提供しています。このサービスの最大の特徴は低コストであることです。SMB(中堅・中小企業)を対象に新規開拓を図れると確信しています。IP─PBX関連ではリジウムという米国企業と提携しています。
自社の“コア事業”を強固にするためには、とにかく良いものは使っていくということです。したがって、このようなアライアンスは今後も進めていきます。
──他ベンダーにとってNTTソフトウェアとアライアンスを組むメリットは何でしょう。
伊土 NTTグループで力を注いでいるNGNに関与していることではないでしょうか。NTTグループでは、NGNを活用してアプリケーションサービスの提供強化を進めようとしています。当社と組めば、NGN回線に対応したアプリケーションサービスとしてビジネスチャンスが広がる可能性を秘めています。
──アライアンス強化も含め、将来的にどのようなポジションを目指していますか。
伊土 「サービス会社」になることです。SIerからの脱皮を図らなければなりません。「クラウドコンピューティング」に代表されるように、今後はサービスが主体になってきます。それを見据えて今、準備しているところなのです。
眼光紙背 ~取材を終えて~
「世界同時不況」で市場環境が暗たんとしているなか、「確かに厳しい。案件の減少は避けられない」と打ち明ける。状況悪化の影響により、「今後2年間は足踏みするだろう」とみており、「売り上げは目論んだ通りにはいかない」と予測する。
しかし、「ピンチの時こそチャンス」と捉えている。「だからこそ、社員の質が重要。人材育成には惜しみない投資を行う」と言い切る。「当社に依頼すれば良いものを提供してくれるというように、ユーザーの信頼を勝ち取れる」からだ。どんな環境下でも成長する企業になるため、「改善を進める」としている。「社員のモチベーションを低下させるようなことは決して行わない」。取材中“土台”という言葉が頻繁に出る。「社員がきちんと業務遂行するための“土台”を作るのが社長の使命」。NTTソフトウェアの方向性を追求するうえで、社長の存在意義を改めて見つめ直している姿が浮き彫りになる。(郁)
プロフィール
伊土 誠一
(いど せいいち)1947年、北海道生まれ。1971年、北海道大学大学院を卒業し、日本電信電話公社(現NTT)入社。大型コンピュータDIPS用OSの研究開発、大規模情報処理システムの開発、ソフトウェア工学およびデータベースの研究開発に従事。00年、NTT常務理事情報流通基盤総合研究所長。03年、NTTソフトウェアの常務取締役営業戦略本部長。07年6月、代表取締役社長に就任。
会社紹介
2007年度(08年3月期)の業績は、売上高368億8000万円(前年度比4.9%減)、経常利益も22億6500万円(1.4%減)と減少した。これは、06年度の業績が前年度と比べて著しく伸びたことが要因という。伊土社長は、「07年度第1四半期までの当社を見た限り、成長することに限界があった」と振り返っている。
そのため、“伊土体制”が本格化した07年7月から社内整備を実施。社員スキルの底上げに力を注いだ。今年度の業績は具体的に明らかにしていないものの、「前年度より増える」見通しでいる。