受託開発屋は10年後なくなる──。DTSは、ソフト開発比率が大きい従来のビジネスモデルを変革する。単純な請け負いソフト開発だけでは十分な競争力は得られない。高い付加価値を生み出すサービス商材へ比重を移すことで持続的な成長に結びつける。人材教育の強化やプロジェクト管理を徹底。ITライフサイクル全般をトータルにカバーするサービスビジネスを拡大させ、SIerトップ集団入りを目指す。
安藤章司●取材/文 ミワタダシ●写真
不況が再編加速のきっかけに
──景気の急降下で、中期経営計画の出鼻を折られる形になりそうですね。
赤羽根 連結売上高で毎年6%ずつの成長を目指して、中期経営計画を2008年4月からスタートしたのですが、残念ながら初年度の計画達成は難しそうです。昨年度(08年3月期)は前の経営計画の目標を1年前倒しで達成するなど好調に推移してきたものの、今期は経済環境の悪化などの外部要因も加わって勢いが落ちた。90年代の土地バブルや00年代のITバブルのときは、少し遅れて情報サービス産業にも影響が出ましたが、今回の景気悪化はほぼリアルタイム。厳しい状況です。
ただ、すべての業種業態が悪いわけではありません。例えば、金融分野全体でみれば、需要は落ちていないし、システム管理や運用系は、むしろ新しい仕事に恵まれています。産業分野の新規案件が減ることは懸念されますが、今あるものを使い続けるという意味で、既存システムの更改やメンテナンスの需要は安定して生まれるとみています。
──M&Aを積極的に手がけるなど規模の拡大に努めておられます。05年3月期は400億円未満だった連結売上高が、ここ数年で600億円を超えるまで拡大しているようですね。
赤羽根 そうです。冷静に考えてみると、SI業界が今の業態になってまだ15年ほどしか経っていません。最初はユーザーやコンピュータメーカーの下請け的な存在でしたが、その後、本格化したオープン化の波に乗り、独自性、主体性の強いビジネスをぐいぐい伸ばしてきた。ただ、産業発展史的に見ると、そろそろ再編期に差しかかっています。当社も大規模かつ高収益のSIerトップ集団に仲間入りするため、M&Aを含めた事業規模の拡大を急ピッチで進めてきました。今回の不況が再編加速のきっかけになる可能性がありますので、できる限り早い段階で800~1000億円の売り上げ規模にもっていかないとトップ集団入りが難しくなることも考えられます。
──SIerのビジネスモデルも変えていく必要があるのではないでしょうか。SaaSやクラウドなどサービス型の商材が増え、事業環境も大きく変わっています。
赤羽根 そもそもわたしは従来のSI業界のビジネスモデルに強い不満を持っている一人です。ユーザー企業にとって本当に付加価値あるサービスを提供しないとSIerの地位は高まりません。
端的にはソフト開発で、1か月一人あたりの労賃がいくらと“人月”で価格を決める商慣習。このやり方ではSI業界は伸びない。そもそものSIerの使命は、コンサルティングから始まって設計構築、メンテナンスまでトータルに、かつリーズナブルにサービスを提供するというものです。SaaSやクラウドなどソフトウェアのサービス化もコストを削減し、生産性を高める重要な要素。こうした商材を生み出す仕組みをつくり、競争に打ち勝つ。これが本来の姿ではないでしょうか。人材を単純に売り買いしたり、客先に派遣したりしているようでは、強靭な競争力は身につきません。
SI業界はオープン化の波に乗り、独自性、主体性の強いビジネスをぐいぐい伸ばしてきた。ただ、産業発展史的に見ると、そろそろ再編期に差しかかる。
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